問題
CTOからのSlack(抜粋):
「来週の経営会議で『カート放棄率改善プロジェクト』の投資承認を取りたい。 現状・課題・施策・コスト・ROIをまとめた1枚のビジネスケースを木曜EODまでに作ってほしい。エンジニア視点で数字をしっかり入れてね。」
「来週の経営会議で『カート放棄率改善プロジェクト』の投資承認を取りたい。 現状・課題・施策・コスト・ROIをまとめた1枚のビジネスケースを木曜EODまでに作ってほしい。エンジニア視点で数字をしっかり入れてね。」
手元で把握している情報
| 指標 | 現状値 |
|---|---|
| 月間ユニークユーザー(UU) | 100万人 |
| カートイン率 | 15%(15万人がカートに商品を入れる) |
| カート放棄率 | 72%(カートインしたユーザーの72%が離脱) |
| 購入完了率(カートイン→購入) | 28% |
| 平均注文単価(AOV) | 4,800円 |
| 競合サイトのカート放棄率平均 | 60〜65%(業界調査より) |
想定する改善施策
| 施策 | 開発工数 | 月次クラウドコスト |
|---|---|---|
| リターゲティングメール自動化(放棄後1h・24hに自動送信) | 3人日 | +2万円(SendGrid API) |
| カートページのUX改善(スマホボタン配置・ローディング速度) | 5人日 | ±0円 |
| 在庫残数の緊迫表示機能(「残り3点」のバッジ表示) | 2人日 | ±0円 |
前提条件
- エンジニア人件費単価: 80万円/月(160時間 = 1人日 5,000円)
- 施策の効果予測: カート放棄率を 72% → 65% に改善(7ポイント改善)
- 月間UU・AOVは変動しないものとする
- 改善施策は全3件同時リリース、翌月から効果発現
あなたへの問い: 以下の6項目を数値で回答せよ。
1. 現状分析(月間購入完了数・月間売上)
2. 課題の定量化(機会損失を月額で試算)
3. 施策と投資額(合計開発コスト・月次運用コスト)
4. 改善後シミュレーション(月間追加売上)
5. ROIと投資回収期間
6. Go/No-Go判断(数字を根拠に1〜2文で)
1. 現状分析(月間購入完了数・月間売上)
2. 課題の定量化(機会損失を月額で試算)
3. 施策と投資額(合計開発コスト・月次運用コスト)
4. 改善後シミュレーション(月間追加売上)
5. ROIと投資回収期間
6. Go/No-Go判断(数字を根拠に1〜2文で)
ヒント(段階的開示)
ヒント1 — 基本計算式
「月間売上 = 購入完了数 × AOV」の基本式から始める。
現状の購入完了数を求めるには、UU → カートイン数 → 購入完了数の順に計算する。
現状の購入完了数を求めるには、UU → カートイン数 → 購入完了数の順に計算する。
ヒント2 — 機会損失・ROIの考え方
機会損失の計算は「もし放棄率がXXXだったら何人が追加購入するか」の差分思考。
改善後の購入完了率 = (1 - 改善後放棄率) を使って新しい購入完了数を求め、差分を出す。
ROI計算では「何ヶ月で回収できるか(ペイバック)」に変換する。
改善後の購入完了率 = (1 - 改善後放棄率) を使って新しい購入完了数を求め、差分を出す。
ROI計算では「何ヶ月で回収できるか(ペイバック)」に変換する。
ヒント3 — 計算の骨格
【現状】
カートイン数 = 1,000,000 × 0.15 = 150,000人
購入完了数 = 150,000 × 0.28 = 42,000人
月間売上 = 42,000 × 4,800 = ?
【改善後】
放棄率 72% → 65% = 購入完了率 28% → 35%
新購入完了数 = 150,000 × 0.35 = ?
月間追加売上 = (新購入完了数 - 42,000) × 4,800 = ?
【投資額】
合計人日 = 3 + 5 + 2 = 10人日
開発コスト = 10 × 5,000 = ?
月次運用コスト = 2万円
【ROI】
ROI = 月間追加売上 / 初期開発コスト × 100
ペイバック = 初期コスト / (月間追加売上 - 月次運用コスト)
購買ファネル図
1. 現状分析
カートイン数 = 1,000,000 × 15% = 150,000人/月
購入完了数 = 150,000 × 28% = 42,000人/月
月間売上 = 42,000 × 4,800 = 201,600,000円(約2億160万円)
2. 課題の定量化(機会損失)
現在の放棄者数 = 150,000 × 72% = 108,000人/月
「もし放棄率が業界平均(65%)だったら」
仮想購入完了数 = 150,000 × 35% = 52,500人/月
差分(取りこぼし)= 52,500 - 42,000 = 10,500人/月
月間機会損失 = 10,500 × 4,800 = 50,400,000円(約5,040万円/月)
→ 現状では毎月約5,040万円分の売上を取りこぼしている。
3. 施策と投資額
| 施策 | 工数(人日) | 開発コスト |
|---|---|---|
| リターゲティングメール自動化 | 3人日 | 15,000円 |
| カートページUX改善 | 5人日 | 25,000円 |
| 在庫残数緊迫表示 | 2人日 | 10,000円 |
| 合計 | 10人日 | 50,000円 |
初期開発コスト = 10人日 × 5,000円 = 50,000円
月次運用コスト = 20,000円/月(SendGrid)
4. 改善後シミュレーション
改善後放棄率 = 65% → 購入完了率 = 35%
新購入完了数 = 150,000 × 35% = 52,500人/月
月間追加購入数 = 52,500 - 42,000 = 10,500人/月
月間追加売上 = 10,500 × 4,800 = 50,400,000円(約5,040万円/月)
月間純増益 = 50,400,000 - 20,000(運用コスト)= 50,380,000円
5. ROIと投資回収期間
ROI(初月) = 50,380,000 / 50,000 × 100 = 100,760%
ペイバック期間 = 50,000 / 50,380,000 ≒ 0.001ヶ月(約1日以内)
補足: 開発コストがわずか5万円に対し、月間効果が約5,040万円という極めて高いROI。一般的にペイバック12ヶ月以内が投資承認の目安だが、本案件はほぼ即日回収できる。
6. Go/No-Go 判断
→ 明確に Go。
初期開発コスト5万円に対し、月間追加売上5,040万円(ROI 100,760%)が見込める。 カート放棄率を業界平均に近づけるだけで年間約6億円の売上増が期待でき、投資リスクがほぼゼロのため、経営承認を強く推奨する。
初期開発コスト5万円に対し、月間追加売上5,040万円(ROI 100,760%)が見込める。 カート放棄率を業界平均に近づけるだけで年間約6億円の売上増が期待でき、投資リスクがほぼゼロのため、経営承認を強く推奨する。
ポイント解説
1
ファネル思考で現状を分解する
UU → カートイン → 購入完了の変換率を順番に計算することで、どこに最大の改善余地があるかを特定できる。エンジニアもビジネスKPIをファネル構造で把握しておくことが必須。
UU → カートイン → 購入完了の変換率を順番に計算することで、どこに最大の改善余地があるかを特定できる。エンジニアもビジネスKPIをファネル構造で把握しておくことが必須。
2
機会損失の数値化が稟議を動かす
「課題がある」ではなく「毎月5,040万円を取りこぼしている」と言えると、経営層の意思決定スピードが格段に上がる。定性ではなく定量で語ることが経営会議での説得力につながる。
「課題がある」ではなく「毎月5,040万円を取りこぼしている」と言えると、経営層の意思決定スピードが格段に上がる。定性ではなく定量で語ることが経営会議での説得力につながる。
3
ROI = 価値 ÷ コスト × 100
エンジニアが見落としがちなのは分母(コスト)の正確な計算。開発工数(人件費)だけでなく、月次運用コストも含めてトータルコストで評価することが正確なROI計算の基本。
エンジニアが見落としがちなのは分母(コスト)の正確な計算。開発工数(人件費)だけでなく、月次運用コストも含めてトータルコストで評価することが正確なROI計算の基本。
ビジネスケース構成テンプレート
| セクション | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 現状分析 | ファネル計算で月間売上を算出 | ベースラインを設定 |
| 課題の定量化 | 機会損失を月額で計算 | 「問題の大きさ」を可視化 |
| 施策と投資額 | 工数・開発コスト・運用コスト | 「かかるコスト」を明示 |
| 改善後シミュレーション | 改善率を仮定して追加売上を算出 | 「期待効果」を数値化 |
| ROI・ペイバック | 効果 ÷ コスト × 100、投資回収期間 | 「割に合うか」を判断 |
| Go/No-Go | 数字を根拠にした1〜2文の結論 | 意思決定者を行動させる |
今日のまとめ
「ビジネスケース作成」とは、数字で現状と未来を描き、意思決定者に行動を促す説得の技術だ。
エンジニアが自らROI計算できるようになると、技術提案が経営言語に変換され、プロジェクトの推進力が大幅に高まる。
エンジニアが自らROI計算できるようになると、技術提案が経営言語に変換され、プロジェクトの推進力が大幅に高まる。