Day 044 — PdM-優先順位: Value vs Effort マトリクス

2026-10-01 (Thu)・バックフィル分 🟢 Junior PdM-優先順位(優先順位付け・意思決定) 成果物: ものさし定義 + 配置表(10件)+ 今期の投入案

🎬 シナリオ

MOps(Marketing Ops/販促システム)チームの検索担当(エンジニア 2 名)は、次の 6 週間(10/12〜11/20。11/20 に凍結、ブラックフライデーは 11/27)で「サイト内検索の 0 件ヒット」を減らすことになった。今日は 10/1(木)。月間検索 120 万回のうち 0 件ヒットが約 8%(9.6 万回)あり、CS 部門から「検索で出ないという問い合わせが増えた」と報告が上がっている。

💬
リード佐藤: 「全部やる余力は無い。Value vs Effort で並べて、何を今期やり、何をやらないかを、見送る案の理由つきで出して。マーケ部長は音声検索、私は検索エンジンの入れ替えを推している。どちらも並べた上で判断して。」

設定値(すべて演習の仮定)

情報値出所
月間検索回数 / 0 件ヒット120 万回 / 9.6 万回(8%)仮定
0 件の原因内訳表記ゆれ 38%(36,480)/取扱なし 30%(28,800)/型番・綴りの誤り 12%(11,520)/その他 20%(19,200)仮定(検索ログの手分類 200 件の想定)
検索経由の購入率(CVR)通常 4.0%、0 件後は 0.5%仮定
0 件が解消した場合の CVR通常の 60% = 2.4%(0.6 は根拠の弱い置き)仮定
1 注文あたり粗利5,200 円 × 28% = 1,456 円仮定
今期のキャパ40 人日(2 名×30 日の 2/3。会議・保守を引いた値)仮定

バックログ 10 件

ID案工数(人日・最頻値 / 悲観値)要望元
A表記ゆれ辞書(全半角・ひらがな/カタカナ・同義語)の導入4 / 7CS
B型番のハイフン・大小文字を無視した一致3 / 5CS
C綴り訂正(「もしかして」)の表示12 / 20マーケ
D取扱なしの検索語で「近いカテゴリ」を提示8 / 12マーケ
E検索エンジンの入れ替え60 / 90リード
F0 件ページに人気商品を表示2 / 3CS
G並び順にレビュー評価を加味(全カテゴリ)15 / 25マーケ
Hオートコンプリートの応答を 800ms → 300ms に4 / 8デザイナー
I0 件ワードの日別ダッシュボード3 / 4リード
J音声検索10 / 20マーケ部長

📝 課題

あなたのタスク: 次の 3 点を作成してください。

  1. ものさしの定義: Value と Effort を何で測るか。単位・出所・不確かさの扱いを決める
  2. 配置表: 10 件それぞれの Value と Effort を数値で出し、2 軸の閾値を決めて 4 象限(クイックウィン/大きな賭け/埋め草/金食い虫)に分類する。マトリクスに載せられない案があれば、なぜかと扱いも書く
  3. 投入案: 40 人日に対して何を積み、何を積まないか。見送る案(音声検索・エンジン入れ替えを含む)は、拾い直す条件つきで書く

🔍 ヒント(段階的開示)

ヒント1
「価値:高・中・低」の 3 段階だけで並べると、なぜ高なのかを誰も追えない。月あたり何件の注文が増えるかのように、目標の指標に換算できるか
ヒント2
0 件の原因は 4 種類ある。案ごとに効く原因が違う。案どうしで効果が重なるものはないか
ヒント3
先に A を入れると、F が拾える 0 件の母数は減る。価値は実施順で変わる
ヒント4
価値が「幅」でしか言えない案(G・E)は、点で置いてよいか
ヒント5
計測用のダッシュボード(I)は価値の軸に載るか
ヒント6
工数の小さい案ばかりを選ぶと何が起きるか

📚 背景知識・用語解説

📖
Value vs Effort マトリクスは、案を「得られる価値」と「かかる工数」の 2 軸に置いて 4 つに分ける道具(Impact/Effort マトリクスなど名前はいろいろ。出所は記憶に基づき未照合)。

なぜ 2 軸か: 価値だけで並べると工数の見落としで計画が破綻し、費用対効果の 1 つの比だけで並べると小さすぎる案(価値 10・工数 1)が上位を占める。2 軸に分けておくと、「価値は大きいが重い」案を分割するという次の手が見える。

限界(今日の核): ①価値は主観が入る。Intercom の RICE は Confidence(確信度)を掛け、工数も「人月」にそろえて対処する(McBride 2018-01-05、記事、参照日 2026-10-03)。RICE は次のテーマ(5-5)で扱う ②価値は案ごとに独立ではない(重なり・実施順) ③マトリクスは「やる/やらない」の仕分けで、作る順番(依存)は決めない
象限価値工数扱い
クイックウィン高小まず入れる。ただし本当に目標を動かすかを確認
大きな賭け高大分割して小さく試し、証拠が出てから本格投入
埋め草(フィルイン)低小余力が出たときだけ
金食い虫低大やらない。拾い直す条件を決めて見送る

✅ 模範解答

答えを見る前に自分の配置を作ってから読み比べてください。

1. ものさしの定義

軸単位計算不確かさの扱い
Value月あたりの回復注文数(件/月)対象の検索回数 × 解決率 × (通常 CVR 4.0% × 0.6 − 現状 CVR 0.5%)。差は 1.9pt「0.6」が最も弱い置きなので、0.4・0.8 でも分類が変わらないか確認する
Effort人日(最頻値。悲観値を併記)チーム 2 名の見積もり悲観値が閾値を跨ぐ案に印を付ける

粗利換算(1,456 円/件)は報告用で、並べる軸は件数にした。金額にすると平均注文額・粗利率という別の仮定が混ざるため。

2. 配置表(クイズ+試算)

クイズ: 象限を当ててみる(閾値は Value 100 件/月・Effort 5 人日)

案(Value 件/月・Effort 人日)あなたの判定
A 表記ゆれ辞書(554・4)
D 近いカテゴリ提示(137・8)
H オートコンプリート高速化(60・4)
J 音声検索(20・10)

試算: 前提を動かすと分類はどう変わるか

軸は対数。E の Value は「A〜G で取れない残り」(80)、G・H・J は設定上の固定値。I(ダッシュボード)は直接の価値が無く、載せない(前提作業の別枠)。概念図で、数値はすべて仮定。

配置表(既定値)

ID案計算式ValueEffort(悲観)象限
A表記ゆれ辞書36,480×80%×1.9%5544(7)クイックウィン
B型番の表記ゆれ無視11,520×70%×1.9%1533(5)クイックウィン
F0 件ページに人気商品96,000×10%×1.9%182(A・B・D の後は 98)2(3)クイックウィン(後は境界)
D近いカテゴリを提示28,800×25%×1.9%1378(12)大きな賭け
C綴り訂正11,520×50%×1.9%109(B の後は 33)12(20)大きな賭け → B の後は金食い虫
G並び順にレビュー評価1,104,000×0.05pt(0.02〜0.10pt)552(221〜1,104)15(25)大きな賭け(幅が大きい)
E検索エンジン入れ替えA〜G で取れない残りのみ(50〜200)8060(90)金食い虫(キャパ超過)
Hオートコンプリート高速化根拠が弱く幅で置く(20〜120)604(8)埋め草
J音声検索検索の 0.5% が音声と仮定(0〜60)2010(20)金食い虫
I0 件ダッシュボード直接の価値は無い(載せない)3(4)別枠: A・B・F・D の効果測定の前提なので先に入れる

重なりと実施順

  • C は B と同じ「型番・綴り誤り」の母数を奪い合う。B の後は対象が 11,520×30% = 3,456 に減り、109 → 33 件/月、12 人日で比 2.7
  • F は A・B・D で 44,448 件が解決済みになり、残り 51,552 に 10% なので 182 → 98 件/月
  • 価値の合計は単純な足し算にならない。投入案では先に入れる順に引き直した値を使う

3. 今期の投入案(キャパ 40 人日、予備 20% = 8、計画上限 32)

既定の積み方は 25 人日・約 1,108 件/月(≈161 万円/月、1,108×1,456 円)。余り 7 人日のうち 3 人日は A の悲観値超過(7 日)を吸収するために残す。

見送るもの

案見送る理由拾い直す条件
E エンジン入れ替え60 人日で今期キャパ 40 を超え、取れる価値は A〜G の後の残り 80 件/月程度A〜G の後も 0 件率が 4% を下回らず、辞書では追えない原因が検索ログで主要になったとき
J 音声検索20 件/月・10 人日。効果の根拠が仮定のみ検索ログで音声入力由来の検索が 3% を超えたとき(ブラウザ標準の音声入力という別案も比較)
C 綴り訂正B の後は 33 件/月で 12 人日B 実装後も型番・綴り誤りの 0 件が 5,000 回/月を超えたとき
G 全体G′ の結果を見てからG′ で日用品の購入率が 0.05pt 以上上がったとき

💡 なぜこう作るのか

  • 件数を軸にした理由: 「高・中・低」は議論の入口にはなるが、閾値や前提を動かしたときに何が変わるか確かめられない。件数にすると前提(0.6)を動かした影響を試算できる(上のスライダー)
  • 比ではなく 2 本の線にした理由: 比だけで並べると F(91)が B(51)より上に来て「安い案から先に」になる。象限にすると重いが価値の大きい D・G を捨てずに分割して試すという扱いが取れる
  • G を幅で置き G′ に切った理由: 221〜1,104 の幅は 5 倍。15 人日を一度に投じず、日用品だけ 5 人日で試し、結果で全体を決める
  • 悲観値を併記した理由: 閾値 5 人日の近くに A(4→7)・B(3→5)が居る。A の悲観値が出ても上限 32 人日に収まるか先に確かめられる

🔀 迷った他案と採らなかった理由

案採らなかった理由判断が変わる条件
最初から RICE2 軸の限界を知らずに数式に進むと数字の主観性に気づけない。次のテーマ(5-5)案が 20 件を超え、確信度の差が判断を左右するとき
比(件/人日)だけで並べて上から切るF(91)が B(51)を超え、D・G が自動的に落ちる。分割の判断ができない候補がすべて同規模の小粒な改善のとき
金額(万円/月)を軸にする平均注文額・粗利率の仮定が混ざる経営会議に粗利で報告する段階(件数×1,456 円で後から換算)
ドット投票声の大きい案(J)が通りやすく、価値の根拠が残らない価値の数値化に使える検索ログが無いとき
I を価値 0 で並べる金食い虫に分類され、計測の土台が抜ける無し
実施順を考えず 1 回で全部評価C・F の価値の重なりを見落とす案どうしが完全に独立のとき

⚠️ よくある失敗パターン

失敗パターンなぜ問題か改善策
価値を「高・中・低」だけで置く根拠が追えず、前提を変えたときの影響が見えない目標の指標に換算し、出所ラベル(実測/導出/仮定)を付ける
クイックウィンだけやる取扱なしのような大きな原因が残る大きな賭けは分割して小さく試し、証拠で拡張する
案ごとの価値を単純に合計する重なる案(B と C)で水増しされ、約束した成果に届かない実施順に母数を引き直した値で合計する
計測や基盤の作業を価値 0 で外す後から効果が測れなくなる前提作業は別枠で先に入れる
声の大きい要望を無条件に載せる/外す根拠なく通る、または感情的な対立になる同じものさしで並べ、見送る場合は拾い直す条件を書く

🏢 実務での使いどころ

  • 使う局面: 四半期前のバックログ整理、複数部門が要望を出した後の仕分け。「なぜこれをやらないか」の説明資料として
  • 隣接する役割: エンジニアは Effort(悲観値を含む)、マーケ・CS は Value の根拠データ(検索ログ、問い合わせ件数)、リードは閾値(何人日までを小さいとするか)を出す。経営層には 4 象限の図 1 枚と「見送った案と拾い直す条件」の表を見せる
  • 個人開発への転用: README のロードマップに、案ごとの Value(想定ユーザー数×解決率)・Effort(人日)・象限を表で残す

➡️ 次のステップ

  • 5-3「ロードマップの基本形式」で、今回の 6 案を Now/Next/Later に並べ直す。日付を確約せず「G′ の結果次第で G を Next に上げる」と条件の形で書く
  • 問い: 回復後の CVR を通常の 40% に下げると B・D は閾値 100 件/月を割る。それでも B(3 人日)は入れるか。判断を変えるのは件数か、工数か、確信度か(スライダーで確かめる)
  • 5-5「RICE」で、同じ 10 件に Confidence を掛けると G・H・E の順位がどう動くか比べる

🧭 扱わなかった範囲・検証していない点

  • RICE・Kano・遅延コスト(Cost of Delay)による重みづけは扱っていない(後続テーマ)。Value vs Effort 型の道具のうち扱ったのは Impact/Effort 型の 1 種のみで、PICK・WSJF・ICE は名前を挙げただけ
  • 数値は全て演習の設定値(仮定)。特に「回復後 CVR=通常の 60%」「解決率 80/70/50/25/10%」「G の 0.05pt」「H・J の価値」は根拠の弱い置きで、実測ではない
  • Intercom の記事は参照日 2026-10-03 に確認(著者・日付・Confidence・人月の記述)。「Impact/Effort マトリクス」の起源・名称は記憶に基づき未照合

🎯 自己評価

自分の回答

所要時間・気づき・メモ