Day 014 — PdM-リサーチ: ユーザーインタビュー設計

2026-08-29 (Sat) 🟢 Junior PdM-リサーチ(ユーザーリサーチ・指標設計) 成果物: インタビューガイド(質問設計書)

🎬 シナリオ

MOps(Marketing Ops/販促システム)チームは、消耗品(サプリメント・日用品)の「定期おトク便」(定期購入プログラム)を担当している。データ分析チームが直近半年の解約タイミングを集計したところ、奇妙な傾向が見つかった。

配送回数解約率(その回の配送後1ヶ月以内)
1回目配送後3%
2回目配送後5%
3回目配送後22%
4回目以降配送後(平均)8%

3回目の配送を境に解約率が突出して跳ね上がっている。解約フロー内には理由選択(任意・複数選択可)の項目があるが、集計結果は「商品が合わなかった(42%)」「量が多い/少ない(18%)」「特に理由なし(25%)」「価格(10%)」「その他(5%)」と、当たり障りのない選択肢に分散しており、なぜ"3回目"というタイミングに集中するのかは説明できていない。

PdMから「来月、直近1ヶ月以内に3回目配送後に解約した会員に、謝礼付きでインタビューできることになった。6名分の枠がある。次の四半期施策(解約引き止め施策を作るかどうか)の判断材料にしたいので、質問設計をお願いしたい」と依頼された。

💬
エンジニアリード「解約理由を直接聞くと、みんな"商品が合わなかった"みたいな一般論でそれっぽく答えがちだと思う。実際に解約ボタンを押した瞬間、その前後で何が起きていたかを具体的に聞き出してほしい」
💬
CSチーム「解約フローの理由選択は必須項目じゃないので、"特に理由なし"を選ぶ人が多くて実態が全然わからない」

📝 課題

あなたのタスク: 今回のユーザーインタビューのための「インタビューガイド」を作成してください。以下を含めること。

  1. インタビューの目的とリサーチクエスチョン(何を明らかにしたいか)を明文化する
  2. スクリーニング条件(誰にインタビューすべきか)を定義する
  3. 誘導質問を避けた行動ベースの質問を、導入〜本題〜クロージングの流れで並べる(合計10〜15問程度)
  4. 各質問について、それが「なぜその聞き方なのか」(誘導を避ける工夫、行動を聞き出す工夫)を一言添える

🔍 ヒント(段階的開示)

取り組む前のヒント
  • 「なぜ解約したのですか?」という直接的な質問は、解約フローの理由選択と同じ落とし穴に陥る。相手はその場でもっともらしい理由(「量が多かったので」等)を作りやすい
  • 今回は「3回目配送後」というタイミングが焦点なので、1回目・2回目・3回目それぞれの受け取り時の状況を時系列で追う質問を用意すると、"何かが3回目で変化した"瞬間を捉えやすい
  • 解約ボタンを押した「直前」の状況(在庫が余っていた、他に安い商品を見つけた、次回配送日の通知を見た瞬間だった等)を具体的に聞く
  • 「もう使っていない」という状態と「使っているが定期便としては要らない」という状態は別物。使用継続の有無を切り分ける質問を入れる
  • 解約前に他の選択肢(一時休止、頻度変更、量の変更等)を検討したかどうかも聞くと、そもそも定期便の柔軟性が知られていたかが分かる
  • 対象者はすでに解約済みで自社との接点が薄い人たちなので、依頼の切り出し方(協力してもらう理由の説明)にも軽く触れておくとよい

📚 背景知識・用語解説

「なぜ辞めたか」を直接聞かない理由

解約・離脱理由のインタビューは、通常のユーザーインタビュー以上に後付けの理由が混ざりやすい領域です。人は「なぜやめたのか」と聞かれると、自分の行動に一貫した説明をつけようとする心理が働き、実際にはっきりした理由がなくても「商品が合わなかったから」のような、もっともらしく聞こえる一般論を答えてしまいます。これは解約フローの理由選択(チェックボックス)でも同じ現象が起きており、今回のケースでも「特に理由なし」「商品が合わなかった」という当たり障りのない回答に分散している一因と考えられます。

これに対処するには、「なぜ辞めたか」を聞くのではなく、解約に至るまでの一連の行動を時系列で再現してもらうアプローチが有効です。「解約ボタンを押した瞬間、何をしていましたか」「その直前に何がありましたか」のように、具体的な場面を思い出してもらうことで、本人も意識していなかった実際のきっかけ(例:次回配送の通知メールを見た瞬間に在庫の山を思い出した、等)が見えてくることがあります。

タイミングに着目したインタビュー設計

今回のケースの特徴は、「3回目配送後」という特定のタイミングに解約が集中していることです。このような場合、単に「なぜ解約したか」を聞くのではなく、1回目・2回目・3回目それぞれの受け取り時点での状況を時系列で並べて聞くことで、「2回目までは平気だったのに、3回目で何が変わったのか」という変化点を特定しやすくなります。これはカスタマージャーニーマップ的な考え方をインタビュー設計に応用したものです。

解約済みユーザーへのインタビューの特有の注意点

現役ユーザーへのインタビューと異なり、解約済みユーザーは既にサービスへの関心が薄れている場合があります。そのため、依頼メールや冒頭の説明で「なぜ協力してほしいか」「今後のサービス改善にどう使われるか」を明確に伝え、参加への心理的なハードルを下げる工夫が必要です。また、解約から時間が経ちすぎると記憶が薄れるため、直近1ヶ月以内の解約者に限定するなどのスクリーニング条件が重要になります。

✅ 模範解答

📄
インタビューガイド — 定期おトク便「3回目配送後の解約」に関するユーザーインタビュー
実施概要: 1人30分・オンライン・対象6名・謝礼あり・実施担当: あなた(記録係を1名同席させる)

1. 目的・リサーチクエスチョン

項目内容
目的「3回目配送後」の解約率が突出して高い(22%、他の回の平均の3〜4倍)現象の背景にある実際の行動・心理を特定し、解約引き止め施策の要否・方向性を判断する材料を得る
RQ11回目・2回目・3回目の配送受け取り時点で、ユーザーの状況や気持ちはどう変化していたか
RQ2解約ボタンを押す直前、具体的に何がきっかけになったか
RQ3解約以外の選択肢(一時休止・頻度変更・量変更)は認知・検討されていたか
非対象商品そのものの味・成分に対する評価(今回は購入体験・解約に至るプロセスに限定し、商品開発への意見収集は対象外)

2. スクリーニング条件

条件理由
直近1ヶ月以内に「3回目配送後」に解約したことがある記憶が新しいうちに、解約に至った具体的な状況を聞き出すため
定期便の対象商品カテゴリ(サプリメント/日用品)を最低2名ずつ含めるカテゴリによって離脱理由の傾向が異なる可能性があるため、片方に偏らないようにする
解約フローで理由選択を「特に理由なし」と回答した人を最低3名含める今回最も実態が見えていない層(表面上は理由が読み取れない層)を優先的にカバーする
解約前にCSへ問い合わせた経験がある人・ない人を混在させる(各2〜3名)問い合わせをせず静かに離脱した層の声を、問い合わせ経験者と比較して拾う
過去に定期便以外の単発購入でリピート利用がある人を含める(除外しない)「サービス自体への不満」なのか「定期購入という契約形態への不満」なのかを切り分けるヒントになる

3. インタビュー質問(導入→本題→クロージング)

#フェーズ質問意図(なぜこの聞き方か)
Q1導入本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございます。今回は今後のサービス改善のために、実際にご利用いただいた際の状況を伺いたく、率直なお話を聞かせてください。まず、定期おトク便を申し込まれたきっかけを教えていただけますか?冒頭で協力への感謝と目的(サービス改善)を伝え、解約済みユーザーの協力ハードルを下げる。申込のきっかけという答えやすい話から入る
Q2導入最初にお届けした商品(1回目)が届いたときのことを覚えていますか? そのときはどんな感じで使い始めましたか?時系列の起点として1回目の受け取り状況を確認する。まだ問題は出ていない時期の"基準"を作る
Q3本題2回目の配送が届いたときはいかがでしたか? 1回目のときと比べて、何か感じ方に変化はありましたか?1回目→2回目の変化を具体的に聞く。「何か変化はありましたか」はオープンで誘導を避けた聞き方
Q4本題3回目の配送が届く前後のことを、できるだけ詳しく思い出せる範囲で教えてください。配送予定の通知が来たときは何をされていましたか?焦点となる3回目の状況を、通知を見た瞬間から時系列で再現してもらう。最も重要な質問
Q5本題3回目の商品を実際に受け取ったとき、ご自宅にはそれまでの商品はどのくらい残っていましたか?「量が多い」という表層的な解約理由の裏にある具体的な在庫状況を、意見でなく事実として確認する
Q6本題解約の手続きをされたのは、3回目の商品を受け取ってからどのくらい経ってからでしたか? その日、他に何かきっかけになるような出来事はありましたか?「なぜ解約したか」を直接聞かず、解約という行動に至った直前の具体的な出来事を聞くことで、後付けでない実際のきっかけを引き出す
Q7本題解約の手続き画面を開いたとき、実際にどんな画面や選択肢を見た記憶がありますか?解約フロー自体のUI体験を、意見でなく見た内容として具体的に聞く。理由選択で「特に理由なし」を選んだ経緯も自然に出てくることが多い
Q8本題解約する前に、配送の頻度を変える、一時的にお休みする、といった他の選択肢があることはご存知でしたか? もしご存知だった場合、それらは検討されましたか?解約以外の選択肢の認知・検討有無を確認する。認知されていなければ、それ自体が解約引き止め施策のヒントになる
Q9本題解約された後、商品自体は使い切りましたか? まだ手元に残っている場合、どのくらい残っていますか?「商品が合わなかった」と「量が多すぎて消費が追いつかなかった」を、実際の消費状況という事実ベースで切り分ける
Q10本題もし仮に、配送の頻度やタイミングをご自身で自由に調整できていたとしたら、3回目のタイミングで何か違う選択をしていたと思いますか?意見を聞く質問だが、ここまでの行動の振り返りを踏まえた終盤に配置することで、具体性のある回答を引き出す
Q11本題定期おトク便以外の場面で、単発での購入や他の商品をご利用いただいたことはありますか? その際の印象と、今回の定期便の印象に違いはありますか?サービス全体への不満なのか、定期購入という契約形態特有の不満なのかを切り分ける比較材料を得る
Q12クロージングここまでお話しいただいた中で、話し忘れたことや、こちらから聞かれなかったけれど伝えておきたいことはありますか?想定外の重要情報を拾うための保険。質問リストの枠外の情報を得る唯一の機会
Q13クロージング本日は貴重なお話をありがとうございました。もし今後、頻度調整などの新しい選択肢が追加された場合、改めてご利用を検討いただける可能性はありますか?引き止め施策の方向性(頻度調整の需要があるか)を最後に軽く確認しつつ、良好な関係で締める

💡 なぜこう作るのか

1
Q2〜Q4で1回目・2回目・3回目の受け取り状況を時系列で順に聞いているのは、「3回目で何が変わったのか」という変化点を特定するのが今回の核心的な目的だからです。いきなり「3回目のときはどうでしたか」とだけ聞くと、比較対象がないまま話が始まり、何が"3回目特有"の要因なのかが本人にも整理されないまま語られてしまいます。1回目・2回目を先に聞いておくことで、3回目の語りが自然と対比構造になります。
2
Q6で「なぜ解約したか」ではなく「解約手続きをしたのは受け取ってからどのくらい経ってからか」「他に何かきっかけになる出来事はあったか」と聞いているのは、解約フローの理由選択と同じ落とし穴(もっともらしい後付け理由)を避けるためです。時間的な近さや具体的な出来事を聞くことで、本人が意識していなかった実際のトリガー(例:通知メールを見た瞬間に在庫の山を思い出した)が語られやすくなります。
3
Q5・Q9で在庫の残量や消費状況を事実として確認しているのは、「商品が合わなかった」という解約理由の選択肢が、実際には「量が多すぎて消費ペースが追いつかなかった」という別の実態を覆い隠している可能性があるためです。意見(合う/合わない)ではなく、在庫という観測可能な事実で検証します。
4
Q8で解約以外の選択肢の認知を確認しているのは、そもそも「一時休止」「頻度変更」といった機能の存在が知られていなければ、機能改善ではなく告知・導線の改善が優先課題になる可能性があるためです。これは施策の方向性(新機能を作るか、既存機能の見せ方を変えるか)を左右する重要な分岐点になります。

⚠️ よくある失敗パターン

失敗パターンなぜ問題か改善策
「なぜ解約したのですか?」と単刀直入に聞いてしまう 解約フローの理由選択と同じく、もっともらしい後付け理由(一般論)が返ってきやすい 解約直前の具体的な出来事・タイミングを聞く質問に置き換える
3回目の状況だけを聞き、1回目・2回目との比較を用意しない 「3回目で何が変わったか」という変化点が特定できず、3回目固有の要因なのかどうか判断できない 時系列で1回目→2回目→3回目の状況を順に聞き、対比構造を作る
解約理由を意見(合う/合わない)ベースでしか聞かない 「商品が合わなかった」という主観的な回答の裏にある事実(在庫が余っていた等)が見えない 在庫の残量・消費状況など、観測可能な事実を確認する質問を挟む
解約以外の選択肢(休止・頻度変更)の認知を確認しない 機能自体は存在するのに知られていないだけ、という可能性を見逃し、不要な新機能開発に進んでしまう 既存の代替手段の認知・検討有無を必ず確認する
解約済みユーザーへの依頼で目的説明を省略する 既にサービスへの関心が薄れている相手に警戒され、協力を得にくい、または表面的な回答で終わる 冒頭で「今後のサービス改善のため」という目的と感謝を明確に伝える

🏆 実務での使いどころ

解約・離脱理由のインタビューは、PdMだけでなくエンジニアが「なぜこの機能は使われないのか」「なぜこの設定はオフにされがちなのか」を調べる場面でも同じ考え方が使えます。特に「直接理由を聞かない」「時系列で行動を再現してもらう」「事実と意見を切り分ける」という3つの原則は、解約理由に限らず、あらゆる離脱・非利用の調査に応用できます。今回のインタビューで得られた発言は、次のPdM-リサーチのテーマ(North Star Metricの設計、定量データ分析等)で、解約率のデータと突き合わせて仮説を検証する土台になります。データ分析チームと一緒にインタビューに同席してもらうと、定量データとの矛盾や補完関係に気づきやすくなります。

🚀 次のステップ

今回作成したインタビューガイドを使って6名にインタビューを実施したと仮定した場合、次は発言内容(例:「3回目が届いたとき、まだ2回目の分が半分以上残っていた」「頻度を変えられることを知らなかった」等)を整理し、解約に至るまでの心理・行動の変化をカスタマージャーニーマップとして可視化する、という流れが自然です。次回のPdM-リサーチ(テーマ#2 JTBD、またはテーマ#3 カスタマージャーニーマップへの進行判定)では、この続きのシナリオを扱う想定です。

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