Day 024 — 法務・契約:業務委託契約書

到達性の改善支援(第2段階)の個別条項を、当社の事情を知らない受託先の契約担当者と提案責任者向けに Bad → Good → Better → Best で書き分けて比べる
カテゴリ7 法務・契約 読み手 Lv2 — 距離のある読み手(カタログ1周目) 2026-10-09 (Fri) 読み手:受託先 Mailwise の契約担当・川口さんと提案責任者・青木さん 15分版 / 60分版 今日の核心:成果物の特定は、欲しい結果を書くことではなく、約束できるもの・確かめられるもの・発注の条件に分けること
今日の最短ルート(15分しかない日):① 読み手プロファイル(30秒) → ② 4段階の Good と Better を見比べる(5分。Goodは準委任・月次報告書・みなし検収・30日前の中途解約までそろった正しい契約書だが、稟議の「7/31に効いていなければ8月以降は払わない」を実現できる条文がない。Betterは期間を第1期(確定)と第2期(通知で発生)に分け、成果物を検収の基準が書ける3つに変え、受託者が約束しないことを書く) → ③ 演習の15分版(10分)。着手しないより、3つだけやる方が良い。
お断り:この演習は法的助言の練習ではない。読み手(受託先の契約担当者と提案責任者)に伝わる書き方の練習であり、条文の法的な正確性・妥当性を保証するものではない。実務では必ず自社の法務・弁護士のレビューを経ること。

今日の文書 — 業務委託契約書

業務委託契約書 — 自社の業務の一部を社外の会社に任せるときに、何を任せ、何を受け取り、いくら・いつ払い、どう終わるかを決める契約書。民法上は、仕事の完成を約束する 請負(632条)と、事務の処理を任せる 準委任(656条で委任の規定を準用)に大きく分かれ、準委任の報酬はさらに、働いた割合に払う 履行割合型(648条2項)と、成果に払う 成果完成型(648条の2、2020年4月の改正で明文化)に分かれる。

NDA(法務#1、Day007)が「情報をどう守るか」の契約だったのに対し、業務委託契約書はお金と仕事の交換の契約で、相手の会社は売上がいつ・いくら・どんな条件で入るかを読む。

この文書の勝負どころ: 成果物と検収基準が特定されているか。 ただし今日の題材では、もう一段深い問いがある。「受託者が約束できないこと」を成果物にしていないか。 到達性の改善支援で発注者が本当に欲しいのは「迷惑メール報告率が下がること」だが、報告率は当社の配信の量・頻度・会員の行動でも動き、受託者だけでは決められない。

発注者が欲しいもの成果物にすると何が起きるか今日の書き方
報告率が下がること受託者は約束できない。拒否されるか、リスク分を上乗せした見積が来る約束しないこととして条文に書く。代わりに、効いたかで次の期間を発注するかを決める
効いたかどうか分かること「月次報告書」では、何が入っていれば合格かが決まらない判定メモ(7項目)を成果物にし、7項目を検収の基準にする
9/28の後も社内で判断できること書かなければ、受託者は引き継ぎを業務と思っていない引き継ぎ資料と引き継ぎ会2回を成果物にし、「新任者が独りで判定メモを書けること」を基準にする

シナリオ

あなたは株式会社ノヴァストア EC事業本部・販促システム部の MOpsチームマネージャー・宮田(Day023の続き)。

4/18の稟議(Day022)で、石原CFOは案C「第1段階140万円の発注と、第2段階 上限320万円の枠」を決裁した。条件は2つ: ①6/1の診断で、報告率の上昇がH1(頻度)・H2(登録経路)・H3(件名)のどれによるかを数字で切り分けられたら第2段階を発注する ②損失の上限は300万円——第2段階に入っても、7/31に報告率の7日平均が0.21%を下回っていなければ、8月以降は払わない。

6/1(金)、Mailwise Partners の診断報告が出た。

仮説診断の結果(5/14〜5/27、配信の一部を分けて測定)
H2 登録経路提携ポイントサイト経由の会員4.1万人の報告率 1.9%、それ以外 0.12%。上昇分 0.12pt(0.09%→0.21%)のうち 約0.07pt
H1 頻度週5回の群は週4回の群より +0.03pt
H3 件名差は0.01ptで、この期間の配信量で見分けられる最小の差(0.02pt)より小さい。判別できず

条件①は満たされた。6/4(月)、宮田は3社の第2段階提案を点数で比べ、Mailwise(84点)を選んでCFOにメールで報告した。第2段階の打ち手は2つ。

  • T1: ポイントサイト経由の会員には、確認メールのリンクを押した人にだけ販促メールを送る(押さなければ送らない)
  • T2: 会員の一部で配信を週5回→週4回に戻し、差を測る。配信回数を決めるのはマーケティング部 販促企画課の関課長(Day012・013)で、6/1に「7/10までに始める」と合意済み

Mailwise の提案は月65万円で、期間 6/11〜9/28 を 第1期 6/11〜7/31: 130万円 と 第2期 8/1〜9/28: 130万円 に分けたもの(合計260万円。枠320万円の内)。

宮田は6/5(火)、当社の業務委託基本契約のひな形(法務部 契約審査グループ・小林さん(Day007)が管理)に、今回の個別条項(業務・成果物・検収・報酬・期間)を足した案を Mailwise に送る。回答の期限は 6/8(金)、開始は 6/11(月)。Mailwise 側で読むのは次の2人(新登場)。

  • 川口さん(管理部 契約担当): 年に数十件の契約を見る。到達性の中身は知らない。見るのは売上が確定するか・支払がいつか・どんな責任を負わされるか
  • 青木さん(提案責任者・コンサルタント): 診断を担当した本人。見るのは約束できないことを約束させられていないか、人の手配が間に合うか、自社の手法を持っていかれないか

カタログの主な読み手は「相手企業・法務」で、Lv2(距離のある読み手: 社外の担当者)とそのまま一致するので、ルール5(間接読み手)は使わない。小林さんは送る前に確認する人で、今日の読み手ではない。

読み手プロファイル

項目内容
誰が読むか①川口さん(Mailwise 管理部 契約担当) ②青木さん(同 提案責任者)。2人で読み、川口さんが修正の依頼(赤字)をまとめる
何を判断するために読むかこのまま署名するか、どこを直してもらうか、断るか。 6/8までに答え、6/11に人を出す
何を知っているか業務委託契約の一般的な型(準委任・検収・中途解約・損害賠償の上限)。青木さんは診断の結果とT1・T2の中身
何を知らないか当社の稟議でCFOがつけた条件(7/31の判定と損失の上限300万円)、T2の実施に関課長の合意が要ること、9/3に到達性の担当者が入社すること(Day023)
何を気にしているか結果を保証させられないか。 第2期が当社の都合で消えたとき、確保した人員の費用を誰が持つか。検収がいつまでも終わらず支払が遅れないか。報告書や手法の権利をどこまで渡すか。会員の個人情報を預かる責任
読む時間と場面川口さんは他の契約と並べて30分。条文を1つずつ読み、ひな形と違う箇所に赤を入れる。青木さんは個別条項だけを読む

この読み手が変わると何が変わるか: 読み手が当社の法務部・小林さん(法務レビュー依頼書、法務#4)なら、条文より先に「ひな形から変えた箇所と、その理由・急ぎ度」を書く。読み手が石原CFOなら、条文ではなく「稟議の条件(7/31・上限300万円)が契約のどこで守られているか」を1枚で示す。今日は当社を知らず、自社の売上と責任を守る立場で読む受託先なので、相手が赤を入れる前に「約束しないこと」と「第2期が消えたときの扱い」を先に書く。

4段階で見る — 「業務の内容・成果物・検収・報酬(個別条項)」

同じ業務委託契約書の 「業務の内容・成果物・検収・報酬(個別条項)」 を4段階で書き分けたもの。一般条項は当社ひな形のままで、受託先が赤を入れるのはほぼこの部分。タブで精読、「横に並べる」で差を一望できる。

🔴 Bad14行
🟡 Good14行
🟢 Better13行
🔵 Best14行

行数はほぼ同じ(14・14・13・14行)で、字数は単調に増える(Bad268→Good319→Better479→Best659字)。逆転ではない。Bestで初めて「受託者が判断に使う材料」(回答してほしい3点と譲れる範囲)がそろう。

Bad
報告率0.1%未満を受託者に約束させる。
「一切の業務」「一式」「満足した時点」で終わりがない。
効果がなければ6〜7月分も払わない(稟議より厳しい)。
Good
準委任・月次報告書・10営業日のみなし検収。
30日前の中途解約。ひな形どおりで受託者に不利がない。
ただし7/31の判定を実現できる条文がない。
Better
「報告率の数値を約束しない」と理由つきで明記。
第1期は確定、第2期は8/3の継続通知で発生(オプション)。
成果物は判定メモ・設計書・引き継ぎ、基準つき。
Best
冒頭に「6/8までにご回答いただきたい3点」と譲れる範囲。
当社が打ち手を始めなければ判定せず継続。
権利・データ・第2期なしの引き継ぎまで決める。
Bad
"Party B shall ... reduce the rate to below 0.1%".
"When Party A is satisfied".
"Good-faith consultation".
Good
"Services / Standard of Care / Deemed accepted".
"Termination for Convenience (30 days)".
But no way to apply the Jul 31 test.
Better
"No Guaranteed Result" as a heading.
"Phase 2 only if NovaStore gives notice by Aug 3".
Deliverables with acceptance criteria.
Best
"Three points we need your answer on by Jun 8".
"Where we can move".
"No T1/T2 by Jul 10: no test, Phase 2 proceeds".
Bad — 妥協して雑に作った状態 / 14行
業務委託契約書(個別条項)
甲:株式会社ノヴァストア 乙:Mailwise Partners株式会社
第2条(委託業務)
乙は、甲のメール到達性を改善し、Gmailの迷惑メール報告率を0.1%未満にする。
その他、到達性改善に関する一切の業務を行う。
第3条(成果物)
改善施策一式及びこれに付随する資料。
第4条(検収)
甲が成果物の内容に満足した時点で検収完了とする。
第5条(報酬)
月額65万円(税別)。ただし、7月31日時点で効果が認められない場合、
甲はそれまでの報酬を支払わない。
第6条(協議)
本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議の上決定する。

何が起きているか:

  • 受託者が約束できないことを約束させている。 報告率は当社の配信の量・頻度でも動く。しかも0.1%未満は、稟議の判定の線(0.21%)ですらない、Googleの推奨値をそのまま書いたもの。川口さんは第2条を丸ごと削るか、契約を断る
  • 「その他一切の業務」「改善施策一式」「満足した時点」で、範囲も検収の終わりもない。 受託者から見ると、仕事が無限に増え、支払がいつまでも始まらない契約である
  • 「効果がなければ、それまでの報酬も払わない」は、稟議の条件より厳しい。 CFOの条件は「8月以降は払わない」で、6〜7月の支払は止めていない。宮田が条件を読み違え、自分で上乗せしている
  • 「効果が認められない」を誰が・何で判断するかがない。 争いになったとき、第6条の「誠実に協議」しか手がない

これは怠慢ではなく、「契約書は発注者を守るためのもの。強く書いておけば安全」という通念から生まれる形である。稟議で約束した条件を、そのまま相手への要求に書き写すとこうなる。

Bad / 14行
Service Agreement (Special Terms)
Party A: NovaStore Inc.  Party B: Mailwise Partners Inc.
Article 2 (Services)
Party B shall improve Party A's email deliverability and reduce the Gmail spam complaint rate to below 0.1%.
Party B shall also perform all other work related to deliverability improvement.
Article 3 (Deliverables)
All improvement measures and any related materials.
Article 4 (Acceptance)
Acceptance occurs when Party A is satisfied with the deliverables.
Article 5 (Fees)
JPY 650,000 per month (excl. tax). If no effect is recognized as of July 31,
Party A shall not pay any fees up to that date.
Article 6 (Consultation)
Matters not provided for herein shall be resolved through good-faith consultation between the parties.

"Party A / Party B" は日本の「甲・乙」の直訳で、英文契約では読み手がどちらがどちらかを毎回確かめることになる。"to Party A's satisfaction"(満足した時点)は、英文契約でも受託者が最も警戒する言葉の1つで、主観で検収を止められると読まれる。

Good — 型は満たしている / 14行
第2条(委託業務)
甲は乙に対し、別紙仕様書に定めるメール到達性改善支援業務(以下「本業務」)を委託する。
第3条(契約の性質)
本契約は準委任契約とし、乙は善良な管理者の注意をもって本業務を行う。
第4条(成果物)
乙は、毎月末日までに当月の作業内容をまとめた月次報告書を甲に提出する。
第5条(検収)
甲は成果物の受領後10営業日以内に検査し、合否を書面で通知する。
期間内に通知がない場合は、合格したものとみなす。
第6条(報酬及び支払)
報酬は月額65万円(税別)とし、月末締め翌月末日に支払う。
第7条(中途解約)
甲及び乙は、30日前までに書面で通知することにより本契約を解約できる。
第8条(契約期間) 2029年6月11日から2029年9月28日まで

Badから何が変わったか:

  • ③事実と解釈の分離が動いた。報告率の保証が消え、準委任(善管注意義務で働く契約)と明記された。結果ではなく、注意を尽くして働くことに払う契約になった
  • ②読み手適合が動いた。業務の範囲が「別紙仕様書」に限られ、「その他一切」が消えた。検収に期限(10営業日)とみなし合格がつき、支払の日(月末締め翌月末)が決まった
  • ④次の行動が動いた。中途解約の手続き(30日前の書面)と契約期間が入った
  • 川口さんの確認はこれでほぼ通る。 ひな形どおりで、受託者に不利な条文がない

まだ足りないもの(ここが今日の本題):

  • CFOとの約束「7/31に効いていなければ8月以降は払わない」が、どの条文でも実現できない。 第7条で8/1に終わらせるには、30日前の 7/2までに 解約を通知する必要がある。7/31の数字はまだない。結局、宮田は判定を待たずに解約するか、判定を諦めて9月まで払うかを選ぶことになる
  • 中途解約は、受託者には「いつ切られるか分からない」条文に読める。 第2期の人員(青木さんのチーム2名)を確保してよいのか、青木さんは決められない
  • 成果物の「月次報告書」に、何が入っていれば合格かがない。 10営業日で検査すると書いても、検査の物差しがない。しかも当社が本当に欲しいもの——打ち手が効いたかの判定、登録経路で報告率を見る仕組み、9/3入社の担当者への引き継ぎ(Day023)——が成果物にない
  • 何を約束しないかが書いていない。 報告率の保証は消えたが、消えたことは書いていない。青木さんは「報告率が下がらなかったら、責任を問われるのでは」という疑いを、別紙と照らして自分で確かめる必要がある
Good / 13行
1. Services. NovaStore engages Mailwise to provide the deliverability support services
   described in Exhibit A (the "Services").
2. Standard of Care. Mailwise shall perform the Services with the care of a prudent professional.
3. Deliverables. Mailwise shall deliver a monthly report summarizing work performed
   by the last day of each month.
4. Acceptance. NovaStore shall inspect each Deliverable within ten (10) business days of receipt
   and notify Mailwise in writing of acceptance or rejection. Failing such notice,
   the Deliverable is deemed accepted.
5. Fees and Payment. Fees are JPY 650,000 per month, excluding tax, invoiced monthly
   and payable by the end of the following month.
6. Termination for Convenience. Either party may terminate this Agreement on thirty (30) days'
   written notice.
7. Term. June 11, 2029 through September 28, 2029.

番号と見出し、"shall"、"deemed accepted"、"Termination for Convenience" は英文契約の標準の型で、正しい。ただし日本語版と同じく、7/31の判定を30日前の解約通知で実現できない。

Better — 読み手に最適化されている / 13行
第2条(本業務と、約束しないこと)
1 Mailwiseは別紙1の打ち手T1・T2の検証を支援する。報酬は作業に対して支払う(履行割合型の準委任)
2 Mailwiseは迷惑メール報告率の数値を約束しない。報告率はノヴァストアの配信量・頻度にも左右されるため
第3条(期間と報酬)
  第1期 6/11〜7/31  130万円(税別・定額)  この契約で確定
  第2期 8/1〜9/28   130万円(税別・定額)  ノヴァストアが8/3までに継続を書面で通知した場合に限り発生
  通知がなければ第2期は発生せず、どちらも相手に損害賠償を求めない
第4条(成果物と検収の基準)
  ①打ち手ごとの判定メモ(別紙2の7項目: 仮説・対象・対照群・期間・判定基準・結果・推奨)
  ②Feedback-ID設計書(登録経路ごとに報告率を分けて見られること)
  ③引き継ぎ資料と引き継ぎ会2回(9/3入社の担当者が独りで判定メモを書けること)
  検収は受領後5営業日。不合格は別紙2の項目を挙げて書面で通知し、修正は1回。期限内に通知がなければ合格
第5条(支払) 各期の末日締め、翌月末払い。第1期の報酬は成果物①の検収を条件としない

Goodから何が変わったか(★ここが今日の学習の中心):

読み手プロファイルの各項目に、変更を1対1で対応させている。

読み手プロファイルの項目Betterで行った変更
気にしていること「結果を保証させられないか」第2条2項に「報告率の数値を約束しない」と理由つきで書いた。Goodは保証の条文を消しただけで、消えたことは読み手が推測するしかなかった。書いておけば、青木さんは別紙を読み比べずに済み、川口さんは赤を入れる箇所が1つ減る
気にしていること「第2期が当社の都合で消えたとき、確保した人員の費用を誰が持つか」中途解約の条文で終わらせるのをやめ、期間を2つに分けた。第1期は確定、第2期は「当社が8/3までに通知したら発生」。解約ではなく最初から条件つきの発注なので、第2期が発生しなくても契約違反でも中途解約でもない。損害賠償の扱いも同じ行で決めた
知らないこと「稟議の条件(7/31の判定)」判定の中身(報告率0.21%)は書かず、8/3という通知の期限だけを書いた。7/31のデータを見て、3日で決められる。Goodの「30日前の解約」では、データが出る前に決める必要があった
気にしていること「検収がいつまでも終わらず支払が遅れないか」成果物を、合格かどうかを外から確かめられる3つに変えた。判定メモは別紙2の7項目がそろっていれば合格、設計書は登録経路ごとに見られれば合格、引き継ぎは新任者が独りで書ければ合格。不合格は項目を挙げて通知し、修正は1回まで。検収を10営業日→5営業日に縮めた
気にしていること「支払がいつか」第1期の報酬を判定メモの検収と切り離した。準委任の履行割合型なので、働いた分は払う。検収は成果物の質を確かめる手続きで、支払を止める道具にしない
知らないこと「9/3に担当者が入社すること」引き継ぎを成果物③にした。書かなければ、受託者は引き継ぎを業務の外だと考えて当然である
Goodの「甲・乙」「ノヴァストア」「Mailwise」と社名の略称で書いた。青木さんは個別条項だけを読むので、どちらがどちらかを毎回1行目に戻って確かめる必要がない

業務委託契約書の「成果物の特定」は、発注者が欲しい結果を書くことではなく、受託者が約束できる形に分けること: Goodは型として正しいが、成果物(月次報告書)が当社の欲しいものとずれ、当社の欲しいもの(報告率の改善)は約束できない形のまま放置されていた。Betterは、欲しいものを3つに分けた。約束できないもの(報告率)は「約束しない」と書く/確かめられるもの(判定メモ・設計書・引き継ぎ)は基準つきの成果物にする/約束できないものに頼る判断(続けるか)は、発注の条件にする。

それでも残っている問題(Bestで扱う):

  • 第2期の発生が、当社の通知だけで決まる。 青木さんから見ると、当社が「T2(週4回)を始めないまま報告率が下がらず、第2期を出さない」こともできる。T2の実施は関課長しだいで、Mailwise には動かせない
  • 8/3の通知では、第2期の人員を手配する時間がない(8/1に始まるのに、決まるのは8/3)
  • 判定メモや設計書の権利(当社が後で自由に直してよいか、Mailwise の手法を持っていかれないか)が決まっていない
  • 会員のデータをどこまで渡すかが書いていない
  • 川口さんは条文を順に読み、どこを判断すればよいかを自分で探す必要がある

ここで動いた軸: ②読み手適合(受託者が気にすること——結果の保証・人員・支払——に条文を対応させた)、③事実と解釈の分離(約束すること/しないこと/発注の条件の3つに分けた)、④次の行動(8/3の通知・5営業日の検収・1回の修正)。

Better / 14行
2. Services; No Guaranteed Result
 2.1 Mailwise will support testing of fixes T1 and T2 in Exhibit A. Fees are for time and effort, not results.
 2.2 Mailwise does not guarantee any spam complaint rate. The rate also depends on NovaStore's send volume and frequency.
3. Phases and Fees
 Phase 1  Jun 11-Jul 31  JPY 1.3M (fixed, excl. tax)  Committed under this Agreement
 Phase 2  Aug 1-Sep 28   JPY 1.3M (fixed, excl. tax)  Only if NovaStore gives written notice to continue by Aug 3
 If no notice is given, Phase 2 does not start, and neither party owes the other any damages.
4. Deliverables and Acceptance Criteria
 (a) A decision memo for each fix, covering the seven items in Exhibit B
 (b) A Feedback-ID design that lets NovaStore see complaint rates by sign-up source
 (c) Handover materials and two handover sessions, enough for the new hire (starting Sep 3) to write a decision memo alone
 Acceptance within 5 business days. A rejection must cite Exhibit B items in writing. One round of fixes. Silence = acceptance.
5. Payment. Invoiced at the end of each Phase; payable by the end of the following month.
 Phase 1 fees are not conditional on acceptance of (a).

"No Guaranteed Result" を見出しに出すのは、英文の SOW で受託者側がよく求める書き方。発注者側から先に書くと、相手の赤字が1つ減る。"Phase 2 ... Only if NovaStore gives written notice" は、解約(termination)ではなくオプション(発注者の選択権)の形にしたもの。

Best — 読み手が意思決定できる / 14行
【6/8(金)までにご回答いただきたい3点】これ以外は当社ひな形の標準条項です
  論点             当社案(推奨)                              当社が譲れる範囲
  A 第2期の決め方    8/3までに継続を通知。なければ発生しない      通知を7/27に前倒し(人員の手配のため)
  B 継続の判定       7/25〜31の報告率の7日平均が0.21%未満で継続  当社がT1・T2を7/10までに始めなければ、判定せず継続
  C 成果物の権利     判定メモ・設計書・引き継ぎ資料は当社が複製・改変できる  Mailwiseの既存のツール・手法はMailwiseに残る
第2条(約束すること・しないこと)
  約束する: 別紙1のT1・T2の検証の設計・分析と判定メモの作成(履行割合型の準委任)
  約束しない: 報告率の数値。T1・T2の実施(配信の変更)はノヴァストアが行い、その結果もノヴァストアが負う
第3条(期間と報酬) 第1期 6/11〜7/31 130万円(確定)/第2期 8/1〜9/28 130万円(論点Aの通知で発生)
  7/20にノヴァストアが第2期の見込みを共有する。第2期が発生しなくても、どちらも損害賠償を求めない
第4条(成果物と検収) ①判定メモ(別紙2の7項目) ②Feedback-ID設計書 ③引き継ぎ資料と引き継ぎ会2回
  検収5営業日・不合格は項目を挙げて書面・修正1回・期限内に通知がなければ合格
  支払は検収を条件としない。ただし第2期のうち65万円は③の検収が条件(第2期がなければ7/31に簡易版を納める)
第5条(データ) ノヴァストアが渡すのは、ハッシュ化した会員IDと登録経路コードのみ。氏名・メールアドレスは渡さない

Betterから何が変わったか:

  • ①結論の位置が動いた。冒頭が「6/8までにご回答いただきたい3点」になった。川口さんが条文を順に読んで論点を探すのではなく、判断が要る3点と、それ以外は標準条項であることが最初に分かる。30分の読み時間のほとんどを3点に使える
  • ⑤想定反論が動いた。論点Bの「譲れる範囲」に、当社がT1・T2を7/10までに始めなければ、判定せずに第2期へ進むと書いた。Betterの残課題「当社が打ち手を実施しないまま第2期を出さない」への先回りで、判定を受託者が動かせる範囲に限った。報告率を約束させないだけでなく、当社側の怠慢で受託者の売上が消える道もふさいだ
  • ②読み手適合が動いた。論点Aで、通知を7/27に前倒しできると譲れる範囲を先に示し、7/20に見込みを共有すると書いた。青木さんは「8/1開始なのに8/3に決まる」問題を赤で返す前に、答えを見つけられる
  • ③事実と解釈の分離が動いた。成果物の権利(論点C)を、当社が自由に直せるもの(成果物)とMailwiseに残るもの(既存の手法)に分けた。データ(第5条)は、渡すもの・渡さないものを列挙した
  • ④次の行動が動いた。第2期が発生しない場合にも、7/31に引き継ぎの簡易版が納まるようにした。9/3入社の担当者は、どちらの場合でも資料を受け取れる

「譲れる範囲」を最初から見せるのは、交渉で損ではないか: 譲れるものを先に見せると、相手はそれを足がかりにさらに求めてくる、という心配はもっともである。それでも見せるのは、今回の時間の制約(6/8回答・6/11開始)では、赤字のやり取りを1往復で終わらせる必要があるからだ。1往復に2〜3営業日かかり、2往復すると開始が6/18にずれ、7/31の判定までの検証期間が7週から6週に縮む。そして見せる「譲れる範囲」は、どれも稟議の条件(損失の上限300万円、7/31の判定)を崩さないものに限っている。ただし通知を7/27に前倒しすると、判定に使うデータは7/25〜31のままにできない。そこで送付状でデータを7/20〜26に動かすと先に書いた。T2の開始(7/10まで)からの測定が約2週間に縮むが、判定の線0.21%は変えない——ここが稟議の条件を守る最後の線である。

分量(実測。字数はスクリプトで数えた値): JA Bad14・Good14・Better13・Best14行、字数(空白を除く)Bad268・Good319・Better479・Best659字。行数はほぼ同じで、字数は4段階で単調に増えた(逆転ではない)。契約の個別条項は、Badでも条文の見出しの数だけ行がある。差は1行に詰め込まれる中身——Betterは「約束しないこと」と期間の表、Bestは「ご回答いただきたい3点」の表と譲れる範囲——で、Bestで初めて受託者が判断に使う材料がそろうため字数が最長になる(Day023と同じ型)。削るなら、Best全文の送付状の「理由」の列を落とす。ただし落とすと、譲れる範囲がなぜその範囲なのかを川口さんが電話で聞くことになる。

今回はBestまで作るべきか: Best必要。理由は2つ。①支払が条件で分かれる契約(第2期の発生が7/31の判定しだい)は、条件の書き方が曖昧だと争いになり、その争いは8月の、打ち手の効果を見るべき時期に起きる。②回答期限まで3日で、赤字のやり取りを1往復で終える必要がある。ただし、月額固定で条件のない準委任(例: 配信基盤の保守、毎月同じ作業)なら、Betterで十分。「ご回答いただきたい3点」の送付状を毎回つける必要はない。

Best / 14行
Three points we need your answer on by Fri, Jun 8. Everything else is our standard terms.
 Point                  Our proposal (recommended)                         Where we can move
 A How Phase 2 starts   Written notice by Aug 3; no notice, no Phase 2     Notice as early as Jul 27, so you can staff
 B Continuation test    7-day average complaint rate < 0.21% (Jul 25-31)   If we have not started T1 and T2 by Jul 10: no test, Phase 2 proceeds
 C Ownership            We may copy and modify the memos, design, handover Your pre-existing tools and methods stay yours
2. What Mailwise commits to, and what it does not
 Commits to: designing and analyzing tests of T1 and T2, and writing decision memos (time-and-effort basis)
 Does not commit to: any complaint rate. NovaStore makes the send changes and owns that outcome
3. Phase 1 Jun 11-Jul 31: JPY 1.3M, committed. Phase 2 Aug 1-Sep 28: JPY 1.3M, upon notice under Point A
 We share our Phase 2 outlook on Jul 20. If Phase 2 does not start, neither party owes damages
4. Deliverables: (a) decision memos (Exhibit B, seven items) (b) Feedback-ID design (c) handover materials + two sessions
 Acceptance in 5 business days; item-specific written rejection; one round of fixes; silence = acceptance
 Payment is not conditional on acceptance, except JPY 0.65M of Phase 2 on (c) (no Phase 2: short version by Jul 31)
5. Data. We send hashed member IDs and sign-up source codes only. No names or email addresses

冒頭の "Three points we need your answer on" は、英文の送付メール(cover email)でよく使う "open points" の表を契約書の前に置いたもの。"Where we can move" は日本語の「譲れる範囲」に当たり、英語では "our fallback position" とも書くが、相手に見せる文書では柔らかい "where we can move" の方が交渉の空気を壊さない。

日英差分ノート

1. 当事者の呼び方: 「甲・乙」と defined terms

日本の契約書は伝統的に「甲・乙」で書き、日本の読み手は慣れている。英文契約は定義した名前("NovaStore", "Mailwise", または "Client", "Supplier")で書くのが標準で、"Party A / Party B" は直訳と分かる。日本語でも近年は社名の略称で書く契約が増えており、個別条項だけを読む人(今日の青木さん)がいるなら、日本語でも略称の方が読み違いが減る。日英で同じ結論になるが、日本語では「甲乙を使わないと慣れていない会社に見える」という心配が残るので、ひな形の本文は甲乙のままにし、個別条項だけ略称にするのが現実的な折衷である(Best全文はこの形)。

2. 「誠実に協議する」と "negotiate in good faith"

日本の契約書には「定めのない事項は誠実に協議して決める」という条項がほぼ必ず入る。実務上は争いになったときに何も決めていないのと同じで、Bad の第6条はそれだけを頼りにしている。英語に直訳した "good-faith consultation" は、英国法では交渉する合意そのものに拘束力がないとされることがある(記憶による。設計メモ参照)。日英どちらでも、協議条項に頼らず、今日の論点B(判定の基準と、判定しない場合)のように、争いになりそうな箇所を先に決めておくのが今日の差分。

3. 「最善を尽くす」と "best efforts"

日本語の「最善を尽くす」は気軽に使われ、準委任の善管注意義務とほぼ同じ意味で読まれる。英語の "best efforts" は、米国の契約実務では自社の利益を犠牲にしても努めるほど重い義務と読まれることがあり、受託者は "commercially reasonable efforts"(商業上合理的な努力)に直してくる(記憶による)。今日の英語版では努力の強さの言葉を使わず、"time-and-effort basis"(作業に払う)と "does not commit to"(約束しない)で範囲を書いた。強さの言葉で争うより、範囲で決める方が日英どちらでも誤解が少ない。

4. shall と will

英文契約の "shall" は義務を表す。今日の Better・Best では、受託者の義務ではない説明("Fees are for time and effort")や、当社の予定("We share our outlook on Jul 20")には "shall" を使わず、現在形や "will" にした。何でも shall で書くと、説明まで義務に読まれる。 日本語には同じ区別がなく、「〜する」「〜するものとする」で義務と説明が混ざりやすい。

頻出表現

日本語Englishトーンの強さ
〜を約束しないdoes not guarantee / does not commit to中立。受託者を安心させる
作業に対して支払う(履行割合型)fees are for time and effort, not results中立
継続を書面で通知した場合に限り発生only if ... gives written notice to continue中立。オプションの形
どちらも損害賠償を求めないneither party owes the other any damages中立
期限内に通知がなければ合格silence = acceptance / deemed accepted中立
項目を挙げて書面で通知rejection must cite ... in writing中立。検収の恣意を防ぐ
当社が譲れる範囲where we can move柔らかい。相手に見せる文書向け
ご回答いただきたい点points we need your answer on / open points中立
甲が満足した時点to Party A's satisfaction危険。主観で検収を止められる
誠実に協議の上決定するresolved through good-faith consultation弱い。争いの解決にならない
最善を尽くすbest efforts日本語は弱い、英語は重い。ずれる

差分5軸まとめ

軸BadGoodBetterBest
① 結論の位置第2条で報告率0.1%未満を要求条文の順(委託業務→性質→成果物…)第2条に「約束しないこと」冒頭に「6/8までにご回答いただきたい3点」と譲れる範囲
② 読み手適合発注者が守られる書き方だけひな形どおり。受託者に不利な条文がない受託者が気にすること(保証・人員・支払)に条文を対応人員の手配(通知の前倒し・7/20の見込み共有)まで
③ 事実と解釈の分離「効果が認められない」を誰が判断するか不明準委任と明記、保証の条文を消す約束すること/しないこと/発注の条件に分ける判定を受託者が動かせる範囲に限る。権利とデータを分ける
④ 次の行動「満足した時点」で終わりがない10営業日の検収、30日前の解約8/3の通知、5営業日の検収・修正1回第2期がなくても7/31に引き継ぎの簡易版
⑤ 想定反論無視(受託者は断る)一部(保証を消すだけ)「報告率は約束しない」と理由つきで明記「当社が打ち手を始めなければ判定せず継続」で、当社側の怠慢に先回り
今回の学習の中心は Good → Better。 Good→Better は ひな形どおりの正しい契約書から、受託者が気にすること(結果の保証・人員・支払)に条文を対応させ、欲しいものを「約束しないこと(報告率)/基準つきの成果物(判定メモ・設計書・引き継ぎ)/発注の条件(第2期の継続通知)」の3つに分けたという読み手最適化。Better→Best は 冒頭に回答してほしい3点と譲れる範囲を置き、当社が打ち手を始めなければ判定しない条件で当社側の怠慢に先回りし、権利・データ・第2期がない場合の引き継ぎまで決めた。

Best版・全文

日本語版 全文を見る

送付状

Mailwise Partners株式会社 管理部 川口さま/コンサルティング部 青木さま

2029年6月5日 株式会社ノヴァストア EC事業本部 販促システム部 宮田

第2段階のご提案(6/4選定のご連絡済み)について、業務委託契約書の案をお送りします。当社の業務委託基本契約のひな形(第1段階と同じもの)に、個別条項(第2条〜第6条と別紙1・2)を足したものです。ひな形の部分は第1段階の契約から変えていません。

6/8(金)までにご回答いただきたい3点

論点当社案(推奨)当社が譲れる範囲理由
A 第2期の決め方8/3(金)までに当社が継続を書面(メール可)で通知。なければ第2期は発生しない通知を7/27(金)に前倒し。その場合、論点Bのデータは7/20〜26に動かす第2期の人員を手配していただく時間のため
B 継続の判定7/25〜31の、Postmaster Tools の迷惑メール報告率の7日平均が0.21%未満なら継続当社がT1・T2を7/10までに始めなかった場合は、判定せず第2期へ進む判定を、Mailwise が動かせる範囲に限るため
C 成果物の権利判定メモ・Feedback-ID設計書・引き継ぎ資料は、当社が社内で自由に複製・改変できる判定に使った Mailwise の既存のツール・手法・テンプレートの権利は Mailwise に残る9月以降、当社の担当者が判定メモを書き継ぐため

6/11(月)の開始に間に合わせるため、修正のご依頼は1回でまとめていただけると助かります。ご不明な点は宮田まで(電話でも構いません)。

業務委託契約書(個別条項)

株式会社ノヴァストア(以下「ノヴァストア」)と Mailwise Partners株式会社(以下「Mailwise」)は、業務委託基本契約(以下「基本契約」)に基づき、次のとおり個別条項を定める。基本契約で「甲」とあるのはノヴァストア、「乙」とあるのは Mailwise とする。

第1条(目的) ノヴァストアのメール配信で上昇した Gmail の迷惑メール報告率について、2029年6月1日の診断報告で特定された原因への打ち手を検証し、その結果をノヴァストアが社内で判断できるようにすることを目的とする。

第2条(約束すること・しないこと)

  1. Mailwise は、別紙1に定める打ち手T1・T2の検証の設計、データの分析、及び判定メモの作成を行う(以下「本業務」)。本契約は準委任契約とし、報酬は本業務の履行の割合に応じて支払う(民法648条2項の履行割合型)。
  2. Mailwise は、迷惑メール報告率その他の数値の達成を約束しない。
  3. T1・T2の実施(配信の対象・回数の変更)はノヴァストアが行い、その実施の有無と結果についての責任はノヴァストアが負う。

第3条(期間と報酬)

期期間報酬(税別・定額)発生の条件
第1期2029年6月11日〜7月31日1,300,000円本契約の締結により確定
第2期2029年8月1日〜9月28日1,300,000円第4条の継続通知があった場合に限り発生

第4条(第2期の発生)

  1. ノヴァストアは、2029年8月3日までに、第2期を発生させるかを Mailwise に書面(電子メールを含む)で通知する。
  2. ノヴァストアは、7月25日〜31日の Google Postmaster Tools の迷惑メール報告率の7日平均が0.21%未満であれば、継続を通知する。0.21%以上であれば、継続を通知しないことができる。
  3. 前項にかかわらず、ノヴァストアが7月10日までにT1及びT2の両方を開始しなかった場合、ノヴァストアは継続を通知する。
  4. ノヴァストアは7月20日に、第2期の見込みを Mailwise に共有する。
  5. 期限までに継続の通知がない場合、第2期は発生しない。この場合、いずれの当事者も相手方に損害賠償その他の金銭を請求しない。
  6. 7日平均の算出期間にデータの欠測が3日以上ある場合は、算出期間を欠測のない直前の7日に移す。

第5条(成果物と検収)

  1. Mailwise は次の成果物を納める。
成果物合格の基準納期
① 判定メモ(打ち手ごと)別紙2の7項目がすべて書かれているT1: 7/27、T2: 7/31(第2期は9/21に更新版)
② Feedback-ID 設計書登録経路コードごとに報告率を分けて見られる設定と、その確かめ方が書かれている6/29
③ 引き継ぎ資料と引き継ぎ会2回ノヴァストアの担当者(9/3入社予定)が、資料だけで判定メモを1本書ける9/21(会は9/7・9/21)。第2期が発生しない場合は、7/31に簡易版(判定メモの書き方)を納める
  1. ノヴァストアは受領から5営業日以内に検収し、結果を書面で通知する。不合格とする場合は、上表の基準のうち満たしていない項目を挙げる。
  2. 不合格の通知を受けた Mailwise は1回に限り修正する。修正後の検収も前項による。
  3. 期間内に通知がない場合、合格したものとみなす。

第6条(支払)

  1. 報酬は各期の末日に締め、翌月末日までに支払う。
  2. 報酬の支払は、成果物の検収を条件としない。ただし、第2期の報酬のうち650,000円は、成果物③の検収を条件とする。

第7条(成果物の権利)

  1. ノヴァストアは、成果物を社内で自由に複製・改変・利用できる。
  2. 成果物の作成に用いた Mailwise の既存のツール・手法・テンプレートの知的財産権は Mailwise に留保される。ノヴァストアは、成果物を利用するのに必要な範囲でこれらを利用できる。

第8条(データ)

  1. ノヴァストアが Mailwise に渡すデータは、ハッシュ化した会員ID、登録経路コード、配信日時、配信群の区分に限る。氏名・メールアドレスは渡さない。
  2. ハッシュ化した会員IDはノヴァストア側で照合できるため、両者はこれを個人データとして扱い、基本契約の個人情報の条項を適用する。Mailwise は第2期の終了後(第2期が発生しない場合は第1期の終了後)30日以内にこれを消去し、消去したことを書面で通知する。

第9条(再委託) Mailwise は、ノヴァストアの書面による事前の承諾なく、本業務を第三者に再委託しない。

別紙1 打ち手

打ち手内容実施する者開始
T1提携ポイントサイト経由の会員(約4.1万人)には、確認メールのリンクを押した人にだけ販促メールを送るノヴァストア(MOpsチーム)6/25
T2会員の一部(無作為に抽出した20%)で配信を週5回から週4回に戻し、残りと比べるノヴァストア(マーケティング部 販促企画課の合意のうえ)7/10まで

別紙2 判定メモの7項目

項目書く内容
1 仮説何を変えると、報告率がどう変わるはずか
2 対象どの会員に対して変えたか(人数)
3 対照群変えなかった群とその人数、分け方
4 期間測った期間と、その間の配信回数
5 判定基準事前に決めた「効いた」とする差と、見分けられる最小の差
6 結果群ごとの報告率と差。見分けられなかった場合はそう書く
7 推奨続ける・やめる・範囲を変える、のどれか1つと、その理由
English 全文を見る

Cover email

To: Ms. Kawaguchi (Administration) and Mr. Aoki (Consulting), Mailwise Partners Inc. From: Miyata, Promotion Systems, NovaStore Inc. — June 5, 2029

Please find attached our draft Statement of Work for Phase 2 (following our selection notice of June 4). It sits under the same Master Services Agreement as Phase 1. We have not changed any MSA terms.

Three points we need your answer on by Friday, June 8

PointOur proposal (recommended)Where we can moveWhy
A How Phase 2 startsNovaStore gives written notice (email is fine) by Fri, Aug 3. No notice, no Phase 2Notice as early as Fri, Jul 27; Point B data then moves to Jul 20-26To give you time to staff Phase 2
B Continuation testContinue if the 7-day average Gmail spam complaint rate (Postmaster Tools, Jul 25-31) is below 0.21%If NovaStore has not started both T1 and T2 by Jul 10, no test: Phase 2 proceedsSo the test only covers what Mailwise can influence
C OwnershipNovaStore may freely copy and modify the decision memos, Feedback-ID design and handover materials internallyMailwise's pre-existing tools, methods and templates remain Mailwise'sOur new hire will keep writing decision memos from September

To keep the June 11 start, we would be grateful if you could send all requested changes in one round. Questions to Miyata, by phone or email.

Statement of Work No. 2 — Deliverability Testing Support

This SOW is made under the Master Services Agreement between NovaStore Inc. ("NovaStore") and Mailwise Partners Inc. ("Mailwise"). References to "Party A" and "Party B" in the MSA mean NovaStore and Mailwise.

1. Purpose. To test the fixes for the causes identified in Mailwise's diagnosis report of June 1, 2029, and to enable NovaStore to make these calls in-house.

2. What Mailwise commits to, and what it does not 2.1 Mailwise will design the tests of fixes T1 and T2 in Exhibit A, analyze the data and write decision memos (the "Services"). Fees are paid for time and effort, not for results. 2.2 Mailwise does not guarantee any spam complaint rate or other metric. 2.3 NovaStore makes the send changes for T1 and T2 and is responsible for whether and how they are made, and for their outcome.

3. Phases and Fees

PhasePeriodFee (fixed, excl. tax)Condition
Phase 1Jun 11-Jul 31, 2029JPY 1,300,000Committed on signing
Phase 2Aug 1-Sep 28, 2029JPY 1,300,000Only upon notice under Section 4

4. Phase 2 Option 4.1 NovaStore shall notify Mailwise in writing (email included) by August 3, 2029 whether Phase 2 will start. 4.2 NovaStore shall give notice to continue if the 7-day average spam complaint rate in Google Postmaster Tools for July 25-31 is below 0.21%. If it is 0.21% or higher, NovaStore may decline. 4.3 Notwithstanding 4.2, if NovaStore has not started both T1 and T2 by July 10, NovaStore shall give notice to continue. 4.4 NovaStore will share its Phase 2 outlook with Mailwise on July 20. 4.5 If no notice to continue is given by the deadline, Phase 2 does not start, and neither party owes the other any damages or other payment. 4.6 If three or more days of data are missing in the measurement window, the window moves to the most recent seven days without missing data.

5. Deliverables and Acceptance

DeliverableAcceptance criterionDue
(a) Decision memo per fixCovers all seven items in Exhibit BT1: Jul 27; T2: Jul 31 (updated Sep 21 in Phase 2)
(b) Feedback-ID designShows how to view complaint rates by sign-up source code, and how to verify itJun 29
(c) Handover materials and two sessionsNovaStore's new hire (starting Sep 3) can write one decision memo from the materials aloneSep 21 (sessions Sep 7 and 21). If Phase 2 does not start, a short version (how to write a decision memo) by Jul 31

5.2 NovaStore shall accept or reject within five business days of receipt, in writing. A rejection must cite the unmet criterion. 5.3 Mailwise shall make one round of fixes after a rejection; the same review applies. 5.4 If NovaStore does not respond in time, the deliverable is deemed accepted.

6. Payment. Invoiced at the end of each Phase; payable by the end of the following month. Payment is not conditional on acceptance, except that JPY 650,000 of the Phase 2 fee is conditional on acceptance of (c).

7. Ownership. NovaStore may freely copy, modify and use the deliverables internally. Mailwise retains all IP in its pre-existing tools, methods and templates, and grants NovaStore the right to use them as needed to use the deliverables.

8. Data. NovaStore will provide hashed member IDs, sign-up source codes, send times and test-group labels only. No names or email addresses. Because NovaStore can re-link the hashed IDs, both parties will treat them as personal data under the MSA. Mailwise will delete them within 30 days after the last Phase ends and confirm deletion in writing.

9. Subcontracting. Mailwise will not subcontract the Services without NovaStore's prior written consent.

Exhibit A — Fixes

FixWhat changesWho makes the changeStart
T1Members who joined through partner points sites (~41,000) receive marketing email only after clicking a confirmation linkNovaStore (MOps team)Jun 25
T2A random 20% of members go back from five to four emails a week, compared with the restNovaStore (with the agreement of Marketing)By Jul 10

Exhibit B — Seven items in a decision memo

ItemWhat to write
1 HypothesisWhat change should move the complaint rate, and which way
2 Treatment groupWhich members received the change (count)
3 Control groupWho did not, how many, and how they were split
4 PeriodWhen it was measured, and how many sends in that period
5 Decision ruleThe difference agreed in advance to count as "worked", and the smallest detectable difference
6 ResultComplaint rate by group and the difference; say so if it could not be detected
7 RecommendationOne of continue / stop / change scope, with the reason

完成の定義チェックリスト

契約書の案を相手に送る前に必ず確認する。「雑・妥協」を防ぐための外部基準。1つでも未チェックがあれば、まだ出さない。

進捗 0 / 10

今日の演習

15分版(まずこれだけでもやる)

Bad例の第2条〜第5条を、次の3つの箱に仕分けて書き直す。手順: ①Bad の文を1つずつ取り出し、「受託者が自分だけで実現できるか」を○×でつける(例: 報告率0.1%未満は×)。②○は成果物の箱に入れ、それぞれに「何がそろえば合格か」を1行で書く。③×は「約束しないこと」の箱に入れ、理由を1行で書く。④×のうち当社の判断に必要なもの(効いたか)は、発注の条件の箱に移し、「いつ・何の数字で・どう決めるか」を書く。

60分版

6/7(木)、川口さんから赤字の回答が届いた設定で、返信を書く。 赤字は3点。①論点A: 「8/3では人員を確保できない。継続の通知は7/13までに」 ②論点B: 「Postmaster Tools のデータは2〜3日遅れて出る。7/25〜31では8/3に間に合わない日がある」 ③第8条: 「消去の期限30日は短い。分析の再現のために90日」。読み手は川口さん(Lv2の同じ読み手)。条件: ①3点それぞれに「受ける/受けない/別の形で受ける」と理由を書く。②稟議の条件(損失の上限300万円・7/31の判定)を崩さないかを、1点ごとに確かめる(崩すなら、CFOに何を報告するか)。③7/13の通知を受けると判定のデータが何週分になるかを計算する。④返信は1往復で終わる形にする(6/11開始に間に合わせる)。⑤Bestまで書くか、Betterで止めるかを理由つきで決める。

取り組む前のヒント
  • 業務委託契約書の「成果物の特定」は、発注者が欲しい結果を書くことではなく、受託者が約束できる形に分けること。約束できないもの・確かめられるもの・判断の条件の3つに分ける
  • 条件で消える期間は、中途解約で終わらせるより、最初から条件つきの発注(オプション)にする方が、受託者にも発注者にも扱いやすい。解約は「相手の期待を壊す」行為で、損害賠償の話になりやすい
  • 罠: 社内の決裁条件を、そのまま相手への要求に書き写す。決裁条件は「当社がお金を出す線」で、相手に結果を約束させる根拠ではない
  • 罠: 検収を支払を止める道具にする。履行割合型の準委任で検収と支払を結びつけると、受託者は見積に上乗せするか、検収の基準を細かく交渉してくる。結びつけるのは、本当に要る成果物(今日は引き継ぎ)の支払だけにする
  • 60分版の②は、7/13に通知を決めるなら判定のデータは6/25(T1開始)から約2週間分になる。データが少ないときに何を基準にするか(見分けられる最小の差)を、判定メモの項目5と同じ考え方で決める

実務での使いどころ

業務委託契約書は、RFP(調達#2、Day021)で受託者を選び、稟議書(財務#2、Day022)でお金を出す決裁を取った後に、決裁の条件を相手との約束に変換する文書である。多くの会社では、一般条項は基本契約(一度結べば取引の間ずっと使う)に置き、案件ごとの業務・成果物・報酬は個別契約か SOW(作業範囲記述書、調達#4) に書く。今日の比較部分は、個別契約とSOWが重なる部分に当たる。SOWが「何をやり、何をやらないか」を細かく決める文書なら、個別契約はそれがお金と責任にどうつながるかを決める文書である。続編として、法務レビュー依頼書(法務#4)は「6/7の赤字を受けて、小林さんに急ぎで何を確認してもらうか」の回、是正措置報告書(品質・監査#3)や効果測定レポート(マーケティング#8)は「7/31の判定の結果」の回にできる。

この回の設計メモ(迷った他案・扱わなかった範囲・出所)

迷った他案と採らなかった理由
  • 成果完成型の準委任(648条の2)にし、報告率の改善を「成果」にする案 — 稟議の「効いていなければ払わない」に一番近い。ただし報告率は当社の配信量・頻度(T2は関課長の合意が要る)で動き、受託者だけでは達成できない。受託者は断るか、リスクの分を上乗せする(Mailwise の提案は履行割合の月額で、成果報酬の見積はない)。採らない。前提が変わり、受託者が配信の変更まで自分で行える契約(例: 配信の運用ごと委託する)なら、成果完成型を検討し直す
  • 請負契約にし、判定メモ・設計書を「完成すべき仕事」にする案 — 成果物の合格基準は書けるので形はできる。ただし請負は完成するまで報酬が払われない(633条)のが原則で、7週間の検証の作業に対して受託者が先に費用を持つことになる。検証の中身は途中で変わる(H3のように判別できない結果もありうる)ので、完成の定義が揺れる。採らない
  • 期間を6/11〜9/28の1本にし、中途解約条項(30日前)で8月以降を止める案(Goodの形) — ひな形のまま使え、法務の確認が速い。ただし7/31の判定の前に通知が必要で、稟議の条件を守れない。民法651条の任意解除でも止められるが、相手に不利な時期の解除は損害賠償の対象になりうる(651条2項。記憶による)。採らない
  • 第2期の判定を当社の裁量(「当社が必要と認めた場合」)にする案 — 書くのは簡単で、判定のデータの欠測も気にしなくてよい。ただし受託者から見ると第2期の売上の見込みが立たず、青木さんは人員を確保できない。判定の基準を数字で書き、さらに当社側の不実施を除く(論点B)方を採った
  • 比較セクションを「中途解約・損害賠償」にする案 — 法務担当者の赤字が多く入る箇所だが、カタログの勝負どころ「成果物と検収基準の特定」から外れる。今日は業務・成果物・検収・報酬を本体にし、損害賠償の上限などの一般条項はひな形のままとした
扱わなかった範囲
  • 基本契約の一般条項(秘密保持・損害賠償の上限・反社会的勢力の排除・契約不適合責任・準拠法と管轄)。NDA の論点は Day007 で扱った
  • 下請法を改めた中小受託取引適正化法(取適法、2026年1月施行)の適用。発注者が自社で使う役務を委託する「自家利用役務」は役務提供委託に当たらず対象外とされるため、今回のコンサルティングは対象外と判断した(下の出所。確認の深さは要約まで)。受託者の資本金・従業員数での判定はしていない
  • 個人情報保護法の委託先の監督の手続きの細部。ハッシュ化した会員IDを個人データとして扱う判断だけを第8条に書いた(当社側で照合できるため。記憶による一般的な考え方で、ガイドラインの本文は確認していない)
  • 印紙税(準委任の契約書は原則として課税文書に当たらないとされるが、確認していない)、電子契約の運用
  • SOW(調達#4)として「何をやらないか」を細かく決める部分。今日は契約の側(お金と責任へのつながり)に絞った
数字と概念の出所
  • 会社・人物・日付・数字はすべて架空。石原CFO・関課長は Day012・013、小林さんは Day007、高梨部長・宮田は既出。新登場: Mailwise の川口さん(契約担当)・青木さん(提案責任者)
  • 〔実測: シナリオ内〕稟議の条件(第2段階 上限320万円、損失の上限300万円、7/31に報告率の7日平均0.21%)は Day022。診断の結果(H2: 1.9%対0.12%・約0.07pt、H1: +0.03pt、H3: 0.01ptで判別できず)、Mailwise の第2段階提案(月65万円、第1期・第2期 各130万円)、点数84点はこの回の設定
  • 〔導出〕上昇分 0.21−0.09=0.12pt。損失の上限の確認: 第1段階140万+第1期130万=270万円(<300万円)。第2期まで発生した場合の総額 140+260=400万円(稟議の最大460万円の内)。Day022の稟議の「8月以降の約160万円」は、枠320万円の半分としての概算で、実際の契約では130万円になった。曜日(2029/6/1金・6/4月・6/5火・6/7木・6/8金・6/11月・7/10火・7/20金・7/27金・7/31火・8/3金・9/3月・9/28金)は作成時に確認した
  • 〔仮定〕T2の対象20%、T1の開始6/25、引き継ぎ会の日付、Postmaster Tools のデータの欠測を「3日以上」で扱うこと、判別できる最小の差0.02pt
  • 準委任の報酬の2つの型(履行割合型=648条2項、成果完成型=648条の2、2020年4月施行の改正民法で明文化)と、成果完成型で成果が得られなくても善管注意義務を果たせば債務不履行にならないことは、解説記事の検索結果の要約で確認(例: https://atsoho.com/blog/itaku-keiyaku-civil-code 、 https://www.businesslawyers.jp/practices/669 。条文の本文は未読、2026-10-09)
  • 請負の報酬の支払時期(633条)、任意解除と損害賠償(651条)、準委任への委任の規定の準用(656条)は記憶による(条文ページは取得していない)
  • 取適法(2026年1月1日施行)で自家利用役務が役務提供委託の対象外とされることは、解説記事の検索結果の要約で確認(例: https://biz.moneyforward.com/contract/basic/23291/ 。法律・運用基準の本文は未読、2026-10-09)
  • 英国法で「誠実に交渉する合意」に拘束力がないとされうること(Walford v Miles [1992])、米国の契約実務で "best efforts" が "commercially reasonable efforts" より重く読まれることがあることは、記憶による(判例・出典ページは取得していない)。本文では「〜とされることがある」と強さを落として書いた
  • Gmail の迷惑メール報告率の上限0.3%・推奨0.1%未満は Day013・021 と同じ(Google の送信者ガイドライン)
  • 分量(行数・字数)は、各コードブロックを作成後にスクリプトで数えた実測値

自己評価(やった後に記入)