Day 056 — PdM-要求: ユーザーストーリーの書き方(3回目)— ストーリーマップで最初のリリースの線を引く(予約販売)

2026-10-14 (Wed) 🟢 Junior PdM-要求(要求要件・企画) 成果物: ストーリーマップ + リリースの線2本と達成すること + 線の下のしのぎ方表

🎬 シナリオ

MOps チームは予約販売(発売前の商品を予約で受け、発売日に届ける)の仕組みを作る。今日は 10/14(水)。昨年度はマーチャンダイザーが通常の商品として「【予約】」と名前に付け、在庫数の欄に予約枠を入れて受けていた(34 SKU・7,800件)。

📦
第一弾: 調理家電メーカー N社(架空)の新型電気圧力鍋。39,800円、メーカー割当 1,500台、発売予定「2027年2月下旬」(日付未定)。メーカー条件「1会員2台まで」「毎週月曜に予約数を報告」。メーカー発表 11/27(金)、他店は 12/1(火) 10:00 に予約受付開始。前モデルは他店で3日で枠が埋まった。

日程の制約

期間内容
S21 10/19(月)〜10/30(金)稼働10日、キャパ 19pt(実績 20/22/19 の最小)
S22 11/2(月)〜11/13(金)稼働9日(11/3 文化の日)、キャパ 17pt
11/16〜11/19(木)結合テスト・リリース。新しいストーリーは入れない
11/20〜1/6年末商戦の変更凍結(本番リリース不可)
S25・S26 1/12〜2/5(金)他案件と半々。この案件に約 24pt
2/25(木)(仮置き)発売予定日。出荷指示は前日

関係者: PdM 高木、リード 宮本、BE あなた・青木、FE 上田、QA 中山。社内の利用者: バイヤー 森田、MD 小池、CS 主任 吉川、物流課 長尾、法務 伊藤。

分かっている情報(すべて演習の設定値=仮定)

情報値
昨年の発売日延期9 / 34 SKU(26%)・影響 2,100件
「いつ届くのか」問い合わせ1,380件/年(予約100件あたり 17.7件)
予約品と在庫品を同じ注文にした件数410件 → 問い合わせ 290件・キャンセル 120件
予約のキャンセル率14%。CS が手作業で売上取消、1件15分
支払い手段 / 注文経路カード 81%・代引き 11%・コンビニ 8% / Web 68%・アプリ 32%
既存の注文システム注文の翌朝に倉庫へ出荷指示 → 在庫が引き当たらない注文は欠品 → 7日後に自動キャンセル
決済カードは即時売上。オーソリだけにする機能もあるが有効期限は60日(当社契約)
法務 伊藤さん「代金を先に受け取る予約は承諾等の通知(特商法13条)が要る。昨年の確認メールには引渡時期が無かった」

PdM 高木さんが書き出したカード(23枚・88pt)

💬
リード宮本: 「Jira の上から順に 36pt 分を取れば終わり、ではないよね。12/1 に受けて、2月に届けるまでの一本道が見える形で持ってきて」

📝 課題

  1. ストーリーマップ: 横に活動(バックボーン)を時間順、各活動の下にカードを置く。足りないカードは書き足す
  2. 各カードに「初めて必要になる日」(12/1/凍結中/2月の出荷時/その後)を書く
  3. リリースの線を2本: R1(11/19・36pt)と R2(2/5・24pt)。それぞれ「達成すること」を1文と測り方
  4. 線の下のカードごとに「しのぎ方(手作業なら何件・何時間)」と「拾い直す条件」

💡 ヒント(クリックで開く)

ヒント1
バックボーンは機能の分類ではなく「利用者がやることの順番」。MD・CS・物流課も利用者
ヒント2
最初のリリースは、全部の列に少なくとも1枚カードがある細い一本道(walking skeleton)か
ヒント3
「既存の注文システム」の行を読む。12/1 に受けた予約注文は 12/8 に何が起きるか
ヒント4
凍結中(11/20〜1/6)に要るものは「R1 に入れる」か「凍結中は手作業」の二択。手作業の量を数える
ヒント5
1,500台が数日で埋まるなら、アプリで予約できないことで失う台数はいくつか
ヒント6
特商法13条とメーカーとの契約条件は、緩められる規則か

📚 背景知識・用語解説

ストーリーマップ

Jeff Patton が 2008 年の記事「The New User Story Backlog is a Map」で示した並べ方。優先度順の1本の列を、Patton は "A bag of context-free mulch." と呼んだ。どのカードとどのカードがそろって初めて一連の作業になるかが1本の列では見えないからだ。

要素意味
バックボーン上の段。利用者の大きな活動を左→右に時間順。活動どうしは優先順位を付けない
カード各活動の下に縦に置く。上ほど必要性が高い
walking skeleton各列の上の必要なカードだけで作る、最小の端から端まで動く仕組み。最初に作る
リリースの線横に引く線。線の上が今回、下は後。カードは上下に動かす

Patton の書籍『User Story Mapping』(2014)は、線を機能の量でなく達成したい結果(outcome)で引くとしている(書籍・未照合)。

前回(SPIDR)との違い

SPIDR(Day049)ストーリーマップ(今回)
対象大きすぎる1本のエピック一連の作業全体に散らばった多数のカード
問いどこで割れば入るかどれがそろうと端から端まで動くか
見落としやすいもの緩められない規則列ごと抜けている活動

承諾等の通知(特商法13条)

消費者庁の特商法ガイド「通信販売」によると、引渡し前に代金を受け取る前払式の通信販売で、すぐに引き渡さない場合、遅滞なく(目安約1週間)書面で通知する: 承諾の有無(しない場合は返金方法)、事業者の名称・住所・電話、受領額、受領日、商品と数量、承諾する場合は引渡時期。カード払いが前払式に当たるかは、同ページに記載が無かった(→ Q1)。

🧩 「初めて必要になる日」クイズ

各カードが最初に要るのはいつか。選ぶと答えと理由が出る。

✅ 模範解答

1. ストーリーマップ(カードをクリックすると R1 → 余力枠 → R2 → 後 と移る)

★の破線カードは書き足したもの。右の判定は「全部の列に R1 のカードがあるか」「約束を破らないか」「凍結中の手作業」を自動で数える。

    2. 書き足したカードと、その理由

    カードなぜ要るか誰も要望しなかった理由
    ★F1a 予約注文を出荷指示から外して保留(2pt)既存のままだと 12/2 朝に出荷指示 → 在庫ゼロで欠品 → 12/8 に1,500件が自動キャンセル「受け取る」は2月の話と思われ、列ごと誰も見ていなかった
    ★SP1 既存仕様を調べる(1pt)予約フラグで出荷指示から外すか、欠品キャンセルを止めるかを S21 冒頭で決める既存仕様の調査はカードになりにくい
    ★B4′ アプリから Web へ案内(1pt)B4 を後にしたとき、アプリの予約ボタンが普通の購入として動くと C1〜C4 の制限を通らない「アプリは後で」の時点で、アプリ側で何が起きるか誰も書いていなかった

    3. 各リリースで達成すること

    リリース達成すること測り方
    R1 11/19
    24pt / 36pt(67%)
    12/1 から予約を受け、発売日まで約束(台数・2台まで・引渡時期・キャンセル条件)を守ったまま注文を持ち続けられる① 予約数 ≤ 1,500(H1 日次)② 12/8 以降の自動キャンセル 0件 ③ 13条記載の確認メール送信率 100% ④ 予約100件あたり問い合わせ 17.7 → 8件以下(目標・仮定)
    R2 2/5
    18pt / 24pt(75%)
    発売日に約束どおり届け、延期とキャンセルを人手なしで回せる① 出荷指示漏れ 0件 ② 手作業の売上取消 0件/週 ③ 延期の通知を発表当日に送れる

    E2(5pt)を R1 に入れると 29pt(81%)。約束しない余力枠とし、S22 3日目(11/4)に R1 本体が予定どおりなら取り込む。

    4. 線の下のカードのしのぎ方

    カードしのぎ方手作業の量(導出)拾い直す条件
    E2 取り消しCS が既存の売上取消で手作業210件を80日に → 2.6件/日。凍結中37日で約97件≒24h、2/5まで続くと約176件≒44hS22 3日目に R1 本体が予定どおりなら R1 へ
    E3 発売日変更MD が日付を書き換え、CS が既存配信ツールで一斉送信延期1回 約3h(延期は SKU の26%)凍結明けに R2
    F1b 一括出荷指示物流課が予約注文 CSV を手動アップロード発売日に1回 約2h2/10(水) に R2 未リリースなら手動へ切替
    B4 アプリB4′ で Web へ案内32%×離脱25%(仮定)=需要の約8%。需要 1,630台以上なら失う台数03日以内に枠が埋まらなければ優先を上げる
    C3 同梱予約品は単独注文に限る昨年の410件・290件は起きない。在庫品 3,980円未満なら送料550円が別単独注文への問い合わせ月20件超
    D3 出荷時決済即時売上+D2 の通知—Q1 で通知以上の手当てが要ると判明
    D4 代引き・コンビニカードのみと明記昨年の19%がカード以外枠が埋まらない商品が出たら
    H2 週次報告MD が H1 の CSV から作成20分×12週≒4h同時受付 SKU が5超
    A2 発売予定の幅商品説明に手書き、内部は 2/25 仮置き0日付未定 SKU が同時に3以上

    オープンな論点

    #論点誰に・いつ答えで何が変わるか
    Q1カード払い(即時売上)は13条の前払式に当たるか法務 伊藤・10/21当たらなくても D2 は残す(害が無く 2pt)。追加要件があれば D2 を見直す
    Q2欠品自動キャンセルを予約だけ外せるか、出荷指示を止めるかSP1・10/20F1a が 5pt を超えたら E1・H1 を手作業へ
    Q3メーカー延期時に無料キャンセルを受けるか森田・10/28E2 の期限の文言、E3 の文面
    Q4枠の超過を1台でも許すか森田・N社許さない前提で C2 を在庫引き当てと同じ排他で作る

    なぜこう作るのか

    1
    列を先に並べると、誰も要望していない列が見える。1本の列では F1b(2月)が後ろにあるだけで、F 列が R1 で空だと分からない。
    2
    「初めて必要になる日」を書くと線が引ける。受付と出荷の間に凍結がある。凍結中に要るものは R1 か手作業かの二択なので、量を数えて E2 を余力枠にした。
    3
    緩められる規則と緩められない規則を分けた。13条(D2)・2台まで(C4)・枠(C2)は約束。同梱・代引き・アプリは規則を狭めて後へ。
    4
    後回しの損は「需要が枠を超えるか」で変わる。枠が埋まるなら B4・D4 で失う台数は0。失うのは体験なので、拾い直す条件で残した。
    5
    R1 を67%に抑えた。SP1 次第で F1a が膨らむ。F1a が無いと R1 は出せないので、ここに余裕を置いた。

    採らなかった案

    案採らなかった理由判断が変わる条件
    Jira の上から36ptF 列が空のまま R1 が出る(上の「Jira 上から36pt」ボタンで確認できる)—
    受付を凍結明け 1/7 にずらし全部入り他店は 12/1 開始、前モデルは3日で完売。予約の大半が他店へメーカーが当社割当を保証するなら検討
    出荷時決済 D3 を R1 に13pt。12/1〜2/25 は86日でオーソリ有効期限60日を超え、再オーソリの失敗処理が要るQ1 で即時売上の手当てが重いと分かったら第二弾で
    会員用と社内用でマップを分ける社内の作業は会員の作業の間に挟まっている。分けると F1a のような抜けがまた見えない社内作業だけで1リリースになる規模なら
    同梱 C3 を R1 に8pt で R1 が 32pt(89%)。単独注文の規則で昨年の痛み自体が起きない単独注文への問い合わせ月20件超

    よくある失敗パターン

    失敗パターンなぜ問題か改善策
    バックボーンを「画面・API・DB」で並べるどの列も単独では利用者に何も届かない利用者の動詞で並べる
    会員の活動だけでバックボーンを作るMD・CS・物流の作業が抜け、「受けたが届けられない」穴が開く社内の利用者も同じ列に入れ、カードに「誰が」を書く
    線を pt だけで引く端から端まで通らない R1 ができる先に達成することを1文、全列にカードがあるか確認、それから pt
    線の下に何も書かない「後で」が「いつか」になるしのぎ方・量・拾い直す条件を付ける
    作って終わりR1 の結果で R2 は変わるR1 の測り方を決め、線を引き直す日(12/4)を決める

    🏢 実務での使いどころ

    • 最初のリリースを決める会議で、PdM・リード・社内の利用者(CS・物流・経理)を集めて付箋やオンラインホワイトボードで作る。社内の利用者を呼ぶと既存業務との継ぎ目のカードが出る
    • 既存システムの仕様(今回の欠品7日自動キャンセル)を知っているのはエンジニアであることが多い。「この列の R1 が空だと何が起きるか」を言えるのは、エンジニアが PdM に返せる大きな価値
    • リリース後もマップは捨てず、結果を書き込んで次の線を引き直す

    ➡️ 次のステップ

    • R1 の C1〜C4・F1a の受け入れ条件を Given-When-Then で書く(取り消し後にもう1台予約できるか、など)
    • 第二弾(フィギュア、年30 SKU、枠が埋まらない商品もある)では線がどう動くか(B4・D4・B3)
    • 次回(10/21)は非機能要件(12/1 10:00 のアクセス集中)をストーリーにどう載せるか

    🚧 扱わなかった範囲・一次資料

    • アクセス集中対策・負荷試験(次回に回した)/転売対策の強化(C4 の会員単位のみ)/受け入れ条件(前回扱った)/13条の書面に電子メールで足りるか・カード払いへの適用(Q1、法令解釈は確定させていない)

    参照日 2026-10-14:
    ・Jeff Patton, "The New User Story Backlog is a Map", 2008-10-08(更新 2023-04-12) jpattonassociates.com — WebFetch で確認
    ・消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」 no-trouble.caa.go.jp — WebFetch で確認(カード払いの扱いは記載なし)
    ・Jeff Patton, User Story Mapping, O'Reilly, 2014 — 書籍・未照合
    ・数値はすべて演習の設定値(仮定)。導出は本文に式を示した

    📊 自己評価

    自分の回答

    所要時間・気づき・メモ