ケース2: アジャイル新規事業(モバイルアプリ MVP)
要件不確定・変化対応が必要な新規事業ケース。スクラムを中心とした判断練習。
プロジェクト概要
背景
- スタートアップB社のヘルスケアモバイルアプリ
- ターゲット市場は20代〜40代女性、競合多数
- 仮説検証ベースで MVP を3ヶ月でリリース、市場フィードバックで反復改善
- 期間: 6ヶ月(フェーズ1: MVP 3ヶ月、フェーズ2: 改善 3ヶ月)
- チーム: PO 1名、SM 1名、Dev 5名
- 予算: ¥40M
ステークホルダー
| 役割 | 関心 |
|---|---|
| CEO(スポンサー) | 売上・市場シェア |
| PO(プロダクト責任者) | 顧客価値・市場適合 |
| 投資家 | ROI・成長指標 |
| 主要顧客(フォーカスグループ) | 使いやすさ・価値 |
| マーケティング部 | リリース時期・PR |
アプローチ
- スクラム(2週間スプリント、MVP重視)
- データ駆動(Lean Startup の Build-Measure-Learn)
シナリオ1: 役割の混乱
状況
あなたが PM としてアサインされた。キックオフでCEOが「PMが全責任を持って優先度を決めて、開発タスクも割り当ててほしい」と言う。
質問
最適な対応は?
選択肢
A) CEOの指示通りすべて自分で決める B) CEOに対し、スクラムの役割(PO=価値最大化、SM=プロセス、Dev=自己組織化、PMはスクラムでは存在しない)を説明し、自分はサーバント型でPMロールを限定。POを別任命してもらう C) スクラムをやめてPredictiveに切替 D) チームに丸投げ
PMI流解説
正解は B。
- アジャイル文脈で PMが命令者になるのは反パターン
- スクラムの役割を理解させる
- PMロールは「組織との橋渡し」「ガバナンス」「予算管理」「ステークホルダー」に限定
- POは別途任命(プロダクト知識を持つ人)
PMP試験では「PMが全部決める」選択肢は 常に誤答。
学習ポイント
- アジャイルではPMはサーバント
- 役割を尊重する
- ステークホルダー教育もPMの役割
シナリオ2: 変化する要件
状況
スプリント2の途中、CEOが「競合がX機能を出した。我々もスプリント中に追加で実装してほしい」と要求。
質問
最適対応は?
選択肢
A) 即時スプリントに追加 B) 拒否 C) POにバックログ化を依頼。POは現スプリントの優先順位と比較して、次スプリントから着手するか、現スプリントゴールを変更すべきか判断。スプリント中の保護は原則だが、スプリントゴールが意味を失うなら早期終了→再計画も選択肢 D) PM一存で変更
PMI流解説
正解は C。
- スプリントの保護は重要だが、絶対ではない
- スプリントゴールが意味を失う場合、スクラムマスター主導でスプリント早期終了 も選択肢(実用上稀)
- 通常は 次スプリント へ
- 意思決定は PO が行う
学習ポイント
- スプリント保護は原則
- ただし価値が変化したら再計画OK
- POの判断を尊重
シナリオ3: ベロシティの揺れ
状況
スプリント1: 30pt、スプリント2: 25pt、スプリント3: 18pt と減少傾向。CEO は「予定の機能数が減ってしまう、チームを増員すべき」と要求。
質問
最適対応は?
選択肢
A) 即時増員 B) チーム解雇 C) リトロでベロシティ低下の根本原因(バックログ品質、技術負債、外部依存、チーム疲弊)を分析。Brooks's Lawから安易な増員は逆効果と理解。原因に応じた施策(リファインメント強化、ペアプロ、ストーリー分割改善)を実行 D) ベロシティを目標化してプレッシャーを上げる
PMI流解説
正解は C。
- Brooks's Law: 「人を追加しても遅延は加速する」
- ベロシティ低下は症状、原因はリトロで分析
- 安易な増員は新メンバー教育コストで逆効果
- 持続可能なペースを尊重(アジャイル原則8)
学習ポイント
- ベロシティはコミットメントでなく予測指標
- 増員の罠
- リトロが核
シナリオ4: ステークホルダー対立
状況
PO(マーケ出身)と Dev リード(エンジニア)の意見が技術選定で対立。POは「市場標準のXフレームワークで早く出したい」、Devは「将来の拡張性を考えるとYの方が良い」。
質問
PM/SMの最適対応は?
選択肢
A) PMが裁定 B) PO優先 C) 両者を集めて協働的問題解決(Collaborate)。Trade-off(短期速度 vs 長期保守性)を明示。MVPフェーズの目的(市場検証)を再確認し、技術的負債管理計画も合意。判断はPOがチームの意見を踏まえて行う D) スポンサー裁定
PMI流解説
正解は C。
- アジャイルでは 対話と協働
- 技術選定はチーム責任、POが価値の優先順位を提示
- フェーズ目的(MVP=市場検証)を踏まえる
- 技術的負債を意識した選定
学習ポイント
- Conflict は Collaborate
- 技術選定 ≠ 個人選好、価値起点
- 短期 vs 長期のトレードオフ可視化
シナリオ5: 早期検証の結果
状況
MVPリリース後の最初の2週間、ダウンロード数は予想を下回り、UI/UXのフィードバックが多数。一方、想定していなかった機能Xへの要望が予想外に多い。
質問
次のスプリント計画で何を最優先すべきか?
選択肢
A) 当初計画通り進める B) ダウンロード増のためマーケに大投資 C) POが市場フィードバックを分析し、バックログを再優先順位付け(pivot or persevere)。UI/UX改善+機能X追加を優先するなら、当初計画の機能を後回し or 削除する判断。データ駆動で意思決定 D) MVPを撤回
PMI流解説
正解は C。
- Lean Startup の Build-Measure-Learn
- データに基づく pivot or persevere
- バックログは固定でない、価値最大化のため動的
- 当初計画の固守はアンチパターン
学習ポイント
- アジャイルは検証ベース
- データで判断
- バックログは生きている
シナリオ6: 投資家への報告
状況
3ヶ月のMVPフェーズ完了報告で、投資家から「ガントチャートとEVMで進捗を示してほしい」と要求。アジャイルで運営しているのでガントチャートはない。
質問
最適対応は?
選択肢
A) ガントチャートを後付けで作る B) Predictiveに切替 C) Burnup Chart、Velocity Chart、リリースバーンダウンを使い、ステークホルダーが理解できる言葉で進捗・価値・残作業を説明。ハイブリッド報告(マイルストーン+イテレーション)で互換性を確保 D) 報告拒否
PMI流解説
正解は C。
- ステークホルダーが伝統的な指標を求める場合、翻訳するのもPMの役割
- ハイブリッド報告フォーマット
- 価値・データを伝える本質は変わらない
学習ポイント
- ステークホルダー言語に合わせる
- アジャイルでも進捗・価値の可視化は必要
- ハイブリッド報告
シナリオ7: チーム疲弊
状況
3スプリント連続で残業が増えている。CEOが「もっと早く」と毎週圧力。チームメンバーが「やる気が落ちている」と1on1で漏らす。
質問
PMの優先行動は?
選択肢
A) CEOの圧力に応じてチームを督促 B) スコープ削減を一方的に決定 C) CEO(スポンサー)と1on1で価値・スピード・持続可能性のトレードオフを議論。チームには心理的安全性を確保し、リトロでプロセス改善(WIP制限、技術負債返済、機能カット)を提案。アジャイル原則8(持続可能なペース)を共有 D) チーム解散
PMI流解説
正解は C。
- 持続可能なペースは アジャイル原則
- スポンサーへの教育・期待管理もPMの役割
- 心理的安全性を維持
- スコープと品質と速度のトレードオフを共有
学習ポイント
- 持続可能なペース
- スポンサー期待管理
- 心理的安全性
シナリオ8: 解散と次フェーズ
状況
6ヶ月プロジェクト完了。投資家からフェーズ3として継続予算が承認された。チーム3名が「次プロジェクトに行きたい」と話題に。
質問
PMの最適対応は?
選択肢
A) 全員引き止め B) 完全解散 C) レトロスペクティブで全員のキャリア意向を聞き、知識継承計画+新規メンバー受入計画を作成。希望者は次PJへ送り出し、新規メンバーには丁寧なオンボーディング D) 自分が決める
PMI流解説
正解は C。
- メンバーのキャリアを尊重(サーバント)
- 知識継承(前ケースと同じ)
- チーム再形成(タックマン Forming に戻る)
学習ポイント
- メンバーキャリア支援
- 知識資産化
- チーム再構築
全体の学び
アジャイル/スクラム特有のPMI流原則
- PMは命令者でなくサーバント — 役割を尊重
- スプリント保護は原則だが、価値が変化したら再計画OK
- ベロシティはコミットメントでない — 予測指標
- 対立は対話と協働 — トレードオフ可視化
- データ駆動の pivot or persevere
- ステークホルダー言語に合わせる — ハイブリッド報告
- 持続可能なペース — メンバー消耗禁止
- メンバーキャリア支援 — サーバント
Predictive ケース1との対比
- 文書(憲章)vs 対話(PO/POビジョン)
- CCB vs バックログ優先順位
- EVM vs Burndown/Burnup
- 計画固定 vs バックログ動的
- 共通: 倫理・心理的安全性・価値最大化