ビジネス/PM — カート放棄率改善プロジェクト ビジネスケース作成

2026-05-07 (Day 7) D: ビジネス/PM ★★★☆☆ ROI計算・ファネル分析・投資承認資料 MOps/ECサイト

問題

CTOからのSlack(抜粋):
「来週の経営会議で『カート放棄率改善プロジェクト』の投資承認を取りたい。 現状・課題・施策・コスト・ROIをまとめた1枚のビジネスケースを木曜EODまでに作ってほしい。エンジニア視点で数字をしっかり入れてね。」

手元で把握している情報

指標現状値
月間ユニークユーザー(UU)100万人
カートイン率15%(15万人がカートに商品を入れる)
カート放棄率72%(カートインしたユーザーの72%が離脱)
購入完了率(カートイン→購入)28%
平均注文単価(AOV)4,800円
競合サイトのカート放棄率平均60〜65%(業界調査より)

想定する改善施策

施策開発工数月次クラウドコスト
リターゲティングメール自動化(放棄後1h・24hに自動送信)3人日+2万円(SendGrid API)
カートページのUX改善(スマホボタン配置・ローディング速度)5人日±0円
在庫残数の緊迫表示機能(「残り3点」のバッジ表示)2人日±0円

前提条件

  • エンジニア人件費単価: 80万円/月(160時間 = 1人日 5,000円)
  • 施策の効果予測: カート放棄率を 72% → 65% に改善(7ポイント改善)
  • 月間UU・AOVは変動しないものとする
  • 改善施策は全3件同時リリース、翌月から効果発現
あなたへの問い: 以下の6項目を数値で回答せよ。
1. 現状分析(月間購入完了数・月間売上)
2. 課題の定量化(機会損失を月額で試算)
3. 施策と投資額(合計開発コスト・月次運用コスト)
4. 改善後シミュレーション(月間追加売上)
5. ROIと投資回収期間
6. Go/No-Go判断(数字を根拠に1〜2文で)

ヒント(段階的開示)

ヒント1 — 基本計算式
「月間売上 = 購入完了数 × AOV」の基本式から始める。
現状の購入完了数を求めるには、UU → カートイン数 → 購入完了数の順に計算する。
ヒント2 — 機会損失・ROIの考え方
機会損失の計算は「もし放棄率がXXXだったら何人が追加購入するか」の差分思考。
改善後の購入完了率 = (1 - 改善後放棄率) を使って新しい購入完了数を求め、差分を出す。
ROI計算では「何ヶ月で回収できるか(ペイバック)」に変換する。
ヒント3 — 計算の骨格
【現状】
カートイン数 = 1,000,000 × 0.15 = 150,000人
購入完了数   = 150,000 × 0.28 = 42,000人
月間売上     = 42,000 × 4,800 = ?

【改善後】
放棄率 72% → 65% = 購入完了率 28% → 35%
新購入完了数 = 150,000 × 0.35 = ?
月間追加売上 = (新購入完了数 - 42,000) × 4,800 = ?

【投資額】
合計人日 = 3 + 5 + 2 = 10人日
開発コスト = 10 × 5,000 = ?
月次運用コスト = 2万円

【ROI】
ROI = 月間追加売上 / 初期開発コスト × 100
ペイバック = 初期コスト / (月間追加売上 - 月次運用コスト)

購買ファネル図

Before(現状) 月間UU: 100万人 カートイン: 15万人(15%) 放棄: 10.8万人(72%) 購入完了: 4.2万人(28%) 施策適用 72%→65% After(改善後) 月間UU: 100万人 カートイン: 15万人(15%) 放棄: 9.75万人(65%) 購入完了: 5.25万人(35%)

1. 現状分析

カートイン数  = 1,000,000 × 15% = 150,000人/月
購入完了数    = 150,000 × 28%   = 42,000人/月
月間売上      = 42,000 × 4,800  = 201,600,000円(約2億160万円)

2. 課題の定量化(機会損失)

現在の放棄者数   = 150,000 × 72% = 108,000人/月

「もし放棄率が業界平均(65%)だったら」
仮想購入完了数   = 150,000 × 35% = 52,500人/月
差分(取りこぼし)= 52,500 - 42,000 = 10,500人/月

月間機会損失     = 10,500 × 4,800 = 50,400,000円(約5,040万円/月)
→ 現状では毎月約5,040万円分の売上を取りこぼしている。

3. 施策と投資額

施策工数(人日)開発コスト
リターゲティングメール自動化3人日15,000円
カートページUX改善5人日25,000円
在庫残数緊迫表示2人日10,000円
合計10人日50,000円
初期開発コスト  = 10人日 × 5,000円 = 50,000円
月次運用コスト  = 20,000円/月(SendGrid)

4. 改善後シミュレーション

改善後放棄率   = 65%  → 購入完了率 = 35%
新購入完了数   = 150,000 × 35% = 52,500人/月
月間追加購入数 = 52,500 - 42,000 = 10,500人/月

月間追加売上   = 10,500 × 4,800 = 50,400,000円(約5,040万円/月)
月間純増益     = 50,400,000 - 20,000(運用コスト)= 50,380,000円

5. ROIと投資回収期間

ROI(初月)    = 50,380,000 / 50,000 × 100 = 100,760%

ペイバック期間 = 50,000 / 50,380,000 ≒ 0.001ヶ月(約1日以内)
補足: 開発コストがわずか5万円に対し、月間効果が約5,040万円という極めて高いROI。一般的にペイバック12ヶ月以内が投資承認の目安だが、本案件はほぼ即日回収できる。
投資額 vs 月間追加売上(スケール比較) 初期投資 5万円 月間追加売上: 5,040万円(約1,008倍) ROI = 100,760%  ペイバック期間 ≒ 1日以内 5,040万円

6. Go/No-Go 判断

→ 明確に Go。

初期開発コスト5万円に対し、月間追加売上5,040万円(ROI 100,760%)が見込める。 カート放棄率を業界平均に近づけるだけで年間約6億円の売上増が期待でき、投資リスクがほぼゼロのため、経営承認を強く推奨する。

ポイント解説

1 ファネル思考で現状を分解する
UU → カートイン → 購入完了の変換率を順番に計算することで、どこに最大の改善余地があるかを特定できる。エンジニアもビジネスKPIをファネル構造で把握しておくことが必須。
2 機会損失の数値化が稟議を動かす
「課題がある」ではなく「毎月5,040万円を取りこぼしている」と言えると、経営層の意思決定スピードが格段に上がる。定性ではなく定量で語ることが経営会議での説得力につながる。
3 ROI = 価値 ÷ コスト × 100
エンジニアが見落としがちなのは分母(コスト)の正確な計算。開発工数(人件費)だけでなく、月次運用コストも含めてトータルコストで評価することが正確なROI計算の基本。

ビジネスケース構成テンプレート

セクション内容目的
現状分析ファネル計算で月間売上を算出ベースラインを設定
課題の定量化機会損失を月額で計算「問題の大きさ」を可視化
施策と投資額工数・開発コスト・運用コスト「かかるコスト」を明示
改善後シミュレーション改善率を仮定して追加売上を算出「期待効果」を数値化
ROI・ペイバック効果 ÷ コスト × 100、投資回収期間「割に合うか」を判断
Go/No-Go数字を根拠にした1〜2文の結論意思決定者を行動させる

今日のまとめ

「ビジネスケース作成」とは、数字で現状と未来を描き、意思決定者に行動を促す説得の技術だ。

エンジニアが自らROI計算できるようになると、技術提案が経営言語に変換され、プロジェクトの推進力が大幅に高まる。

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