2026-08-29 — Thinking-B(戦略思考・コミュニケーション)

2026-08-29 Thinking-B JTBDで機能拡充のズレを診断・CrucialConversationsのSTATE法で板挟みの対話を開く・Three Horizons×Power-Interestグリッド×ピラミッド原則で新規事業への資源配分を通す

今日のフォーカス

テーマ:戦略とは「顧客が本当に何のために対価を払っているか」を機能の外側から見抜く力であり、対話とは「事実と自分の解釈(ストーリー)を分けて差し出す力」である

機能を拡充するほど解約が進む経費精算SaaSを、JTBDの3側面(機能的・感情的・社会的job)で診断する(Q1)、営業とエンジニアの板挟みの対話を、CrucialConversationsのSTATE法で「事実」と「自分の解釈」を分けて開く(Q2)、成長が鈍化するコア事業から収益ゼロの新規事業への資源再配分を、Three Horizonsモデル・Power-Interestグリッド・ピラミッド原則で取締役会と社内政治の両方から通す(Q3)。今日のカギは「表面の機能・結論・数字の裏にある、顧客の本当の恐れ、相手の物語、意思決定者の情報処理スタイルまで踏み込んで診断する」という姿勢。

JTBD(Jobs to be Done)

顧客は製品ではなく「片付けたい仕事」を雇う。機能的・感情的・社会的の3層で本当に雇われている仕事を診断する。

CrucialConversations STATE法

利害・意見・感情が同時に高まる場面で、事実共有→自分の解釈→相手の見方を尋ねる→断定を避ける→異論を歓迎する、の順で対話を開く。

Three Horizons×Power-Interest×ピラミッド原則

資源再配分のタイミングを診断し、影響力と関心でステークホルダーの合意形成順序を設計し、結論から始める構造で意思決定者に伝える。

Q1 ★★★☆☆ 基本 機能を追加するほど、なぜ経理担当者はExcelに戻るのか——JTBD(Jobs to be Done)で本当に雇われている「仕事」を診断する
シナリオ — 中小企業向け経費精算SaaS:機能拡充にもかかわらず上昇する解約率

AI領収書OCR・多通貨対応・多段階承認ワークフロー・財務レポート自動生成など、この1年で機能を大幅に拡充してきたが、直近の解約率は逆に上昇している。ユーザーインタビューでは、多くの経理担当者が「便利な機能があるのは分かっているが、結局は月末になると自分で作った使い慣れたExcelテンプレートに数字を移して二重チェックしている」と証言した。

問い
  1. JTBD(Jobs to be Done)の3つの側面(機能的job・感情的job・社会的job)を用いて、経理担当者が本当にこのSaaSに対して「雇いたい仕事」は何かを診断せよ。現在の機能拡充がなぜその仕事とズレているかを説明せよ
  2. 診断結果に基づき、次の四半期に優先すべき改善を1つ提案せよ。ただし「新機能の追加」ではなく、既存の顧客が抱える仕事(Job)の遂行の質そのものを高める観点で提案すること
「機能が多い=価値が高い」という思い込みを離れ、顧客が製品を"雇う"理由をJTBDのレンズで診断し直す力を問う。特に、便利な機能が並んでいても、顧客が本当に恐れている瞬間(月末締めでの数字の確定)に対して機能が的を外していると、顧客は使い慣れた原始的な手段(Excel)に逃げ続けるという構造を見抜けるかを試す基本問題。

機能拡充がすべて「機能的job」の、しかも日常業務の周辺にしか投資されていない

機能的job 数字を速く正確に確定 感情的job ミスで詰められる不安を消す 社会的job "ちゃんとしてる人"に見られる 未接続(不安は消えない) 未接続
核心の罠:機能拡充(OCR・多通貨・ワークフロー)はすべて「機能的job」の日常入力を楽にするものに偏り、顧客が最も緊張する月末締めの瞬間の「感情的job(不安を消す)」「社会的job(ちゃんとしてる人に見られる)」には届いていない。

JTBDの3側面による診断

次元顧客が本当に雇いたい仕事現状のSaaSが提供しているものズレ
機能的job月末までに今月の数字を間違いなく・素早く確定させたいAI OCR・多通貨対応・承認ワークフローなど日常の入力効率化に偏重日々の入力は楽になったが、月末に「本当に合っているか」を確信する助けにはなっていない
感情的job入力ミスや計上漏れで上司に指摘され恥をかく不安を消したい機能が多く複雑化するほど処理内容が把握しきれずブラックボックス化ツールを信頼しきれず、"自分の目で全部見える"Excelに戻って安心を得る
社会的job経理担当として締めを確実にやり遂げる"ちゃんとした人"だと見られたい高機能なツールを使いこなせないと頼りない人材だと見られるリスクを負う複雑な機能はむしろ社会的jobを阻害しうる
3つの次元を並べると、機能拡充がすべて「機能的job」の周辺、しかも月末締めという最も緊張する瞬間ではなく日常の入力作業に投資されてきたことが分かる。顧客が本当に恐れているのは「月末に数字が合っているか分からないまま提出すること」であり、そこへの不安を解消しない限り、どれだけ日常業務が便利になってもExcelという「自分で完全に把握できる手段」を手放さない。

次の四半期に優先すべき改善提案

新機能の追加ではなく、「月末締めの確信度を高める」ことに特化した改善を行う。月末になると自動的に「先月比で異常な変動がある仕訳」「未承認のまま滞留している申請」「過去に修正履歴のある項目」をハイライトし、それぞれの根拠(元の領収書・承認者・変更履歴)を1クリックで遡れる「締めチェックリスト画面」を新設する。これは新規機能というより既存データの見せ方を「月末の不安を減らす」という一点に絞って再設計するものであり、Excelに逃げていた「自分の目で全部確認したい」という感情的jobを、Excelより高い精度でSaaS側が満たす形になる。
ポイント:機能拡充による差別化は、顧客が実際に雇いたい仕事とズレていれば解約を止める力を持たない。JTBDは「何を作るか」の前に「顧客が何から解放されたいのか」を機能的・感情的・社会的の3層で問い直す規律である。

実践への応用

プロダクトロードマップの優先順位付け

新機能提案のたびに「これはどのJobを、どの次元で満たすか」を明示させ、次元が曖昧な機能は保留する。

競合対策

競合の機能を後追いするより、自社が満たせていないJobの次元(多くは感情的・社会的job)を先に特定する方が差別化になりやすい。

グローバル文脈

機能的jobは国を超えて共通しやすいが、感情的・社会的jobは文化圏によって大きく異なる。海外展開時はJobの再診断が必須。

自己評価(解答後に記入)
自分の考え・解答メモ:
気づき・メモ:

Q2 ★★★★☆ 標準 「もう先方に約束したのに」「そもそも確認すべきだった」——CrucialConversationsのSTATE法で板挟みの対話を開く
シナリオ — B2B SaaS企業:営業とエンジニアリングの板挟みになった納期対話

営業担当の鈴木さんは、大口見込み客「テックリテール社」にエンジニアリング側への事前確認なしに「今月末までにカスタム連携機能を納品する」と約束してしまった。先週のアーキテクチャレビューで、データ移行に想定していなかった依存関係が3つ判明し、実際には最低でもあと6週間必要だと分かった。鈴木さんは「エンジニアはいつも遅い」、エンジニアは「営業はいつも無責任に約束する」という不満をそれぞれ蓄積している。これから鈴木さんと1対1で状況を伝える対話に臨む。

問い
  1. なぜこの対話が「クルーシャル・カンバセーション」——利害が大きい・意見が対立している・感情が高ぶっている、の3条件が揃った場面——にあたるのかを説明し、双方が無意識に自分に語っている「都合の良いストーリー」を、鈴木さん側・エンジニア側それぞれについて特定せよ
  2. STATE法(Share/Tell/Ask/Talk tentatively/Encourage testing)を用いて、対話の冒頭部分を設計せよ
利害が大きく意見が対立し感情が高ぶる「クルーシャル・カンバセーション」の場面で、いきなり結論をぶつけて相手を防御的にさせる誤りを避け、事実と自分の解釈(ストーリー)を意図的に分離して差し出す技術を問う。特に、対立が深まる根本原因が「相手を悪者にする物語」を双方が無意識に真実だと思い込んでいる点にあることを見抜けるかを試す標準問題。

感情が高ぶった対話では、双方が「相手を悪者にする物語」を事実だと錯覚する

1
まず何を確認すべきか
この場面が「利害が大きい(契約継続に関わる)」「意見が対立している(できるか・できないか)」「感情が高ぶっている(双方に蓄積した不満)」という3条件をすべて満たしていることを確認し、通常の業務連絡とは異なる慎重な設計が必要だと自覚する。
2
核心にある概念
感情が高ぶった対話では、人は無意識に「相手を悪者にする物語」「自分を無力な被害者にする物語」を作り、それを事実だと錯覚する。STATE法は観察可能な事実と自分の解釈を明確に分けて話すことで、相手が防御的にならずに対話を続けられる余地を作る。
3
よくある誤り・罠
「6週間かかります」という結論だけを最初に突きつけると、相手は既存の物語(現場が渋っている)を強化してしまい、対話ではなく応酬になる。逆に事実を曖昧にすると後でより大きな衝突を招く。
4
判断の軸
自分の解釈を「事実」として断定していないか、相手にも自分の見えている景色を尋ねる余白を残しているかが、対話が硬直するか開かれるかを分ける。

クルーシャル・カンバセーションの3条件と、双方の"都合の良いストーリー"

この対話は、①テックリテール社との契約継続という高い利害、②「今月末に納品できるか、できないか」という明確な意見の対立、③双方に蓄積した不満という感情の高ぶり——の3条件がすべて揃っており、通常の進捗報告とは異なる設計が必要な典型的なクルーシャル・カンバセーションである。
立場無意識に語っている"都合の良いストーリー"
鈴木さん側「エンジニアはいつも石橋を叩きすぎて、ビジネスチャンスを潰す。今回も"できない理由"を並べてくるだけだろう」(villain story:エンジニアを頑固な障害物として描く)
エンジニア側「営業はいつも現場に確認もせず無責任に約束してくる。尻拭いはいつも自分たちだ」(victim story:自分たちを常に割を食う被害者として描く)
双方ともこの物語を「事実」だと思い込んで対話に臨むと、最初の一言が相手の物語を裏付ける証拠として使われ、対話は瞬時に硬直する。STATE法の目的は、この物語を一旦脇に置き、まず双方が合意できる観察可能な事実から会話を始めることにある。

STATE法による対話冒頭の設計

S Share 事実を共有

「先週のアーキテクチャレビューで、テックリテール社のデータ移行に、事前には把握していなかった依存関係が3つ見つかりました。詳細はこちらの資料にまとめています」

T Tell 解釈を伝える

「このままのスコープで月末納品を目指すと、テストが不十分なまま本番投入することになり、私はそれが先方との長期的な信頼関係を損なうリスクの方が大きいと考えています」

A Ask 相手の見方を尋ねる

「鈴木さんが先方にこの納期を約束された時、どんな情報や前提で判断されていたのか、聞かせてもらえますか」

T Talk tentatively 断定を避ける

「もしかすると、私たちが把握していない先方側の事情や、スケジュールの柔軟性があるかもしれません」

E Encourage 異論を歓迎

「率直に、この状況をどう見ていますか。私の見立てに見落としがあれば、遠慮なく指摘してください」

この順序の核心は、①まず双方が反論しようのない客観的事実から入り、②その上で自分の解釈であることを明示して伝え(言い切らない語尾)、③相手にも自分の見えている景色を語る機会を先に渡す、という点にある。これにより「エンジニアが一方的に断定してきた」という鈴木さん側の物語が強化されるのを防ぎ、対話の主導権を独占しない構造になる。

対話の着地点の設計

事実として6週間の追加期間が必要であることは変えられないが、「全機能を6週間後に一括納品」以外の道を対話の中で一緒に探る。依存関係のない中核機能を当初の月末納期で先行納品し、依存関係の解消が必要な部分のみ6週間後に追加提供する段階的リリースを提案する。さらに、先方への説明は鈴木さん一人に背負わせず、エンジニア側も同席した上で「新たに判明した技術的事実」として共同で伝える場を設けることで、「どちらが悪いか」ではなく「どう解決するか」に会話の焦点を保つ。
ポイント:クルーシャル・カンバセーションが失敗するのは、多くの場合、内容の正しさではなく「相手を悪者にする物語」を事実だと思い込んだまま話し始めることが原因である。事実と解釈を分け、相手の見方を先に尋ねる余白を作ることが、対立を対話に変える最初の一手になる。

実践への応用

部門間の板挟み調整全般

営業とエンジニアリング、マーケティングとカスタマーサクセスなど、利害が異なる部門間の衝突ではまず双方の「都合の良いストーリー」を自覚することから始める。

上司・経営層への進捗報告

悪い知らせを伝える際、事実の共有を解釈より先に、断定を避けた言い回しで行うことで相手を防御的にさせずに済む。

グローバル文脈

高コンテクスト文化圏では事実と解釈を分けて明示的に語ること自体が「よそよそしい」と受け取られる場合があり、関係性を先に確認してから同じ構造を柔らかい言葉で運用する調整が必要になる。

自己評価(解答後に記入)
自分の考え・解答メモ:
気づき・メモ:

Q3 ★★★★★ 応用 安定成長のコア事業から、まだ収益ゼロの新規事業へ——Three Horizons×Power-Interestグリッド×ピラミッド原則で取締役会と社内政治を同時に動かす
シナリオ — B2B分析ツール企業:Horizon 1の成長鈍化とHorizon 3への資源再配分

主力製品(Horizon 1)は年率5%成長・高利益率だが、3四半期連続で成長率が鈍化している。試験開発中のAIエージェント型新製品(Horizon 3)は収益ゼロでPMF前だが社内エンジニアの手応えは強い。目立った成長候補(Horizon 2)は存在しない。CEOとともにエンジニアリング予算の30%をHorizon 3へ再配分する提案を取締役会に諮ろうとしているが、営業責任者は今期目標への影響を懸念して強く反対、プロダクト責任者は強く賛成している。取締役会は数字に厳格で、過去に実績のない挑戦を「イノベーションごっこ」と切り捨てた経緯がある。

問い
  1. Three Horizonsモデル(H1: 既存コア事業/H2: 成長候補/H3: 新規事業の芽)を用いて現在の事業ポートフォリオを整理し、「今、H1のリソースをH3に再配分すべき」という主張を成長率鈍化のタイミングという観点から診断せよ
  2. 取締役会・営業責任者・プロダクト責任者・現場エンジニアという4者をPower-Interestグリッドで整理し、合意形成をどの順序で進めるべきかを設計せよ
  3. ピラミッド原則(結論を先に述べ、その下に論拠を並べる構造)を用いて、数字に厳格な取締役会向けの提案を設計せよ
Three Horizonsという戦略の骨格診断と、社内政治(Power-Interestグリッド)、そして意思決定者に響く伝達構造(ピラミッド原則)を、切り離さずに1つの意思決定として統合する力を問う。特に、正しい戦略判断であっても、社内の合意形成の順序を誤ったり伝え方が意思決定者の情報処理スタイルに合っていなければ実行に移せないという現実を扱う、Thinking-Bの最高難度の応用問題。

H2が空白であるため、H1の鈍化が始まった"今"がH3投資の最後のタイミング

1
まず何を確認すべきか
H1の成長率鈍化が「一時的な変動」ではなく「3四半期連続」という構造的なトレンドであることに着目し、H2が空白であるためH1からH3への滑らかな橋渡しが存在しないという事実を先に確認する。
2
核心にある概念
Three Horizonsの実務上の要点は、H3への投資はH1がまだ元気なうち、成長率が完全に落ち込む前に始めなければ、H1が衰えた時点でH3がまだPMFに届いておらず企業全体が「成長の谷間」に落ちるというタイミングの問題にある。
3
よくある誤り・罠
戦略の正しさだけを取締役会に提示し、社内で強く反対する営業責任者を無視したまま押し切ろうとすると、実行段階で協力を得られず頓挫する。逆に社内合意を待ちすぎるとタイミングそのものを逃す。
4
判断の軸
「誰の協力があれば取締役会提案の説得力が上がるか」「誰の反対を無視して進めても実害が小さいか」をPower-Interestグリッドで見極めた上で、最も影響力があり数字を重視する取締役会には結論を先に述べる構造で臨む。

Three Horizonsモデルによるポートフォリオ診断

Horizon現状課題
H1(既存コア事業)年率5%成長・高い利益率、顧客基盤は安定しているが3四半期連続で成長率が鈍化数年内に既存カテゴリでの成長余地が実質的に尽きるリスクが顕在化しつつある
H2(成長候補)既存顧客への機能追加という延長線上の投資のみで明確な柱が存在しないH1からH3への滑らかな橋渡しが構造的に欠けている
H3(新規事業の芽)AIエージェント型新製品、PMF前、収益ゼロだが社内の技術的手応えは強い専任リソースが確保されておらず「余剰があれば取り組む」程度の位置づけに留まっている
診断の核心は、H2が空白であるためH1の成長が鈍化し始めた"今この瞬間"がH3へ本格投資すべき最後のタイミングだという点にある。H3への投資は通常、H1がまだ健全な収益を生んでいる間に、次の柱がPMFに到達するための時間的余裕を確保する目的で行う。H1の成長が完全に止まってから着手すれば収益の谷間にそのまま突入するリスクが高い。「まだ結果が出ていないから様子見る」という営業責任者の主張は、タイミングの観点では最も避けるべき判断である。

Power-Interestグリッドによるステークホルダー整理と合意形成の順序

ステークホルダー影響力関心対応方針
取締役会高中(数字と実行計画の確度を重視)他3者の合意状況を固めた上で最後に結論から提案する(Manage Closely)
営業責任者中〜高(取締役会への発言力あり)高(今期目標達成に直結)取締役会提案の前に個別に説明し、H1のSLAを守る移行計画を提示して反対を中立化する
プロダクト責任者中高(推進の当事者)最初に連携し、H3の成功指標・撤退基準を共同で具体化する味方として巻き込む
現場エンジニア低〜中高(担当変更の当事者)説明とキャリア成長機会として伝える(Keep Informed)
合意形成は次の順序で進める。①まず最も関心が高く味方であるプロダクト責任者と共に、H3の成功指標・撤退基準・必要リソースを定量的なシナリオとして固める。②その定量シナリオを携えて営業責任者に個別に説明し、「H1の今期目標に対する影響を最小化する移行計画」を提示することで、積極的な賛成は得られなくとも「取締役会の場で公然と反対しない」状態を作る。③営業責任者との個別調整が済んだ状態で初めて取締役会に提案する。取締役会は最も影響力が大きいが、社内の意見対立をそのまま持ち込むと「まだ社内も割れているのか」という不信を招くため、最後に統一された提案として臨む。

ピラミッド原則による取締役会向け提案の設計

結論 18ヶ月以内に30%を再配分すべき 論拠1 H1成長率の8四半期トレンド 論拠2 業界のH3投資タイミング基準 論拠3 H1のSLAを守る移行計画 各論拠の下に裏付けデータを配置し、質問には該当する枝を掘り下げて答える 数字に厳格な取締役会ほど「まず結論」を求める
数字に厳格でイノベーション投資に懐疑的な取締役会には、背景説明から始める積み上げ型の説明ではなく、結論を最初に述べるピラミッド原則の構造が有効である。結論「H1の成長率鈍化が3四半期連続で確認されており、今後18ヶ月以内にエンジニアリソースの30%をH3へ再配分しなければ、3年後に成長の谷間に陥るリスクが高いと判断します」を最初に述べ、論拠1(H1の成長率トレンド)、論拠2(H3投資タイミングの業界ベンチマーク)、論拠3(H1の顧客SLA・今期目標を守れる、営業責任者と合意済みの移行計画)を並べる。各論拠の下にさらに裏付けデータを配置し、質問には該当する枝を掘り下げて答える構造にする。
ポイント:正しい戦略判断だけでは実行に移せない。誰から合意を取り付けるかという順序(Power-Interestグリッド)と、意思決定者の情報処理スタイルに合わせた伝達構造(ピラミッド原則)の3つが揃って初めて、戦略は組織の中で動き出す。

実践への応用

新規事業への資源配分全般

「結果が出てから投資する」という慎重論は、Three Horizonsのタイミングの観点ではしばしば手遅れの判断になる。成長鈍化の兆候が出た時点で次の柱への投資を検討する規律を持つ。

社内政治を伴う意思決定

影響力と関心の両方が高い相手を最初の合意形成対象にし、最も影響力の大きい意思決定者には最後に統一見解として臨むという順序は、あらゆる組織変更に応用できる。

グローバル文脈

取締役会の構成(社外取締役の比率・投資家の短期主義の強さ)によって結論を先に求める文化と背景説明を重視する文化の差があり、提案構造は顔ぶれに応じて調整する必要がある。

自己評価(解答後に記入)
自分の考え・解答メモ:
気づき・メモ:

今日のまとめ・次回へ

Thinking-B
JTBD×CrucialConversations
Three Horizons×Power-Interest×ピラミッド原則

戦略とは「顧客が本当に何のために対価を払っているかを機能の外側から見抜く力」であり、対話とは「事実と自分の解釈(ストーリー)を分けて差し出す力」である。Q1ではJTBDの3側面(機能的・感情的・社会的job)により、機能拡充がなぜ顧客の本当の不安を解消できず解約を止められないのかを診断する力を、Q2ではクルーシャル・カンバセーションの3条件とSTATE法により、双方が無意識に信じる「相手を悪者にする物語」を脇に置いて板挟みの対話を開く力を、Q3ではThree Horizonsモデル・Power-Interestグリッド・ピラミッド原則を組み合わせ、正しい戦略判断を社内政治と取締役会向けの伝達構造の両面から実行に移す複合力を扱った。共通するのは「表面の機能・結論・数字の裏にある、顧客の本当の恐れ、相手の物語、意思決定者の情報処理スタイルまで踏み込んで診断する」という姿勢である。

次回への接続(明日: 統合 EQ×IQ×Thinking複合)

今日Q2で扱った「事実と自分の解釈を分けて対話を開く」という技術と、Q3で扱った「正しい判断を、誰にどの順序で伝えるかまで設計する」という視点が、明日はより個人的な感情の揺れとリーダーシップの意思決定が絡み合う複合ジレンマの中でどう機能するかが問われる。