Day 037 — PM-推進: スプリント計画の立て方

2026-09-25 (Fri) 🟢 Junior PM-推進(アジャイル運営・ステークホルダー) 成果物: スプリント計画書(ゴール・予測の根拠・QA検算・WIP上限・見直し条件)+ 採らなかった案

🎬 シナリオ

MOps チームは 「お歳暮ギフト対応(ラッピング・のし)」 を開発している。ギフト受付の開始は 11/2(月)10:00。カタログとメルマガで告知済みで、動かせない。リリース前の凍結は 10/28(水)。残りのスプリントは2回しかない。

  • Sprint 19: 9/28(月)〜10/9(金)稼働10日 ← 今回計画するスプリント
  • Sprint 20: 10/12(月・スポーツの日)〜10/23(金)稼働9日

体制はエンジニア4名(A・B: バックエンド、C: フロントエンド、D: フルスタック)と QA 1名(E)。2週間スプリント。

困っているのは、この4スプリント、毎回「計画の6割前後しか終わらない」こと。毎回、最終日に「ほぼ終わっている」項目が4〜6件残り、持ち越される。単発の障害や欠員ではない。

💬
PO「前回15ptしか終わらなかったのは連休のせい。普段は32〜35pt計画しているし、今回も 33pt 積みたい。特に G6 の複数届け先 はマーケが一番欲しがっているので、必ず入れてほしい」
💬
EM「毎回持ち越しているのに、計画の量を変えないのはおかしい。ただ、減らすなら『なぜ減らすのか』を PO が納得できる数字で見せてほしい。それと、何がボトルネックなのかも」

あなたはプランニングのファシリテーターを任された。

過去4スプリントの実績 実測

スプリント期間稼働日計画pt完了pt最終日に進行中うちQA待ち割り込み対応QA作業見積もり / QA作業可能時間
S158/3–8/149(8/11 山の日)34215338h52h / 49.5h
S168/17–8/281032234331h58h / 55h
S178/31–9/111035196452h61h / 55h
S189/14–9/257(9/21–23 連休)30155341h44h / 38.5h

その他の実測値

項目値出所
4スプリントで完了した件数19件(稼働36日)実測 課題管理ツール
スプリント中の同時進行件数(日次平均)6.5件実測 ボードの日次スナップショット
着手から完了までの平均日数(サイクルタイム)11.8稼働日実測 課題管理ツール
会議を除いた1人1日の作業可能時間5.5h実測 カレンダー集計
時間見積もりに対する実績の比エンジニア 1.5倍 / QA 1.2倍実測 直近4スプリントのタスク
前年のギフト受注の山11/20〜12/10実測 社内の受注データ

Sprint 19 の在席予定: A・B・D は10日、C は 10/8–9 休暇(8日)。QA の E は 10/1 社外研修(9日)。

Sprint 19 の候補(PO の並び順・プランニングポーカー済み)

ID項目ptPO の優先度備考
G1【繰越】のし種別マスタ(御歳暮・御礼・内祝など6種)と注文明細への保存5最優先実装完了。QA待ちのまま S18 終了
G2【繰越】ラッピング料金(1個口 330円・税込)を注文金額の計算に反映5最優先実装約7割。金額計算の既存テストが薄く、レビューで差し戻し
G3カート画面のラッピング・のし選択 UI(有無・のし種別・表書き)5高
G4のしの名入れ(贈り主名、全角10文字まで)の入力とチェック5高
G5倉庫のピッキングリスト(CSV)にラッピング・のしの指示列を追加3高物流部: 10/19 から倉庫スタッフ研修。実物の CSV サンプルが要る
G61注文で複数の届け先(最大10件)を指定13高(マーケ強く要望)送料計算・在庫引当・配送伝票の分割に影響
G7ギフト用の納品書(金額を表示しない)の出力3中
G8ラッピング見本画像のプレビュー3低デザイン部の要望
G9注文金額計算の単体テスト整備(エンジニア提案)3提案G2 の差し戻しの原因
PO 案: G1 + G2 + G3 + G4 + G633

📝 課題

あなたのタスク: 月曜のプランニングで使う Sprint 19 の計画書 を作ってください。次の5点を含めること。

  1. 持ち越しが続く原因の診断(表のデータから。「頑張りが足りない」「見積もりが甘い」で止めない)
  2. 今回の予測量(pt)とその計算。「連休のせい」という PO の主張に数字で答える
  3. スプリントゴール(1〜2文)と、それに対するスプリントバックログ(何を入れ、何を入れないか、理由)
  4. QA の作業時間での検算と、同時進行の上限(WIP 上限)などの進め方のルール
  5. 途中の見直し条件(何日目に何を見て、どうなっていたら何を削るか)

加えて、検討した計画案(採らなかった案)を2つ以上、理由と「判断が変わる条件」つきで残してください。

🔍 ヒント(段階的開示)

ヒント1: 稼働日で割る
稼働日数が違うスプリントの完了 pt をそのまま平均しない。1稼働日あたりに直すと、連休の影響とそれ以外が分かれる。
ヒント2: どこで詰まっているか
「最終日に進行中」のうち何件が QA 待ちか。QA 作業の見積もり合計と QA の作業時間を並べてみる。pt はチーム全体の量なので、1人しかいない役割の詰まりは pt では見えない。
ヒント3: リトルの法則
平均サイクルタイム = 平均同時進行件数 ÷ 1日あたり完了件数。これがスプリントの長さ(10日)より長いと、スプリント後半に着手した項目は終わらない。
ヒント4: 約束は何か
スクラムガイドでは、スプリントの「約束」は個々の項目ではなくスプリントゴール。項目の量は「予測」。ゴールを項目の羅列にすると、途中で何を削ってよいか判断できなくなる。
ヒント5: 13pt の項目とギフトの常識
13pt の項目は、このチームのサイクルタイムで1スプリントに収まるか。また、お歳暮で「金額入りの納品書」が同梱されたらどうなるか。G7 の優先度「中」は妥当か。

📚 背景知識・用語解説

📖
スクラムガイド2020 — scrumguides.org/scrum-guide.html(参照日 2026-09-25)
  • スプリントプランニングで扱う3つの問い: なぜ価値があるか(Why)/何を完成させられるか(What)/どうやって完成させるか(How)
  • Why の答えがスプリントゴール。ガイドはこれを「スプリントの唯一の目的」とし、スプリントバックログに対する約束(コミットメント)と位置づける
  • 予測の精度を上げる材料として「過去の実績、今後のキャパシティ、完成の定義」を挙げる
  • スプリント中は「ゴールを危うくする変更はしない」「品質を下げない」「学んだことに応じて PO とスコープを明確化・再交渉する」
  • 完成の定義を満たさない項目はレビューで見せることもできず、プロダクトバックログに戻る。「9割終わった」は0と同じ
🌤️
昨日の天気(Yesterday's Weather) — Scrum Inc.(参照日 2026-09-25)
次のスプリントで終わる量の最良の予測は、直近で実際に終わった量。Jeff Sutherland らのパターン集にある考え方。「計画した量」ではなく「完了した量」を見る。
⚖️
ベロシティ駆動とキャパシティ駆動 — Mike Cohn「Why I Prefer Capacity-Driven Sprint Planning」(参照日 2026-09-25)
ベロシティ駆動=過去の平均 pt まで積む。キャパシティ駆動=1項目ずつタスクに分けて時間を見積もり、満杯で止める。Cohn はベロシティが短期では±20%程度ぶれるとしてスプリント単位にはキャパシティ駆動を好み、ベロシティは長期の見通しに使うとする。今回は pt で総量を決め、時間で QA の詰まりを検算するという形で両方を使う。
🧮
リトルの法則 — J. D. C. Little, "A Proof for the Queuing Formula: L = λW", Operations Research 9(3), 1961, pp.383–387(DOI: 10.1287/opre.9.3.383)
平均の仕掛かり数 = 1単位時間あたりの処理数 × 平均の滞在時間。同時にたくさん着手するほど、1件が終わるまでの日数は長くなる。処理能力が同じなら、着手を絞るだけで1件が早く終わる。

ボトルネック(制約): 流れ全体の速さは、いちばん詰まっている工程で決まる。エンジニア4人・QA 1人なら、QA を通った分しか「完成」にならない。ボトルネックでない人の空き時間は、ボトルネックを助けるのに使う。

✅ 模範解答

1. 持ち越しの原因の診断

(1) 連休の影響を除いても、完了量は計画の約3分の2で安定している

スプリント稼働日計画pt完了pt完了pt / 稼働日計画に対する完了率
S15934212.3362%
S161032232.3072%
S171035191.9054%
S18730152.1450%
平均32.819.52.1760%

出所: 導出(実測値から計算)

PO の言うとおり、S18 の15ptは稼働日が7日しかなかったためで、1日あたりに直すと 2.14pt で、ふだんと変わらない。ただしそれは「このチームのふだんのペースは10日で約22pt」ということでもある。33ptは、この4回で一度も達成されていない量。連休は S18 の説明にはなるが、S15〜S17 の持ち越しの説明にはならない。

(2) 詰まっているのは QA

  • 最終日に進行中だった 5・4・6・5件のうち、QA 待ちが 3・3・4・3件(毎回半分以上)
  • QA 作業の見積もりは4回とも QA の作業可能時間を超えていた。しかも QA の見積もりは実績で1.2倍に膨らむ
  • エンジニアの実装量に合わせて計画し、QA の時間を見ていなかった。pt では1人しかいない QA の詰まりは見えない

(3) 同時に着手しすぎて、1件が終わるまでにスプリントより長くかかっている

1日あたりの完了件数 = 19件 ÷ 36稼働日 ≒ 0.53件/日 導出
平均サイクルタイム = 同時進行 6.5件 ÷ 0.53件/日 ≒ 12.3日 導出・リトルの法則
実測のサイクルタイム = 11.8日 実測(計算とほぼ一致)
試してみる: 同時進行件数とサイクルタイム
完了ペースは 0.53件/日のまま(仮定)
平均サイクルタイム(白線 = スプリント10日)

1件が終わるまで平均約12日、スプリントは10日。2日目以降に着手した項目は、平均的にはスプリント内に終わらない。これが「毎回9割で持ち越す」の正体。

🩺
診断のまとめ: ①完了実績ではなく計画の習慣で量を決めている ②QA の時間を検算していない ③同時着手が多すぎてサイクルタイムがスプリントより長い。「見積もりが甘い」ではない。

2. Sprint 19 の予測量

在席: エンジニア A10 + B10 + C8 + D10 = 38人日(フル在席40人日)→ 95%
予測 = 1日あたり完了pt × 稼働日10日 × 在席率95%
  中央: 2.17 × 10 × 0.95 ≒ 20.6pt
  低め: 1.90 × 10 × 0.95 ≒ 18.1pt(過去4回で最も遅いペース)
  高め: 2.33 × 10 × 0.95 ≒ 22.2pt(過去4回で最も速いペース)
→ 予測の幅 18〜22pt 導出
試してみる: 予測の計算機(S20 なら稼働日9)

ゴールに必要な項目は、幅の下限 18pt 以内に収める。下限なら、過去4回のどのペースでもゴールには届く。

3. スプリントゴール

1つの届け先へのお歳暮注文で、ラッピングとのし(種別・表書き)を選び、その料金が注文金額に正しく入り、倉庫のピッキングリストに指示が出るところまでを、ステージング環境で通しで確認できる状態にする。
  1. 11/2 に最低限必要なのは、画面・金額・倉庫がつながっていること。部品が別々に9割できていても、つながっていなければ受付は始められない
  2. 物流部は 10/19 からの研修に実物の CSV が要る。S19 で G5 を終えれば 10/9 に渡せて10日の余裕ができる
  3. 金額計算(G2)は、誤りが出ると受付開始後に止めるしかない部分。先に通しで確認する

4. スプリントバックログ

順ID項目pt区分理由
1G1【繰越】のし種別マスタ5ゴール実装済みで QA だけ。初日に QA に流す
2G2【繰越】ラッピング料金の金額計算 + ラッピング料金に関わる境界テスト(G9 のうち G2 に関係する部分)5ゴール差し戻しの原因だったテスト不足を G2 の完成の定義に含める。G9 を別項目にすると、また後回しになる
3G3カート画面の選択 UI(有無・のし種別・表書き)5ゴール一本道の入口
4G5ピッキングリストの指示列3ゴール一本道の出口。物流部の研修に間に合わせる
ゴールの合計18予測の下限 18.1pt に収まる
5G4のし名入れ5余力枠着手条件は「見直し条件」参照。約束に含めない
6G7金額非表示の納品書3余力枠同上
—G6複数届け先13入れない分割の話し合いだけ行う(PO・A・D で1時間×2回)
—G8見本画像のプレビュー3入れないゴールに関係しない
—G9金額計算テストの残り(ラッピング以外)2相当入れないG2 に必要な部分だけ取り込んだ。残りはプロダクトバックログへ
✂️
G6(13pt)を入れない理由: サイクルタイム約12日のチームで、1スプリントの予測(約20pt)の6割以上にあたる1項目。送料計算・在庫引当・配送伝票の3つにまたがる。QA に入るのは早くても最終週で、9割で持ち越す最有力候補。そうなると 11/2 に一本道も複数届け先も揃わない。

5. QA の作業時間での検算

IDエンジニア見積もりQA 見積もり
G12h6h
G2(境界テスト込み)14h10h
G330h10h
G510h4h
通しの確認(注文→倉庫 CSV)4h8h
合計(見積もり)60h38h
実績比で補正(エンジニア×1.5、QA×1.2)90h45.6h

見積もり: タスク分解の結果 / 補正比 実測 / 合計 導出

QA の負荷(白線 = QA の作業可能時間 49.5h = 9日 × 5.5h)
エンジニアの負荷(白線 = 162h = 38人日 × 5.5h − 割り込み予約 47h)

割り込み予約 47h: 1稼働日あたりの割り込み(4.2・3.1・5.2・5.9h)の中央値 4.7h × 10日 導出。PO 案の QA = (6+10+10+8+20)×1.2 ≒ 65h、エンジニア = (2+14+30+16+40)×1.5 ≒ 153h(G4・G6 の時間見積もりはタスク分解の概算)。

🔁
エンジニアには時間が余り、QA には余らない。だからエンジニアが QA の一部を引き受ける:
  • G2 の金額計算の回帰テストを自動化(B、QA の手作業を約5h減)
  • G5 の CSV は D が期待値ファイルとの差分チェックを作り、物流部に実物サンプルで確認してもらう(QA 約3h減)
これで QA の負荷は 45.6 − 8 ≒ 37.6h(約76%)。

6. 進め方のルール(このスプリントで試す)

ルール内容理由
同時進行の上限「実装中」と「QA 中」を合わせて 3件まで完了ペースが同じでもサイクルタイムは 3 ÷ 0.53 ≒ 約5.7日 仮定: 完了ペース不変
上限に達したら新しい項目に着手せず、QA 待ちの項目のテスト・レビュー・修正を手伝う手が空いたエンジニアが新規着手すると、また QA 待ちが増える
着手順G1 → G2 → G3 → G5。G1 は初日に QA へ繰越を最初に片付け、QA の手を初日から止めない
完成の定義QA 完了・ステージングで確認済み・金額に関わる変更は境界テストつき「9割」は完成ではない

7. 途中の見直し条件

時点見るものこうなっていたら対応
3日目(9/30)G2 が QA に入ったか入っていないD が B とペアで G2 に入る。G3 は C だけで続ける
6日目(10/5)ゴール4件のうち QA 完了数/QA の残り時間QA 完了2件以上、かつ QA の残り作業が残り時間の半分以下G4(名入れ)に着手してよい
6日目(10/5)同上QA 完了が1件以下G4・G7 には着手しない。エンジニアは QA 支援へ
8日目(10/7)G3 が QA に入ったか入っていないPO と G3 の範囲を話し合う(例: 表書きの自由入力をやめ選択肢だけに)。一本道は守り、中身を削る
随時割り込み対応の累計予約47h を超えそうPO に報告。余力枠を諦めるか、割り込みを止めるかを PO が決める

8. PO への説明(プランニングの冒頭で5分)

  • 「連休のせい、は S18 については正しいです。ただ1日あたりにすると S18 はふだんどおりで、ふだんのペースが10日で約22ptなんです。33ptはこの4回で一度も終わっていません」
  • 「持ち越しの半分以上は QA 待ちです。QA の作業は4回とも QA の時間を超えていました。PO 案だと QA 作業は約65h、QA の時間は約50hです」
  • 「今回は 18pt でゴールを約束します。過去いちばん遅いペースでも終わる量です。余力が出たら G4・G7 に進みます」
  • 「G6 は入れないのではなく、今回のスプリント中に分割して、10/9 のレビューで『11/2 に何件の届け先まで出すか』を決められる材料を出します」

9. リリースまでの見通し(10/9 のレビューで PO が決めること)

S20 の予測: 2.17 × 9日 ≒ 19.5pt(幅 17〜21pt)導出。余力枠に着手できなかった場合、S20 に残るのは G4 5 + G7 3 + G6 13 + G8 3 = 24pt で予測を超える。

項目ギフトとしての必要度S20 の扱い(案)
G7 金額非表示の納品書贈り物に代金入りの納品書が同梱されると贈り主が困る。受付開始時に必要PO の優先度「中」→「高」を提案
G4 のし名入れお歳暮ののしは贈り主名を入れるのが一般的。受付開始時に必要S20 で必ず入れる
G6 複数届け先無くても1件ずつ注文すれば贈れる(手間は増える)分割の結果しだい。受注の山は 11/20〜12/10 なので 11/16 までの追加リリースでも間に合う
G8 見本画像無くても注文できるS20 では入れない
📌
第一候補: 11/2 は1届け先で受付を開始し、複数届け先は 11/16 に追加する。決めるのは PO とマーケ。

🧭 なぜこう作るのか

1
完了 pt を稼働日で割った。 PO の「連休のせい」は S18 については事実。否定から入ると議論にならない。1日あたりに直せば「S18 は連休のせい」と「そもそも計画が多い」の両方が同じ表から言える。
2
pt で総量を決め、時間で QA を検算した。 pt だけでは1人しかいない QA の詰まりが見えない。時間だけで積むとエンジニアの162h を埋めて QA があふれる。キャパシティ駆動を「特定の人の時間を見る」ために部分的に使った。
3
ゴールを「一本道を通す」にした。 「G1〜G5 を完了する」は唯一の目的になっていない。一本道にしておけば、途中で G3 の中身を削るときも「一本道が通るか」で判断できる。
4
余力枠を「約束しない」と明示した。 PO は「最大でどこまで行く可能性があるか」が分かり、チームは「全部やらないと失敗」という圧力から外れる。
5
G9 を分割し、G2 に必要な部分だけ完成の定義に入れた。 技術的な改善を別項目にすると、機能の優先度に負けて毎回後回しになる。
6
WIP 上限をリトルの法則の計算で説明した。 「WIP を減らしましょう」だけでは精神論に聞こえる。「今は1件に12日、3件に絞れば約6日の計算」と言えば試す理由になる。

⚖️ 検討した計画案と採らなかった理由

案内容判断理由判断が変わる条件
A. PO 案計画の平均どおり 33pt(G6 含む)不採用33pt は4回とも未達。QA 作業は約65h で QA の時間の約1.3倍。G6 が9割で持ち越す可能性が高いQA が1名増えるなど、QA の時間が約65h 以上確保できる場合
B. 完了 pt の単純平均19.5pt まで積む手法として不採用今回はたまたま近いが、稼働7日の S18 が混ざる。S20(稼働9日)では日数で直さないとずれる全スプリントの稼働日が同じなら単純平均で十分
C. 時間だけで積むエンジニアの162h が埋まるまで(G4・G6 まで入る)不採用(検算にだけ使う)詰まっているのは QA。エンジニアの時間で積むと QA があふれ、これまでと同じ結果になるQA の作業の大半が自動テストで済むようになった場合
D. G6 をゴールにするマーケが一番欲しい複数届け先をゴールに不採用サイクルタイム約12日のチームで13pt の1項目は収まりにくい。持ち越すと 11/2 に一本道も無いG6 を5pt以下に分割でき、その一部が 11/2 に必須と PO・マーケが判断した場合
E. 採用案稼働日で直した完了ペースで 18〜22pt、ゴールは下限18pt、QA 時間で検算、同時進行3件まで採用PO の主張の正しい部分を認めたうえで、持ち越しの原因(QA・同時着手)に手を打てるWIP 上限を2スプリント試して、1日あたり完了が 1.9pt を下回り続けたら上限値を見直す

⚠️ よくある失敗パターン

失敗パターンなぜ問題か改善策
「計画した pt」の平均で積む毎回持ち越すチームでは、計画の平均は達成されたことのない数字完了した pt を見る(昨日の天気)
稼働日数が違うスプリントをそのまま平均する連休のスプリントが混ざると低く出て「連休のせい」論争になる1稼働日あたりに直してから比べる
pt だけで計画する1人しかいない役割(QA・デザイナー等)の詰まりが見えない詰まりやすい役割だけでも時間で検算する
項目の羅列をスプリントゴールにする途中で何を削ってよいか判断できない。全部できないと失敗になる「何ができる状態にするか」を1文で書く
手が空いたら次の項目に着手する同時進行が増え、1件が終わるまでの日数が延びる上限を決め、上限に達したら QA・レビューを手伝う
技術的な改善を別項目にする機能の優先度に負けて毎回後回しになる機能の完成の定義に、その機能に必要な分だけ含める

🏢 実務での使いどころ

「毎回持ち越す」チームは多いが、原因を見積もりの甘さや頑張りに求めると次も同じことが起きる。このシナリオの診断は、課題管理ツールとボードから取れる数字(完了 pt・稼働日・QA 待ち件数・同時進行件数・サイクルタイム)だけでできる。ファシリテーターがプランニング前に集計しておけば、「PO の希望」と「チームの感覚」の言い合いを、同じ表を見ながらの話し合いに変えられる。

  • PO: 「約束はゴール、量は予測」と整理すると、「確実に届くもの」と「最大でどこまで行くか」を分けてステークホルダーに説明できる
  • QA: ボトルネックの人の不足を計画の場で数字で示すと、エンジニアがテストを手伝う話を始めやすい
  • 物流部・マーケ: 他部署の日付(研修 10/19、受付 11/2)を、ゴールの順番を決める根拠に使う

転用できるテンプレート

診断: スプリント | 稼働日 | 計画pt | 完了pt | 完了pt/稼働日 | 最終日の進行中(うち○○待ち)
予測: 1日あたり完了pt × 稼働日 × 在席率 → 下限〜上限
ゴール: [何が] [どこまで] できる状態にする(1文)
バックログ: 順 | ID | pt | 区分(ゴール/余力枠/入れない) | 理由
検算: 詰まりやすい役割の 見積もり×実績比 / 作業可能時間
ルール: 同時進行の上限・上限に達したときの動き・完成の定義
見直し: 何日目 | 見るもの | こうなっていたら | 対応

➡️ 次のステップ

  • Sprint 19 のレトロで、ゴール達成の有無・最終日の進行中件数・平均サイクルタイムを今回の数字(進行中5件前後・11.8日)と比べる(テーマ3-3 レトロの題材)
  • バーンアップチャート(テーマ3-2)で「ゴールの18pt」と「余力枠込みの26pt」の2本の線を引くと、6日目の見直し判断にそのまま使える
  • 自分への問い: 10/5 時点で割り込みが既に40h、G3 がまだ実装中だったら、何を PO に提案するか。ゴールの文をどこまで削ってよいか

🚧 扱わなかった範囲(この演習の限界)

  • 在席率はエンジニアの休暇だけで補正し、QA の研修は QA の時間の検算に入れた。デザイナーはバックログに作業が無い前提で除外
  • 割り込み予約47h は過去4回の1日あたり中央値から出した。割り込みそのものを減らす方法(当番制・CS への一次対応移管など)は扱っていない
  • WIP 上限3件でサイクルタイム約5.7日は、完了ペースが変わらないという仮定つき。切り替えが減って上がることも、ペア作業で下がることもある。2スプリント試して実測で確かめる
  • G6 の具体的な分割案は、PdM-要求のユーザーストーリー分割(テーマ4-2)の題材として残した
  • 「実測」ラベルの数値はすべて演習シナリオ上の設定値で、実在企業のデータではない。外部の一次資料はスクラムガイド2020・Scrum Inc.・Mountain Goat Software・Little(1961)の4点
  • Sprint 20 は予測量とリリースの見通しだけで、計画の中身は作っていない

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