Day 041 — PM-推進: 進捗可視化(バーンダウン/バーンアップ)

2026-10-02 (Fri) 🟢 Junior PM-推進(アジャイル運営・ステークホルダー) 成果物: バーンアップ図+予測+スコープ判断つき進捗レポート(1ページ)

🎬 シナリオ

MOps チームは 「お気に入り商品の値下げ通知」(お気に入りの商品が値下がりしたらメール/アプリで知らせる機能)を開発している。11/27(金)開始のブラックフライデー販促に合わせ、11/20(金)リリース、コードフリーズは 11/13(金)。2週間スプリント。今日 10/2(金)に Sprint 3 が終わった。体制はエンジニア3名+QA 1名。

💬
PO「残りが 120→98→92→88。後ろにいくほど減りが鈍っていて、チームが失速しているように見えます。次から人を増やしてもらえませんか」
💬
EM「失速はしていないはず。ただし 11/13 に間に合う根拠を数字で見せてほしい」/CS部門長「配信停止リンクと頻度設定は問い合わせが出る前に入れたい」/マーケ部長「追加した機能は全部 BF で効くと思う」

数値はシナリオ上の設定(仮定)。「導出」は設定値からの計算。

時点期間稼働日期末の総スコープ(pt)期間中の完了(pt)累計完了(pt)残り(pt)
S0––120–0120
S18/24–9/410120222298
S29/7–9/1810138244692
S39/21–10/210156226888

S3 の9月の連休は、チームが別の日に振替休日を取ったため稼働10日で数える、という設定。

期間中に追加されたスコープ(計36pt)pt依頼元追加
価格履歴グラフ8マーケS2
通知頻度の設定画面6CSS2
配信停止(オプトアウト)リンク4CS/法務S2
アプリのプッシュ通知10マーケS3
在庫復活通知5マーケS3
CS 向け管理画面3CSS3
残りのスプリント期間稼働日
S410/5–10/169(10/12 スポーツの日)
S510/19–10/3010
S611/2–11/139(11/3 文化の日)

📝 課題

🛠️
あなたのタスク: 次の5点を含む「進捗レポート(1ページ)」を作ってください。
  1. 表からバーンダウン図とバーンアップ図を描く(バーンアップは「総スコープ」と「累計完了」の2本線)
  2. PO の「失速している」は正しいか。バーンダウンが何を隠したかを数字で説明する
  3. 1稼働日あたりの完了を出し、11/13 までに完了できる量の範囲(楽観・中央・悲観)を出す
  4. スコープ 156pt をいくつに絞るべきか計算し、追加6件のどれを後ろに送るか理由つきで決める
  5. 次のレビューから使う見直しのルール(何が起きたら誰に何を相談するか)を書く

🔍 ヒント(段階的開示)

ヒント1: 2本の線に分ける
バーンダウンは「残り」1本。完了が進んだ分とスコープが増えた分が相殺されて見える。総スコープと累計完了を別の線にすると何が見えるか。
ヒント2: 稼働日で割る
S4・S6 は9日。ポイントを1稼働日あたりに直してから、残り28日を掛ける。
ヒント3: 範囲は素直に
実績は3回分。最小〜最大で範囲を出す。確率分布に見せかけない。
ヒント4: 「後から足せるか」
追加6件を全部やる/やらないにしない。やらないと何が起きるか、後から足せるかで分ける。法令に関わるものは別扱い。
ヒント5: 人を増やす案
遅れの原因は速度かスコープか。人を足した直後に何が起きるか(ブルックスの法則)も考える。

📚 背景知識・用語解説

  • バーンダウン: 縦軸「残りの作業量」。シンプルだが、縦軸が1本なのでスコープの増減と完了の進みが見分けられない。
  • バーンアップ: 「累計完了」と「総スコープ」の2本。完了が総スコープに追いつく日が完了日。増えたことがそのまま見えるので、「遅れ」と「増えた」を分けて議論できる。
  • ベロシティ: スプリントの完了ポイント。稼働日が違うと比べにくいので1稼働日あたりで扱う。
  • スコープの天井: 「いまの累計完了」+「期限までに完了できる量」。これを超える総スコープは間に合わない。足すなら同量を外へ。
📖
出典(参照日 2026-10-02)
  • Scrum Guide 2020 — scrumguides.org/scrum-guide.html: バーンダウン/バーンアップ等は有用だが経験による確認の代わりにはならない、という趣旨の記述(原文を参照)。予測は約束ではない。
  • Cohn『Agile Estimating and Planning』(2005)、書籍: バーンアップでスコープの増減を別の線にする考え方(本文は今回再確認していない)。
  • Brooks『The Mythical Man-Month』(1975)、書籍: 遅れたプロジェクトに人を足すとさらに遅れる。
  • 特定電子メール法(総務省): 広告・宣伝を含むメールには受信拒否の方法の表示などが求められる。値下げ通知が該当するかは法務確認が前提(仮定)。

✅ 模範解答

1. バーンダウンとバーンアップ

バーンダウン(残り)— 120→98→92→88

0306090120S0S1S2S3120989288残り(pt)。傾きの鈍化が「失速」にも「スコープ増」にも見える

バーンアップ — 赤: 総スコープ/緑: 累計完了/点線: 11/13(S6末)までの予測(悲観・楽観)/紫: 絞った後のスコープ 124

0306090120150180S0S1S2S3S4S5S6スコープ124(絞った後)総スコープ 156累計完了 68悲観 129.6楽観 135.2
時点総スコープ累計完了残り
S01200120
S1末1202298
S2末1384692
S3末1566888

2. 「失速」ではない

スプリント完了稼働日1稼働日あたり 導出残りの減り追加スコープ
S122102.20−220
S224102.40−6+18
S322102.20−4+18
🩺
残りの減りが −22→−6→−4 と鈍ったのは、完了が落ちたからではなく、追加が18ptずつ入ったから。完了は 22→24→22 で安定。「失速」ではなく「スコープが毎スプリント18ptずつ増えている」。人を増やす議論の前に、スコープの議論が要る。

3. 11/13 までに完了できる量

1稼働日あたり: 最小 2.20/最大 2.40/平均 2.267(68÷30日 導出)。残りの稼働日 9+10+9=28日。

1日あたり28日で完了11/13 の累計完了
悲観2.2061.6pt129.6pt
中央2.26763.5pt131.5pt
楽観2.4067.2pt135.2pt

156pt のままだと、残り 88pt のうち 11/13 までに終わるのは約62〜67pt。約21〜26pt が残る。中央値では S6 のあと約10.8日分(S7 を使い切って S8 に入る=11/30〜12/1 頃)に食い込み、BF(11/27)に間に合わない。現状の増え方(1.8pt/日)が続くと実質の進みは 0.47pt/日で、ほぼ終わらない。

試算ツール(11/13 時点)

4. スコープの天井と判断

天井=累計完了 68+28日で完了できる量= 129.6〜135.2pt(中央 131.5pt)。156pt なので少なくとも 21〜26pt を外す。ぎりぎりを狙わず 124pt まで絞る(32pt を後ろへ)。

追加pt判断理由
配信停止リンク4残す広告・宣伝を含むメールになりうる。送ってから足すのは遅い(法務確認が前提)。後から足せない種類
通知頻度の設定画面6後ろへ初回は「1日1通まで」の固定ルールで代替できる。CS の懸念は固定ルールで当面しのげる
価格履歴グラフ8後ろへ通知の中核ではない。後から足せる
アプリのプッシュ通知10後ろへ最大の追加。メールだけでも値下げは伝わる。アプリ側の審査待ちも読めない
在庫復活通知5後ろへ別機能。BF 後の次リリース候補
CS 向け管理画面3後ろへ初回は SQL での調査で運用(エンジニアが当番)
🎯
外す 32pt、残すのは 4pt。総スコープ 156−32=124pt、残り 124−68=56pt。28日の完了見込み 61.6〜67.2pt に対し、最悪でも約91%、中央で約88%、楽観で約83%の負荷。残る約5.6〜11pt が見積もりの外れや QA の戻りを吸収する余白。

5. 見直しのルール

条件誰が何をする
総スコープが 124pt を超える依頼が出たPO同量を外に出す。外す先が決まらなければ EM に相談。その場で足さない
スプリント末の累計完了が中央の線(S4末 88.4/S5末 111.1/S6末 131.5 導出)を下回るEM次のスプリント頭に残りの見積もりを見直す。悲観の線を下回ったら PO にスコープの追加削減を求める
2スプリント連続で悲観の線を下回るEMフリーズ日の延期は選ばず、リリース範囲の縮小を経営会議に諮る
毎スプリントレビューPO・EM図は必ずバーンアップ(2本線)。バーンダウンは補助

🧭 なぜこう作るのか

  • バーンアップを主にする: PO の誤解は、バーンダウンが完了とスコープ増を1本に潰したことから生まれた。誰も責めずに「スコープは18ptずつ増えている」を図で見せる。
  • 範囲で出す: 3回の実績では中央の1点を言い切れない。範囲を示し、それでも判断(124pt)が変わらないことを確認した。
  • 余白を残す: 悲観でも91%に収まる量にした。余白がないと1回の QA の戻りで期限を割る。
  • 「後から足せるか」で分ける: 機械的に全件外さず、法令に関わる配信停止は残す。

⚖️ 採らなかった案

案採らなかった理由判断が変わる条件
バーンダウンだけで報告を続けるスコープ増と完了が分からないスコープがほぼ変わらない案件(増加が5%未満など)なら簡易さを優先
人を増やす(PO 案)立ち上がりに既存メンバーの時間を使う(ブルックス)。遅れの原因は速度でなくスコープ増追加人員がこの領域を既に知っている場合
11/20 リリースを延ばすBF 11/27 に間に合わず、機能の目的を失うBF に間に合わせる意味が薄れた場合
累積フロー図(CFD)状態ごとの件数を記録しておらず作れない次のスプリントから状態別に記録すれば S6 頃から使える
乱数による完了確率(モンテカルロ)実績3回では確率の数字が精密に見えるだけで根拠がない10回以上の実績が溜まったとき
QA を削って間に合わせる通知の誤送信は取り消せないなし(外さない)

⚠️ よくある失敗パターン

失敗パターンなぜ問題か改善策
バーンダウンが鈍ったら「速度が落ちた」と判断するスコープ増でも同じ形になる完了とスコープを2本線にする
稼働日の違いを無視してポイントをそのまま足す祝日のあるスプリントを過小評価する1稼働日あたりに直す
予測を1つの日付で約束する外れたときに信用を失う範囲と前提を添える
追加依頼を断らず全部入れる期限が静かに崩れる足すなら同量を外へ
完了の定義が人によって違う累計完了がぶれ、図が意味を失うQA 合格までを完了とそろえる

💼 実務での使いどころ

スプリントレビューやステアリングで「間に合うのか」と聞かれる場面。経営層は日付と余白を見る。PO には追加の影響を責めずに図で見せられる。エンジニアには「期限に間に合う量」を逆算した根拠として渡せる。個人開発の週次振り返りにも使える。

✂️
扱わなかった範囲: 累積フロー図、確率予測、ポイント自体の水増し(インフレ)の検出、コストの進捗管理(EVM)。別の回で扱う。この回のデータは設定上の数字で、実測ではない。

➡️ 次のステップ

  • 次の S4 末に、実際の累計完了を図に足して中央の線と比べる
  • 状態別の件数を記録して累積フロー図を作る
  • 「速度が落ちたと言われたときにどの記録を出すか」を自分のチームの場合で書き出す

🎯 自己評価

自分の回答

所要時間・気づき・メモ