TPPPO設定

Time(いつ)10月14日(水)7時50分。朝の校門指導の最中。8時20分に予鈴。生徒が次々に自転車で校門を通っていく。実質10分
Place(どこで)静岡の県立高校(全日制、自転車通学が全校の約6割)の正門前。歩道の幅は2m弱。門柱の横、生徒の流れから3mほど離れた植え込みの前に移って話す(英語版では、米国の郊外の公立高校の正面玄関前、morning arrival duty)
Person(相手)小林さん(76歳)。学校から300mほど先の、車1台分の幅の生活道路沿いに50年住む。元は市役所勤め。教員とは初対面。昨日の朝、妻の恵子さん(79歳、杖を使う)が、横に3台並んで走ってきたこの学校の生徒の自転車に手提げを引っかけられて転び、両膝をすりむいた。生徒の1人は「すみません」と言ったが、3人とも止まらずに行った。小林さんは後ろ姿をスマホで撮っている。声が大きく、通る生徒に聞こえている
Position(あなたの立場)生徒指導部の交通安全担当の教員(保健体育、教職14年、40歳)。今朝の校門当番。生徒の名前を外部の人に伝える権限はない。生徒への処分を決めるのは校長。自転車通学の許可名簿(許可ステッカーの番号と生徒の対応表)は、生徒指導部の部屋にある
Occasion(状況・目的)学校に連絡せず、直接校門に来た近隣住民からの抗議。①けがを先に聞く ②「うちの生徒とは限らない」と言わず、写真のステッカーで学校が本人を特定できる事実を言う ③名前は渡さないが、学校が今日何をするかを、時刻つきで言う ④「何べん電話した」に、確認していない記録を知ったふりで答えない ⑤警察に届けることを、止めも勧めもしない ⑥予鈴の前に、次の連絡の時刻と自分の名前を置いて終える

※ 人物・学校・事故の経緯・写真の内容・学校の決まりは、シーン設定のための仮定であり、実在の学校・人物のものではない。法令の扱いは、下の「制度的な位置づけ」の範囲でのみ実在の情報として扱い、原文を確認していないものはそう書いている。2026年10月14日が水曜日であることは、10月12日(月)がスポーツの日(10月の第2月曜日)であることから導出。

手元の事実(あなたが持っている情報)

項目内容
写真小林さんのスマホの写真1枚。生活道路を3台が横に並んで遠ざかる後ろ姿。この学校の体操服の上着。1台の後輪の泥よけに、学校の自転車通学許可ステッカー(青、番号「2-0417」まで読める)。生徒指導部の名簿と照らせば、今日の1時間目のうちに誰か分かる
学校の決まり(自転車通学)許可制。許可の条件は、自転車保険(相手にけがをさせた場合の賠償を含むもの)への加入を保護者が届け出ること。毎年4月に交通安全講話。生活道路では「一列で走る」と全校に伝えている
過去の電話小林さんは「何べんも電話した」と言う。あなたは、生活道路の住民から苦情があったという記録を見た覚えがない。電話の受付記録は事務室にあり、今は確認できない
年齢自転車通学の生徒は全員15〜18歳。2026年4月から、16歳以上の自転車の交通違反に反則金(いわゆる青切符)が科されるようになったことは、4月の講話で生徒に伝えた
動かせるもの今日の1時間目に名簿で本人を特定すること/昼休みに本人たちから話を聞くこと/今日中に保護者へ電話すること/保険の届け出の有無を確かめること/今日の17時までに小林さんへ電話すること/金曜の朝から、その生活道路の角に教員が立つこと(交通安全担当の自分が決められる)
動かせないもの生徒の名前や連絡先を小林さんに伝えること。生徒の処分の内容。生徒や保護者が謝りに行くかどうか(学校から勧めることはできるが、決めるのは本人と保護者)。小林さんが警察に届けるかどうか

シーン描写

It's 7:50 on a Wednesday morning. You're on arrival duty at the front gate, and the bike racks are filling up fast. First bell is at 8:20.

An older man walks straight up to you. He's Mr. Brennan. He's seventy-six, and he's lived for fifty years on the narrow side street about three hundred yards from school, the one with no sidewalk. Yesterday morning, his wife Ruth, who's seventy-nine and walks with a cane, was clipped by one of three students riding side by side. A handlebar caught her tote bag and she went down on both knees. One of the kids called out "Sorry," but none of them stopped. Mr. Brennan took a picture of them from behind.

He's loud, and the students coming through the gate can hear every word. You step a few feet away from the gate with him, next to the planters. You look at his phone. Three kids in school P.E. hoodies. On one rear fender, a blue school bike permit tag: 2-0417. The permit list is in the dean's office. You could know who it is within the hour. You can't give him names. Discipline is the principal's call. You don't remember ever hearing a complaint about that street, but phone logs are in the front office, and you haven't checked.

10月14日(水)、7時50分。あなたは正門で校門指導に立っている。自転車の生徒が次々に門を入っていく。予鈴は8時20分。

年配の男性がまっすぐ歩いてきた。小林さん、76歳。学校から300mほど先の、歩道のない細い道沿いに50年住んでいる。昨日の朝、杖をついて歩いていた妻の恵子さん(79歳)が、横に3台並んで走ってきた生徒の自転車に手提げを引っかけられ、両膝をついて転んだ。1人が「すみません」と言ったが、3人とも止まらずに行ってしまった。小林さんは、その後ろ姿をスマホで撮っていた。

声が大きい。門を通る生徒たちが、ちらちらと見ていく。あなたは小林さんと一緒に、門から3mほど離れた植え込みの前に移る。写真を見せてもらう。体操服の上着の3人。1台の泥よけに、学校の青い自転車通学許可ステッカー、番号は「2-0417」まで読める。名簿は生徒指導部の部屋にある。1時間目のうちに、誰か分かる。名前を小林さんに伝えることはできない。処分を決めるのは校長だ。この道の住民から苦情があったという記録を見た覚えはないが、電話の受付記録は事務室にあり、まだ見ていない。

相手のセリフ

(walking right up, loud) "Are you a teacher here? Yesterday morning three of your kids knocked my wife down on Alder Street. She's seventy-nine. She walks with a cane. Both knees bleeding. And they just kept going. Didn't even stop."

(holding up his phone) "I got a picture. See that tag? That's a school tag. I want their names. And I want them at my door, apologizing to her face."

(a group of students slows down to look) "Every morning it's like this. Three, four across. I've called this school I don't know how many times. What do you people even teach them?"

"I'm going to the police. Bikes get tickets now too, don't they?"

(when you say you can't give him names) "Yeah, I figured. 'We'll handle it internally.' That's what I'll hear, right? So who's doing what, and when?"
(まっすぐ歩いてきて、大きな声で) 「あんた、ここの先生か。昨日の朝、うちの家内がな、お宅の生徒の自転車に引っかけられて転んだんだよ。79だよ、杖ついてんだよ。両膝から血ぃ出して。それで、そのまま行っちまった。止まりもしねえで」

(スマホを突き出して) 「写真撮ってあんだよ。ほら、この番号のシール、学校のだろう。名前を教えなさい。うちに来させて、家内に頭下げさせなさい」

(生徒が何人か、速度を落として見ていく) 「毎朝こうだよ。3台も4台も横に並んで。何べん学校に電話したと思ってんだ。学校は何を教えてんだ」

「警察に届けるからな。今は自転車も切符切られるんだろう」

(あなたが「名前はお伝えできない」と言うと) 「ほらな。どうせ『学校で指導します』で終わりだろう。いつ、誰が、何をすんだよ」

あなたの課題

この立場になりきって応答してください。英語版・日本語版それぞれで考えてみましょう。応答は次の2つを含めること。
・最初の返し(30秒ほど):門の前から少し離れる一言を言い、最初に恵子さんのけがを聞く。写真を見て、ステッカーの番号で学校が本人を特定できることを、自分から言う。「うちの生徒とは限らない」と言わない
・4つの声への返し:「名前を教えろ、謝りに来させろ」「何べん電話した、何を教えてる」「警察に届ける」「どうせ指導します、で終わり。いつ誰が何をする」に返す。最後は、次の連絡の時刻と自分の名前を置いて、予鈴の前に終える

ヒント1: トーンの方向性
この場面の難しさは、小林さんが「学校の外の人」であることにある。保護者なら、学校とのやり取りの続きがある。近隣住民には無い。今日の10分が、この人にとって学校の全部になる。

教員としての反射は2つある。1つは「まだうちの生徒と決まったわけでは」と事実確認から入ること。もう1つは、通りかかった生徒を小林さんの前で叱ってみせること。前者は、写真にステッカーが写っている以上、ただの言い逃れに聞こえる。後者は、目の前の怒りを鎮めるための見せ物で、昨日の3人とは関係のない生徒を使うことになる。どちらもしない。

いちばん先に聞くのは、けがのこと。謝罪の言葉より先に「奥さまは今どうですか」を置く。そのうえで、確かめていないこと(3人が誰か、過去の電話)は、確かめていないと言う。知らないことを知っているふりをしないのが、この場面での誠実さになる。
ヒント2: 使うべき表現・語彙
英語: "Let's step over here, out of the way." "First, how is your wife? Has she seen a doctor?" "That tag is ours. With that number, we can find out who it is this morning." "I can't give you their names. That's student information." "I don't know about the earlier calls. I haven't seen them. I'll check today." "Whether you go to the police is your decision. I won't try to talk you out of it." "Here's what happens today, and when." "I'll call you by 5 this afternoon." 使わない: "We don't know yet if they're our students"(ステッカーがある)、"Kids will be kids"、"I'm sure they didn't mean it"、"We take this very seriously"(中身のない決まり文句)、"You don't need to involve the police"(相手の権利を狭める)。

日本語: 相手は年長の近隣住民で、「あんた」と呼んでくる。こちらは「です・ます」を崩さず、呼び方は「小林さん」。「おじいちゃん」「お父さん」は使わない。一人称は「私」。「こちらで少しお話しさせてください」「まず、奥さまのおけがは今どうですか。病院には行かれましたか」「このシールは、うちの学校のものです。この番号で、今日の午前中に誰か分かります」「お名前は、私からはお伝えできません」「以前のお電話のことは、私はまだ確認できていません。今日、確かめます」「届けるかどうかは、小林さんがお決めになることです。お止めはしません」「今日の17時までに、私からお電話します」。使わない:「うちの生徒とは限りませんので」「ご自由にどうぞ」「厳しく指導いたしますので」(中身のない約束)、「警察沙汰にしなくても」。
ヒント3: 構成の型
最初の返し: ①名乗って、門から少し離れる(「生徒指導の○○です。こちらで伺います」)→ ②けがを聞く(「奥さまは今どうですか」)→ ③写真を見て、事実を自分から言う(「このシールはうちのものです。番号で誰か分かります」)→ ④学校として一度だけ謝る(「止まらずに行ったこと、申し訳ありません」)

4つの声への返し: ⑤「名前を教えろ、謝りに来させろ」→ 名前は渡せないと理由つきで言う。謝りに行くかどうかは本人と保護者が決めることで、学校からは伝える、と分けて言う → ⑥「何べん電話した」→ 確認していないと正直に言い、今日確かめると言う。電話があって何も変わっていなかったなら、それは学校の落ち度だと条件つきで認める。「何を教えてる」に講話の説明はしない → ⑦「警察に届ける」→ 止めも勧めもしない。届けた場合は学校も協力すると言う。青切符の説明はしない → ⑧「いつ誰が何をする」→ 時刻と人で並べる(1時間目に特定/昼休みに本人から話を聞く/今日中に保護者へ電話・保険の確認/17時までに小林さんへ電話/金曜の朝からその道の角に教員が立つ)→ ⑨連絡先を聞き、自分の名前を書いたメモを渡し、予鈴の時刻を自分から言って終える
(stepping toward the planters) "I'm Mr. Sato, I'm the dean's office teacher on duty. Let's step over here, out of the way.
First, how is your wife? Has she seen a doctor?
(looking at the photo) That tag is ours. With that number, we can find out who it is this morning.
And they didn't stop. I'm sorry. That shouldn't have happened."

(to "I want their names. I want them at my door") "I can't give you their names. That's student information, and it's not mine to give out. Here's what I can do. Today, I'll tell those students and their parents exactly what you told me, including that you want them to apologize to your wife in person. Whether they come is up to them and their parents. I'll tell you what they say."

(to "I've called this school I don't know how many times") "I don't know about the earlier calls. I haven't seen them. I'll check the front office log today. If you called and nothing changed, that's on us."

(to "I'm going to the police") "That's your decision. I won't try to talk you out of it. If you do, the school will cooperate with them."

(to "So who's doing what, and when?") "Fair question. Here it is. First period, I check the permit list. At lunch, I talk to all three of them. Today, I call their parents, and I check that their families have the bike insurance the school requires. By 5 p.m. today, I call you and tell you what happened. And starting Friday morning, a teacher will stand at the corner of Alder Street from 7:40 to 8:15. That one's my call, so I can promise it.
Can I get your number? (writes on a card) This is my name and the school's number.
...First bell's at 8:20. Please tell your wife I asked about her."
解説(英語)
  • 語彙選択: "That tag is ours." は、相手が言う前にこちらから事実を認める一文。"We don't know yet if they're your…" と言いかけた瞬間に、会話は「学校は逃げる」という相手の予想どおりになる。"I'm sorry. That shouldn't have happened." の謝罪は「止まらずに行ったこと」に向け、事故そのものの過失割合には踏み込まない。米国では学校職員の謝罪が責任の自認と受け取られることを学区が警戒する場合があるとされるが(学区の方針次第、今回は確認していない)、"they didn't stop" は写真と本人の話から争いのない事実で、そこに謝るのは安全な範囲。
  • トーン: 相手の怒りの言葉("What do you people even teach them?")には答えない。説明を始めると、怒りに理屈で返す形になる。"I don't know about the earlier calls. I haven't seen them." は、知らないことを短く2文で言い切る。"If you called and nothing changed, that's on us." は条件つきの謝罪で、確認前に事実を認めず、確認後に逃げ道も残さない。
  • 構成: "Fair question. Here it is." で、相手の皮肉("handle it internally")を受けて、すぐに時刻の列に入る。最後の約束(Friday morning の立ち番)だけは "That one's my call, so I can promise it." と、自分の権限の内側であることを明示する。約束できるものと、できないもの(謝りに来るか、処分)を、相手が聞き分けられるように分けている。最後の "Please tell your wife I asked about her." は、怒っている本人ではなく、けがをした人に向けた一言で終える。
(植え込みのほうへ一歩動いて) 「生徒指導の佐藤です。こちらで伺います。
まず、奥さまのおけがは、今どうですか。病院には行かれましたか。
(写真を見て) このシールは、うちの学校のものです。この番号で、今日の午前中に誰か分かります。
止まらずに行ってしまったこと、申し訳ありません」

(「名前を教えなさい。うちに来させなさい」に) 「お名前は、私からはお伝えできません。生徒の個人の情報ですので。
私にできるのは、今日、その3人と保護者に、小林さんから伺ったことをそのまま伝えることです。奥さまに直接謝ってほしい、ということも含めて。伺うかどうかは、本人と保護者が決めることです。どうなったかは、私から小林さんにお伝えします」

(「何べん学校に電話したと思ってんだ」に) 「以前のお電話のことは、私はまだ確認できていません。今日、事務室の記録を見ます。お電話をいただいていて、それで何も変わっていなかったのなら、それは学校の落ち度です」

(「警察に届けるからな」に) 「届けるかどうかは、小林さんがお決めになることです。お止めはしません。届けられた場合は、学校も警察に協力します」

(「いつ、誰が、何をすんだよ」に) 「お答えします。1時間目に、私が名簿で3人を確かめます。昼休みに、私が3人から話を聞きます。今日中に、3人の保護者に電話をして、学校が求めている自転車保険に入っているかも確かめます。今日の17時までに、私から小林さんにお電話して、どうなったかをお伝えします。
それと、金曜の朝から、あの道の角に、7時40分から8時15分まで教員が立ちます。これは私が決められることなので、お約束します。
お電話番号を伺ってもいいですか。(メモに書いて渡す) これが私の名前と、学校の番号です。
……8時20分に予鈴が鳴りますので、今朝はここまでにさせてください。奥さまに、お大事にとお伝えください」
解説(日本語)
  • 敬語レベル: 全体を丁寧語にし、自分の行動には謙譲語(「伺います」「お伝えします」「お止めはしません」)、相手の行動には尊敬語(「お決めになる」「行かれましたか」)。相手が「あんた」「教えなさい」と上から話してきても、こちらは下げも上げもしない。敬語を重ねて低姿勢にすると、相手には「頭は下げるが何もしない学校」の型に見え、普通体に崩すと、年長者に対して失礼になる。「です・ます」を一定に保つことが、相手の勢いに引きずられていないことを示す。
  • 一人称・語尾・呼び方: 一人称は「私」。学校全体の話でも、自分がする行動の主語は「私が」と言う(「私が名簿で確かめます」「私から電話します」)。「学校で対応します」と主語を学校にすると、まさに相手が予想した「学校で指導します」に聞こえる。呼び方は「小林さん」、妻は「奥さま」。迷ったのは「恵子さん」と名前で呼ぶかどうか。小林さんは名前を言っていないので、ここでは「奥さま」にした(名前を聞いたあとなら「恵子さん」も可)。
  • クッション言葉: 「おっしゃることはごもっともですが」「お気持ちはお察しします」は使わない。前者は反論の前置きに聞こえ、後者は相手の怒りを自分が評価する形になる。代わりに、最初の一文で、けがを聞く。これが、この場面でのいちばん強いクッションになる。「お答えします」は、皮肉(「どうせ指導します、で終わり」)を正面から受けて、時刻の列に入るための一言。
英語 × 日本語 対比ノート
① 謝罪の意味の重さが違う。 日本語の「申し訳ありません」は、学校の代表として住民に頭を下げる場面で、まず言うことが期待される。言わないと、それだけで不誠実に見える。英語の "I'm sorry" も言うが、米国では学校職員の謝罪が責任の自認と受け取られることを、学区が警戒する場合があるとされる(今回、具体的な学区方針は確認していない)。そこで英語版では、謝る対象を "they didn't stop"(争いのない事実)に絞り、"I'm sorry she got hurt"(同情)と区別できる形にした。日本語版も、謝る対象は「止まらずに行ったこと」に絞っている。両言語とも、事故の細部(誰がぶつかったか、どちらがよけるべきだったか)は、本人たちから話を聞く前には謝罪に含めない。

② 相手の権利の認め方。 警察に届けることについて、英語の "That's your decision." は、相手の権利を認める普通の言い方で、冷たくは聞こえにくい。日本語でそのまま「ご自由にどうぞ」と言うと、突き放しに聞こえる。日本語では「小林さんがお決めになることです。お止めはしません」と、決める人を名前で言い、自分が止めないことを自分の行動として言う。さらに「学校も協力します」を足すことで、届けても学校とは敵対しない、という意味を補う。

③ 名前を言えない理由の言い方。 英語の "That's student information" は、米国では FERPA(生徒の教育記録の連邦プライバシー法)という共通の背景があり、相手も「学校は名前を言わないもの」と分かっていることが多い。日本語の「個人の情報ですので」は、言い訳に聞こえやすい。日本語版では、理由は1文で止め、すぐに「私にできるのは」と行動に移る。理由を長く説明するほど、断られた側には「守っているのは生徒だけか」と聞こえる。

④ 「あんた」と「Are you a teacher here?」。 英語の相手の第一声は、言葉としては失礼ではない。怒りは声の大きさと内容で出ている。日本語の「あんた」「教えなさい」は、言葉そのものが上下関係を作っている。日本語では、この上下関係に乗らない(へりくだりすぎない、言い返さない)ことが、敬語の選び方そのものになる。英語では、"Mr. Brennan" と姓で呼び、"sir" を何度も重ねない(重ねると、なだめているように聞こえる)。

この立場に共通する心構え

学校の外の人にとって、校門で会った教員は「学校」そのものである。保護者には次の面談があるが、近隣住民には無いことが多い。だから、その場で言った時刻と、その時刻に実際にかける電話が、学校の信用の全部になる。約束は、自分の権限の内側にあるものだけを、時刻つきでする。権限の外にあるもの(処分、本人が謝りに行くか)は、約束しないと言ったうえで、結果だけは知らせると約束する。

もう1つ。苦情を言いに来た人の前で、通りかかった生徒を叱ってみせたくなる瞬間がある。それは目の前の人を鎮めるための見せ物で、昨日の3人とは関係のない生徒を使うことになる。指導は、事実の分かった本人に、人目のない場所でする。苦情を受けている教員が守るべきなのは、目の前の相手への誠実さと、その場にいない生徒の公正さの両方である。

制度的な位置づけ(参考)
  • 自転車の交通反則通告制度(いわゆる青切符): 2024年に成立した改正道路交通法により、2026年4月1日から、16歳以上の自転車の一定の違反に反則金が科されるようになったとされる。報道では、並進(横に並んで走ること)は反則行為に含まれ、反則金は3,000円とされている。今回、改正法と政令の原文は確認していない。模範解答で青切符の説明をしないのは、相手が求めているのが法律の説明ではないため
  • 交通事故の場合の措置: 道路交通法72条は、交通事故があったときの車両等の運転者の救護義務と警察への報告義務を定めており、自転車(軽車両)も「車両」に含まれるとされる。昨日の3人が止まらなかったことは、この点で、校則の問題にとどまらない可能性がある。ただし、教員がその場で法律上の評価を口にすることは避ける(今回、条文の原文は確認していない)
  • 自転車保険: 自転車の利用者に、他人にけがをさせた場合の賠償保険への加入を義務づける条例を持つ都道府県がある。静岡県の条例の扱いは、今回確認していない。この場面の「許可の条件として保険加入の届け出を求める」は、学校の決まりとしての仮定
  • 生徒の個人情報(日本): 2023年4月から、県立学校を含む地方公共団体の機関にも個人情報保護法が適用されるようになったとされる。生徒の氏名を本人の同意なく第三者に伝えることは、原則として避ける扱いになる(今回、具体的な条文と例外は確認していない)
  • 米国(英語版): FERPA は、生徒の教育記録の開示を制限する連邦法。氏名などの directory information は、学区の方針によっては開示されうるが、懲戒に関わる記録は教育記録として保護されるとされる。英語版の「名前は言えない」「処分は principal」「school bike permit tag」は、学区の方針としての仮定。米国の学校で自転車の許可ステッカーを出すことは一般的とは言えず、英語版の設定上の仮定である
迷った他案と採らなかった理由
他案採らなかった理由前提が変わったら今回の扱い
「まず、うちの生徒かどうか確認させてください」から入る写真に学校のステッカーが写っている。確認の言葉から入ると、相手には「逃げる学校」の型どおりに聞こえる写真に学校を示すものが何も無く、制服も似た学校が近くにある場合「このシールはうちのものです」と、自分から事実を言う
小林さんの前で、通りかかった生徒に「並んで走るな」と注意する昨日の3人とは関係のない生徒を、目の前の相手を鎮めるために使うことになる。相手にも「その場しのぎ」が見える目の前で、実際に危ない走り方をしている生徒がいる場合(その場合は注意するが、小林さんへの見せ方として扱わない)生徒には何も言わず、相手を門から少し離れた場所に移す
名前は言えないが、「必ず謝りに行かせます」と約束する謝りに行くかどうかは本人と保護者が決めること。約束して実現しなければ、2回目の裏切りになる学校の決まりで、近隣への謝罪に教員が同行する手順が決まっている場合「伝える」「どうなったかを知らせる」までを約束する
過去の電話について「そういう記録はないと思いますが」と言う確認していない。記録があった場合、嘘をついたことになる。無かった場合でも、相手の言葉を疑う形になる受付記録をすでに見ていて、事実として言える場合「確認できていない、今日見る」と言い、電話があったなら学校の落ち度と条件つきで認める
「今年から自転車も青切符の対象で、生徒にも4月に伝えています」と説明する相手は法律の説明を求めていない。学校の取り組みを説明すると、「やっているのに防げなかった」を言い訳として聞かせることになる相手が落ち着いたあとで、学校が何を教えているかを具体的に聞いてきた場合説明しない
「警察に届けるほどのことでは」と、届け出を思いとどまらせる相手の権利を狭め、学校が隠そうとしているように聞こえる。けがをした人がいる以上、軽く扱えないなし止めも勧めもせず、届けた場合は協力すると言う
その場で生活道路の通学禁止を約束する通学路の変更は自分の権限を超え、全校の生徒に関わる学校がすでに通学路の見直しを決めている場合自分が決められる「金曜からの立ち番」だけを約束する

よくある失敗パターン

失敗なぜダメか代わりにどうするか
「うちの生徒とは限りませんので」と最初に言うステッカーがある以上、言い逃れに聞こえる。相手の怒りが一段上がる「このシールはうちのものです」と自分から言う
謝罪の言葉から入り、けがを聞かない学校の体面の話になり、けがをした人が会話から消える最初に「奥さまは今どうですか」と聞く
「厳しく指導いたします」で終える相手が予想した「指導します、で終わり」そのもの誰が、いつ、何をするかを時刻つきで並べる
通りかかった生徒を、相手の前で叱ってみせる関係のない生徒を見せ物にする生徒には何も言わず、場所を移す
「以前のお電話の記録はないと思います」と言う確認していないことを言っている「確認できていない、今日見る」と言う
「警察沙汰にしなくても」と言う相手の権利を狭め、隠そうとしていると思われる「お決めになるのは小林さんです。お止めはしません」
「必ず謝りに行かせます」と約束する自分の権限の外の約束。実現しなければ2回目の裏切りになる「伝える」「結果を知らせる」までを約束する
相手の「あんた」に合わせて口調を崩す、または敬語を重ねてへりくだるどちらも相手の勢いに引きずられているです・ますを一定に保ち、「小林さん」と呼ぶ

扱わなかった範囲

自己評価

英語版: 自分で応答を考えられた
日本語版: 自分で応答を考えられた