People① チームとリーダーシップ
People領域は試験の 42%。その中核がチーム形成・リーダーシップ・動機づけ。
1. チーム発展のタックマン・モデル
| 段階 | 状態 | PMの役割 |
|---|---|---|
| Forming(形成) | 顔合わせ、互いに礼儀正しく距離あり | 目的・役割の明示、心理的安全性の土台作り |
| Storming(混乱) | 役割衝突・意見対立が表面化 | コンフリクト解決を支援、避けない |
| Norming(規範化) | チームルール・信頼が確立 | グランドルールを言語化、エンパワー開始 |
| Performing(遂行) | 自律的に高い成果 | 障害除去のみ、邪魔しない |
| Adjourning(解散) | プロジェクト終了 | レッスン・ラーンド、メンバー貢献を称える |
出題ポイント
- 「メンバー間で衝突が増えてきた」 → Storming段階。逃げず、Collaborate で対処。
- 「新しいメンバーが加入した」 → タックマンは Forming に戻る。チーム再構築が必要。
2. 心理的安全性(Psychological Safety)
メンバーが「失敗しても罰せられない」「異論を出してもいい」と感じる状態。Googleの研究で生産性最大要因とされた。
PMができること
- ミスを学習機会として扱う(個人を責めない)
- 異論を歓迎する(同調圧力を弱める)
- 弱みを開示する(PM自身がモデルを示す)
- 1on1で本音を聞く
出題例
- メンバーが「報告が怖くて遅延を隠している」 → 心理的安全性の問題。1on1で原因を探り、報告を歓迎する文化を作る。
3. リーダーシップスタイル
PMP試験で頻出。状況に応じて使い分ける。
| スタイル | 特徴 | 適用場面 |
|---|---|---|
| Servant Leadership | チームを支援する。障害除去、エンパワー | アジャイル、成熟したチーム |
| Transformational | ビジョンで動機づけ、変革を促す | 組織変革、新規事業 |
| Transactional | 報酬と罰で管理 | 単純作業、緊急時 |
| Charismatic | カリスマで惹きつける | 危機時、士気向上必要時 |
| Situational | 状況に応じて変える | 一般的に推奨 |
| Laissez-faire | 放任、任せる | 高熟練の自律チーム |
| Interactional | 取引型・変革型・カリスマの混合 | 複合状況 |
サーバントリーダーシップの行動例
- メンバーに「何を手伝えますか」と聞く
- 障害を取り除く(会議調整、上層部交渉)
- 意思決定をチームに委ねる
- 育成を重視する
- 自分の手柄より、チームの成功
出題例
- 「アジャイルチームのPMは何をすべきか」 → サーバント。命令でなく支援。
- 「メンバーが意思決定に困っている」 → コーチング型。答えを与えず問いかける。
4. 動機づけ理論(試験頻出)
Maslow の欲求5段階
自己実現
↑
承認・尊重
↑
所属・愛情
↑
安全
↑
生理的(給料・健康)
下から順に満たされる。プロジェクトでは 承認・自己実現 に焦点。
Herzberg の二要因理論
| 衛生要因(不満を防ぐ) | 動機要因(やる気を生む) |
|---|---|
| 給料・労働条件・上司・規則 | 達成・承認・仕事自体・責任・成長 |
重要: 給料を上げてもやる気は出ない(不満は減る)。動機要因に注目せよ。
McGregor の X理論/Y理論
- X理論: 人は怠けるので管理が必要 → 命令・統制
- Y理論: 人は本来やる気がある → エンパワー・支援
PMI流の前提は Y理論。
McClelland の3欲求
- 達成(Achievement):チャレンジング目標を好む
- 権力(Power):影響力を持ちたい
- 親和(Affiliation):協調を重視
メンバーに合わせて動機づけを変える。
Vroom の期待理論
動機 = 期待 × 道具性 × 誘意性
- 努力すれば達成できそうか(期待)
- 達成すれば報酬を得られるか(道具性)
- その報酬は自分にとって価値があるか(誘意性)
3つすべてが必要。
出題例
- メンバーが昇給したのに不満 → Herzberg。給料は不満を減らすが、動機要因(達成・成長)が必要。
- 自律的チームを作りたい → Y理論ベース、サーバントリーダー。
5. エンパワーメント
メンバーに 意思決定権限 を委譲し、オーナーシップを持たせる。
エンパワーする方法
- 目的・コンテキストを共有: なぜそれをするか
- 権限を明示: どの範囲で決められるか
- 支援を約束: 困ったら助ける
- 責任を取らせる: 結果から学ぶ
Levels of Empowerment(Tannenbaum-Schmidt 連続体)
PM決定 ←─────────────────→ チーム決定
強権 コンサル型 合議型 権限委譲
出題例
- 高熟練チーム → 権限委譲側に寄せる
- 未経験チーム → コンサル型から開始
6. 多様性とインクルージョン
PMP出題で増加中。
- Diversity(多様性): 違いを集める
- Inclusion(インクルージョン): 違いを生かす
PMの行動
- 文化的バイアスを認識し排除
- 全員に発言機会を保証(Round Robin、匿名チャット)
- タイムゾーン・言語の配慮(バーチャルチーム)
7. バーチャルチームのマネジメント
リモート・分散チームの課題と対応。
課題
- コミュニケーション低下
- 信頼構築の難しさ
- タイムゾーン・文化差
- 孤独感
PMの対応
- 同期 + 非同期 のミックス(Slack + 週次定例)
- キックオフは対面か、最低でも全員ビデオON
- Working Agreement をチームで合意(応答時間、休暇の扱いなど)
- Team Charter で文化・規範を明文化
- 1on1 を頻度高く(少なくとも隔週)
- 非同期でも雑談チャネル(信頼形成)
8. グランドルール(Ground Rules)
チームが合意する 行動規範。
よくあるグランドルール
- 会議には時間通り参加する
- 異論があれば言う、後で陰口は言わない
- ステータスは事実通り報告する
- 互いの作業を尊重する(割り込まない)
違反時のPM対応
- まず本人と1on1で確認
- 状況を理解した上で、ルールの重要性を共有
- 改善されない場合のみエスカレーション
9. メンタリングとコーチング
| 項目 | メンタリング | コーチング |
|---|---|---|
| 焦点 | キャリア全般 | 特定スキル・課題 |
| 期間 | 長期 | 短期〜中期 |
| 関係 | 経験者→若手 | 対等 |
| アプローチ | 助言・経験共有 | 問いかけ・気づき |
PMの実践
- ジュニアメンバーには メンタリング: 業界知識・キャリア相談
- スキル課題には コーチング: 「どう解決する?」と問う
10. 感情的知性(EI / Emotional Intelligence)
Goleman の4領域。
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| Self-Awareness | 自分の感情を認識 |
| Self-Management | 自分の感情をコントロール |
| Social Awareness | 他者の感情を理解 |
| Relationship Management | 関係を構築・維持 |
PMP出題ポイント
- メンバーが怒っている → まず Social Awareness(理解)から
- 自分がイラついている → Self-Management(深呼吸、判断保留)
- 高EI = 優れたリーダー
チェックリスト(暗記推奨)
- タックマン 5段階を順に言える
- サーバントリーダーシップの行動例3つ言える
- Herzberg の衛生要因と動機要因の違いを説明できる
- X/Y理論のどちらがPMI流か答えられる
- 多様性・インクルージョン・バーチャルチームのPM対応を説明できる
- EI 4領域を言える