Phase 2: 中級 / 専門職の説明責任 — 中1のクラスLINEに加工画像が投稿された翌々日の朝学活で、30人に名前を出さずに事実を伝え、「誰がやった」「見ただけでも悪いの」「いじりじゃん」「抜けたらハブられる」に答え、次にどうするかを3つ渡す
| Time(いつ) | 10月7日(水)8時30分。朝の学級活動(朝学活)の10分間。8時40分から1時間目(数学、別の先生)。問題の投稿は2日前の月曜21時40分、投稿者が消したのは昨日の火曜16時すぎ |
|---|---|
| Place(どこで) | 神奈川県内の市立中学校、1年4組の教室(生徒32人)。廊下側の窓は閉めてある。教室の後ろのロッカーの上に、体育祭の学級写真が貼ってある(英語版では、米国の公立中学校の7th grade の homeroom) |
| Person(相手) | 1年4組の生徒30人(2人は保健室と遅刻で不在)。クラスの非公式の LINE グループ(32人中28人が入っている)に、体育祭で転んだ瞬間のクラスメイトの写真が、顔に文字を足したスタンプ風の画像にされて投稿された。ほとんどの生徒が見ている。誰の写真かも、みんな知っている。投稿した生徒2人は、教室にいる |
| Position(あなたの立場) | 1年4組の担任(教職4年目・理科)。昨日の朝、ある生徒からスクリーンショットを見せられて知った。昨日の放課後、投稿した2人とその保護者とそれぞれ話し、2人は画像を消した。写っていた生徒(ここでは「本人」と呼ぶ)とその保護者とも話し、今日クラス全体に話すことに本人も同意している。本人の希望は「名前を出さないでほしい」「その話の間は教室にいたくない」。本人は朝学活の間だけ保健室にいる |
| Occasion(状況・目的) | 学年主任・生徒指導担当・校長と相談して決めた、クラス全体への10分の話。①何があったかを、誰の名前も出さずに言う ②何がいけないのかを、説教にせず短く言う ③生徒からの4つの声(「誰がやったんですか」「見ただけでも悪いんですか」「いじりじゃん」「抜けたらハブられる」)に、その場で答える ④このあとどうすればいいか(転送しない・保存したら消す・相談の窓口)を具体的に渡す |
※ 人物・日付・時刻・学校・LINE グループの人数はシーン設定のための仮定であり、実在の学校・生徒のものではない。法律の扱いは、下の「制度的な位置づけ」の範囲でのみ実在の情報として扱う。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が起きたか(仮定) | 月曜21:40、クラスの非公式 LINE グループに、体育祭(9/27)で本人がリレーで転んだ瞬間の写真に「顔芸」という文字を足した画像が投稿された。リアクションのスタンプが6件、「草」などの返信が4件。火曜16時すぎに投稿者が消した |
| 知ったきっかけ | 火曜の朝7:50、ある生徒がスクリーンショットを見せてくれた。その生徒は「自分が言ったことは誰にも言わないで」と頼んでいる |
| 投稿した生徒 | 2人(写真を撮った生徒と、文字を足して投稿した生徒)。昨日、保護者と一緒に話をした。2人とも画像を消し、本人への謝罪の手紙を書くと言っている。学校としての指導はもう始まっている |
| 本人と保護者の意向 | クラスに話すことは了承。名前は出さないでほしい。話の間は教室にいたくない。「みんなが画像を消してくれたらそれでいい」 |
| 学校の決めたこと | 今日、1年4組でだけ話す(グループが4組だけのため)。学年全体への話はしない。今日の帰りまでに、1人1台の端末で「ひとこと相談フォーム」(担任とスクールカウンセラーだけが見る)を配信する |
| 動かせるもの | 何があったかを、名前なしで言う/何がいけないかを言う/見ただけの人は責めないと言う/保存した人には消すように頼む/グループを抜けなくてもいい、その代わり何をすればいいかを言う/相談フォームと担任・カウンセラー(毎週水曜)を伝える |
| 動かせないもの | 投稿した2人の名前を言うこと。処分の中身を言うこと。どうやって知ったかを言うこと。LINE グループを解散させること(学校の管理するものではない)。「法律違反だ」「警察に行くことになる」と言うこと(担任が判断できることではない) |
It's 8:05 on Wednesday, homeroom. You have ten minutes before first period. Thirty of your thirty-two seventh graders are here.
On Monday night, someone posted a photo in the class group chat. It was a picture of a classmate falling during the relay at Field Day, with words added over her face. Most of the class saw it. Everyone knows who it is. The two students who made and posted it are sitting in this room. You and the assistant principal met with them and their parents yesterday, and they deleted it.
The student in the photo knows you're talking to the class today. She asked you not to say her name, and she's waiting in the nurse's office until first period. You found out because a student showed you a screenshot, and that student asked you not to tell anyone. You start talking, and hands go up before you're done.
10月7日(水)8時30分、朝学活。1時間目まで10分。1年4組32人のうち、30人が教室にいる。
月曜の夜、クラスの LINE グループに、体育祭のリレーで転んだクラスメイトの写真に文字を足した画像が投稿された。ほとんどの生徒が見ていて、誰の写真かもみんな知っている。作って投稿した2人は、いま教室の中にいる。昨日の放課後、2人とその保護者と話をして、画像は消された。
写っていた本人は、今日クラスに話すことを知っている。名前は出さないでほしいと言い、朝学活の間は保健室で待っている。あなたが知ったのは、ある生徒がスクリーンショットを見せてくれたからで、その生徒は「自分が言ったことは誰にも言わないで」と頼んでいる。話し始めると、話し終わる前に、何人かが口を開いた。
この立場になりきって応答してください。英語版・日本語版それぞれで考えてみましょう。応答は次の2つを含めること。
・最初の話(1分半ほど):何があったかを、誰の名前も出さずに言う。名前を出さないこと・どうやって知ったかも言わないことを、理由とあわせて先に言う。本人がこの話を知っていることを伝える
・4つの声への返し:「誰がやったんですか」には名前を言わずに、もう学校が対応していることだけを言う。「見ただけでも悪いの」には、見ただけの人は責めないと言い、保存・転送・スタンプは違うと線を引く。「いじりじゃん」と笑いが起きたことには、笑った生徒を名指しで責めずに、面白いかどうかを決めるのは写っている人だと言う。「抜けたらハブられる」には、抜けなくていいと言い、代わりにできること3つと相談の窓口を渡す
クラス全体に向かって話すとき、担任は「やった人」ではなく「これからの30人」に向かって話している。やった人への指導は、別の場所ですでに始まっている。全体の場で同じことを繰り返すと、指導ではなく見せしめになる。全体の場でやるべきなのは、線を引くことと、次に同じことが起きたときの出口を渡すことである。
教室にいない人を守る。写っていた本人と、知らせてくれた生徒。この2人が、この先も安心してこの教室にいられるかどうかが、この10分の結果を決める。話す前に、何を言わないかを決めておく。
| 他案 | 採らなかった理由 | 前提が変わったら | 今回の扱い |
|---|---|---|---|
| クラス全体に話さず、関係した生徒だけと個別に話して終える | 画像はクラスのほとんどが見ている。全体に何も言わないと、「学校は知らない」「あれは許される」と受け取られ、保存した画像が残り続ける | グループの人数が数人で、見た生徒が特定できる場合 | 本人の同意を取ったうえで、全体に10分だけ話す |
| 本人を教室に残したまま話す | 本人が「その話の間は教室にいたくない」と言っている。30人の視線が本人に集まる | 本人が「自分の口から一言言いたい」と希望した場合 | 本人の希望どおり、朝学活の間だけ保健室で待ってもらう |
| 「みんなにも責任があります」とクラス全体の問題として話す | 見ただけの多数が「自分は悪くないのに」と反発し、話の中身ではなく怒られたことだけが残る。犯人探しも始まる | クラスの多くが積極的に拡散していた場合 | 「見ただけ」「広げる」「作った」を分け、見ただけの人は責めないと言う |
| 「これは法律違反で、警察沙汰にもなりうる」と言って重さを伝える | 担任が判断できることではない。中1は「警察」という言葉で怖がるだけで、何をすればいいかは残らない。投稿した2人を教室の中で追い込むことにもなる | 学校と警察が連携して対応すると、校長が決めた場合 | 法律の話はしない。学校のルールと、写っている人の受け止めだけを根拠にする |
| 「グループを抜けなさい」「グループは解散しなさい」と言う | 学校の管理するものではなく、言っても守られない。抜けた子が「チクった」と見られ、次の標的になる | 学校が保護者会で、家庭のルールとして呼びかけると決めた場合 | 抜けなくていいと言い、転送しない・消す・大人に言う、の3つを渡す |
| 「いじりじゃん」と言った生徒を、その場で名指しで注意する | 30人の前で叱ると、その生徒は面子を守るために反発する。笑った数人も身構える | 同じ生徒が、本人の名前を出してからかい続けた場合 | 笑いが収まるまで待ち、誰も見ずに、線だけを一度言う。その生徒とは、必要なら放課後に個別に話す |
| 失敗 | なぜダメか | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 「やった人は、自分で分かってるよね」と言う | 名前を言わなくても、視線や間で投稿した2人をさらしものにする。教室の全員が、その2人の顔を見る | 「学校はもう対応しています」とだけ言い、投稿した側には触れない |
| 「○○さんの気持ちを考えて」と、本人の名前を出す | 本人の「名前を出さないで」という希望を破り、本人が話題の中心になる | 「写っていた人」「本人」とだけ呼ぶ |
| 「ある人が教えてくれました」と、知ったきっかけを言う | 教室の中で、知らせた生徒探しが始まる。次から誰も大人に言わなくなる | 「どうやって知ったかも言いません」と最初に言う |
| 笑いが起きたところで声を荒らげる | 教室は「先生が怒った」だけを覚え、何がいけなかったかは残らない | 待ってから、同じ声の大きさで、短く線を引く |
| 「いじめは絶対に許されません」で話を始める | 投稿した2人も、見ただけの多数も、「自分はいじめていない」と聞き流す。標語は何をすればいいかを示さない | 何が起きたかを事実で言い、具体的な3つのお願いで終える |
| 10分を超えて話し続け、1時間目に食い込む | 長い話は説教になり、最後の大事なお願いが聞かれない。1時間目の先生にも迷惑がかかる | 時計を見て、時間で終える。続きは放課後に個別で受ける |